ドーピング最強伝説(体験版)
今回は短編小説を投稿させていただきました、フリューゲルです。もし評判よければ連載小説にしようと思っていますので、感想はドシドシ送ってきてください。
どーも、皆お馴染み転生者です。
え?いきなりなんだって?まあまあ、とりあえず俺の話を聞いてくれよ。
俺はさ、転生前はそりゃあ平凡な少年でしたよ。外見は並み、総合成績は全教科平均点。平凡じゃないところはいらない知識が豊富なことだけ。そんな俺はある日、学校の帰りにコンビニに寄ろうとして横断歩道を渡ってたら、居眠り運転のトラックに轢かれて異世界に転生した。死に方まで平凡だったことにはショックを受けたわ…。
ま、まあ、うん。死に方のことは放って置いて。とにかく俺は転生した。転生したんだが、生まれ変わった先が問題だった。なんだったと思うよ?俺が転生した先は?正解は……なんと、魔物でしたー!ヒューヒュー!イェーイ!……なんて言ってられるかあー!!どういうこった!なんで生まれ変わった先が魔物なんだよ!しかも見た目が黒髪幼女!自分の現状を理解したときなんか軽くパニックになったぞ。
そんとき奴隷商人に見つかって「魔物だけど見た目いいから娼婦とかいいんじゃね?」とか言われたときは背筋ブルって必死になって逃げた。こんな幼女つかまえて娼婦とか真性の変態じゃねえか!しかも俺は魔物だぞ!あんときゃ別の意味で生きた心地がしなかった。それから色々あって転生してからちょーど1年くらいしたときかな、マスターと出会ったのは。
なんかよ、たまたま通った道の先で馬車が盗賊に襲われててさ、その光景見たときには「はっ、また盗賊かよ。どーせ俺はなんもできねえし、傍観に徹しますかね」と言いながら見やすい位置に移動したんだよ。そんで馬車の中見たら美幼女がいるじゃん?「あ、あれは美幼女! 美幼女は世界の宝だ! なんとしてでも助け出さねば!!」とか言ってさ、自分がどんだけ非力か忘れて襲われてる馬車に突っ込んだわけよ。はい、そこ!後先考えない馬鹿とか言わない。わかってるから!
結果?皆様のご想像のとおり、突っ込んだ瞬間に美幼女と一緒に捕まってアジトの洞窟に連れて行かれましたよ。捕まった理由?奴隷商人に売ったら結構な金になるから。捕まった後になんでこんな無茶したのかって後悔したね。まあ、自分にできることは何も無いし、暇だったからぼーっとしてたらさ。なんか話しかけてきたんだよね、一緒に捕まった美幼女さんが。
美幼女さんの名前はミカエル・フォン・シュタイナーって言うんだって。なんか貴族っぽい名前だねぇ。てゆうか、よく6歳で盗賊に捕まってる状況で自己紹介なんてできるね?って聞いたらさ、案の定貴族のお嬢様だった。うん、まあ、わかってたけどね?
そんでさ、その美幼女さん改めミカエルちゃんがこう言ってきたんだよ。「まものさん、わたしとけいやくしてください。けいやくすればもしかしたらここからにげだせるかもしれません」ってさ。はて?契約とは何ぞや?いまいち要領を得なかったのでミカエルちゃんに説明してもらったんだが、どうやら魔物は魔物使いと呼ばれる人間と契約することによって、契約した魔物使いに力を与える代わりに、オドという生きるための力をほとんどタダで貰えるらしい。俺はそんときメッチャ喜んだね。たぶん踊れるなら踊ってた。
なあ、あんた。考えてもみろよ?ご主人様の命令にさ、はいはい従っとけばニートやってても誰にも文句言われないんだぜ?最高じゃねえか!!うはっ!
俺は即OKだしたね。もう光の速さなんて目じゃねえよってくらいに即答だったね。で、聞いたわけよ。何をって?契約方法だよ、契約方法。それを聞いたミカエルちゃんすっげえー喜んでた。めっさ喜んでた。ミカエルちゃんが言うにはこれから問う質問に全部YESで答えればいいって言うからさ、言われたとおりに質問には全部YESで答えてやったぜ☆
だけどな、最後の「契約の証を刻み込む」ときに問題は起きた。あんた。耳かっぽじってよーく聞けよ?キスをしなきゃ証が刻み込まれない。もう一度言うぞ?キスをしなきゃ証が刻み込まれない。
俺はそんとき滅茶苦茶驚いた。「えぇぇぇぇぇぇぇっ!」とな。もう、超驚いた。絶対しなきゃいけないのかって聞いたら絶対だって言われたもんだから仕方なくやったんだけどな、恥ずかしくて顔赤くしながらキスしたらちょうど盗賊の監視がきやがったんだよ。だから俺は叫んだ。正直に言おう、ヤケクソだった。「力でも何でもくれてやっからアイツぶん殴ってくれぇぇぇぇぇえ!!」「はい」
次の瞬間なにが起きたと思う?俺からの問題だ!
