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自覚



「元気出てきた?」



「うん、だいぶ」



昨日よりは明るかった。

でも、前みたいに自然に笑っている感じではなかった。



「なんでも言ってな」



「うん、ありがとう」



会話は普通だった。

でも、どこかズレていた。


遥と話しているはずなのに、


頭のどこかで、別のことを考えていた。


________________________________________


しばらくして、遥から会いたいと連絡があった。

寒かったが、天気はよく、出かけるにはちょうどよかった。


いつものショッピングモール。

付き合い始めた頃から、何度も来ている場所。

その日は、見慣れているはずなのに、違って見えた。


人の流れも、音も、どこか遠い。



ファミレスに入った。


向かい合って座る。


温かい飲み物を頼む。

来るまでの間が、やけに長く感じた。


店員の態度がやけに明るくて嫌だった。



遥が、口を開いた。


「みずき」


時間が止まった気がした。



周りの音が遠のく。


「みずきのことわかるよね?」



何も言えなかった。

隠すべきか、正直に言うべきか、その判断すらできなかった。

ただ、否定できなかった。


________________________________________


遥は、ゆっくりと話してくれた。


記憶が途切れることがあること。

自分の中に、もう一人いるという事実。


そして、

みずきが出ている間、自分は意識がないこと。


記憶も残らないこと。


それを聞いたとき、背中が冷えた。

現実味のない話のはずなのに。


目の前の遥の声だけが、現実だった。


________________________________________


「話してくれてありがとう」


「……大丈夫なんとなるさ」


何か言わないといけない気がしたのに、

うまく言葉が出なかった。