①キスしたら変な空間に飛んだ(俺はユニゾンデバイスじゃねえぞ!)
②ミカエルちゃんの右目が紅く光った(レンタルでマギガだぜ)
③監視の前にミカエルちゃんが瞬間移動してぶん殴った(龍玉か!)
④監視が洞窟に穴つくって外にぶっ飛んでいった(もう何も言わん…)
⑤以上全部
さあ、どれかな?正解は……察しのいいあんたは気づいてんだろ?ほら、答えていいぜ。ああ、そうさ。答えは⑤!①~④の全部さ!もうわけがわからなかった。あのときは本気でわけがわかんなかった。ミカエルちゃんもびっくりしてた。慌ててやって来た盗賊たちも目ん玉丸くしてた。場が混乱している間に復活したミカエルちゃんがそのまま①~④の工程を盗賊一人ひとりに繰り返して、俺が現実世界に帰還したときには全部終わってた。洞窟も終わってた。ボロボロにしたあげく落盤で埋めちゃって本当にすいませんでした、洞窟さん。一緒に盗賊たちもプチ☆ってなったけど。
後でわかったんだけどさ、俺あのとき無意識にマスターにドーピング施してたらしいんだよな。マスターが言うには、地竜やバンパイアも殴って殺せる身体強化に循環系強化によるドーピングと身体能力をさらに上げる薬でのドーピング。盗賊を殴ったときに破裂せずに吹っ飛んでいったのは、俺がマスターが盗賊を殴る寸前で殺すことに忌避感を抱いたから二つのドーピングをキャンセルしたからだとか。ほへー。
ほんと、あの後も色々あって例えば―--
「汐? 何してるの? さっきからボーっとして」
「ふわぁ! マ、マスター! いきなりなんですか、もう。びっくりしたじゃないですか!」
「いきなり何って、あんたがさっきからボケッとしてるから心配になって声かけたのよ。何度呼んでも返事ひとつしないし」
「へ? ……すいませんでしたあぁぁぁぁぁ!?」
やばいですよ!過去のことに浸ってる場合じゃありません!いま決闘の最中でしたー!!
「汐、早くしなさい!」
「ふぁ、ふぁあい!」
今日もなんだか面倒くさそうな1日になりそうですねー。
ここはある世界のたった一つしかない大陸。北には極寒の大地。南には灼熱の大砂漠。西の大海には海竜が、東の霊峰には鬼神が。そして、中央には人間の領域があった。
その人間の領域のさらに中央、北はメガール帝国、東は大和教国、西はファナシア王国、南に華南連合に囲まれた所。そこには1つの学園があった。名を四大国立テレジア学園という。何を学ぶための学園か?当然、人類を守るために魔物に立ち向かう者たち、魔物使いを育てるたった1つの学園である。
魔物使い。それは、魔物を倒すために友好的な魔物たちと契約し「歯に歯を、目には目を、魔物には魔物を」を合言葉に日々修練に励む特別な力を持った者たちである。
だがしかし、ずべての人間がこの学園を卒業できるわけではない。四大国立テレジア学園は非常なまでの実力主義の社会なのである。力の無いものは絶望と失意の中で消えてゆき、力ある者は栄光と羨望の眼差しの中で学園生活を送る。一度入学すれば卒業以外には死ぬことでしか辞められない学園。恐怖と不安に苛まれ、それでも学園の門を叩く者は後を絶たない。理由などただ1つ、叶えたい夢があるからである。
その学園の校庭。いつ戦闘が起きても問題なさそうな広大な庭の一角に、人だかりができていた。人だかりの中央には二組のペアがいる。片方のペアは、見るからに親に甘やかされて育ちました、というような立ち姿の少年だ。パートナーの魔物は上級にランク付けされる地竜である。
魔物にはそれぞれランク付けがなされており、上から順に
接触禁忌指定級
災害指定級
超級
上級
中級
下級
最後に低級がある。
この地竜は上級の魔物であり、これを従える少年は見た目はアレだが実力は本物らしい。対するもう一組のペアは、こちらもかなり異色だった。
主人である少女は赤い長髪を両サイドで二つに縛ったヘアスタイル。吸い込まれそうなほど蒼い瞳。その身長は男子と比べても遜色ないほどに高い。顔には自身に満ちた笑みを浮かべている。パートナーの魔物はどこからどう見ても人間にしか見えなかった。濡れ羽色の腰まで届く長髪に血のように紅い眼。身体は小柄で見た目は完全に子供である。どちらも超がつくような美少女と美幼女であった。
この二組のペアが今からやろうとしているのは『決闘』という魔物使い同士の力試しである。ルールは簡単。相手を倒すだけ。ただそれだけである。
少年が口を開く。
「ふふ、シュタイナーさん。まずは、決闘を受けてくれてありがとう。もちろん、この決闘の勝者にどんな権利があるのかを理解した上で受けてくれたのだろう?」
相対する少女が少年を冷めた眼で見つめる。
「ええ、もちろん理解できているわ、フォルバレン君。この決闘の勝者は敗者に1つだけいかなる命令でも聞かせられる。そうよね?」
「ああ。そのとおりだよ、シュタイナーさん。まあ、心配しなくていい。君は負けるだけなのだから。そんな見るからに弱そうな魔物で僕のガイナに勝てるわけが無いからね。先攻、どうぞ?」
少年のいった言葉に怒りを覚えたのか、少女は少年を睨みつけながら言い放つ。そしてその光景を見ていた周りの人間達は一斉に嘲りの視線を送った。……上級の魔物を従えるはずの、少年に。
「ええ、心配は要りませんよ。だって……私を怒らせたあなたが勝てるはず無いもの!汐、行くわよ!!」
「OK、マスター! 何がいいですか? ミンチですか? ストレス発散用の人型サンドバックですか? それとも……肉片一つ残さず消しますか?」
冗談で訊ねた汐と呼ばれた魔物に少女は返答した。
「制服が汚れないように跡形もなく消し去るで」
「え゛っ!? マジなのですか!」
「うん。マジもマジ。本気と書いてマジよ。私のことならともかく、あんたのことをアイツは侮辱した。絶対に許さない!」
「へー、ソウデスカ……(こわっ! マスターめっちゃこわー!!)」
「汐!」
「(ああ、もう! どうにでもなっちゃえ!)Yes,mymaster.---LINK・START!」
突如として発生するオドの嵐。少年も思わず顔を背ける。それが命取りだった。嵐が晴れた先、そこに立っていたのは先ほどの少女だった。しかし、何箇所か違っている所があった。
制服はそのままだが、あれほどにまで鮮烈だった紅は黒に変わり、その代わり右目が紅く輝いている。そして、少女の周りには禍々しい色をした文様がまるで結界のように浮かび上がっていた。少年と地竜が知覚できたのはそこまでだった。
少女は瞬きの間に少年との間合いを詰め、眼を開く瞬間に盾となっていた地竜ごと少年を殴りつけた。それだけで、たったそれだけで上級の魔物と一人の人間が肉片1つ残さずに吹き飛んだ。
その圧倒的な力の証明に周りにいた人間たちは熱狂に沸き立つ。その中心で主従がしていた会話は、とてものほほんとしたものだった。
『マスター今日は昼食なんにします?』
「ん。じゃあ、ハンバーグ」
『ハンバーグ…。ミンチ…。人間一人吹き飛ばしたあとにデスカ』
「それも地竜の煮込みハンバーグ」
パートナーの魔物がリンクを解除して、少女の隣に出現する。
「もしかしてそれ、わ、私もですか…?」
「うん? なに言ってるの? ……当然でしょ」
「うえぇ、なんか気持ち悪くなってきました」
「ファイト!」
「だーれのせいですか! マスターのバカー!!」
「あ! ちょっ待ちなさい! そっちは……」
少女の忠告を聞かずに魔物が走っていく。
「そっちは今ちょうど地竜をミンチにしてる最中なんだけど……」
あまりにもショッキングな光景を見せいか、魔物が地面に向かってハイドロポンプを繰り出した。
学園最強の魔物使いミカエル・フォン・シュタイナーとそのパートナーである指定不明級魔物・汐のある日の光景であった。
ちなみにこの小説はRewriteと境界線上のホライゾンを読んでいたら書きたくなった小説です。
感想や批判などでもいいので待ってます。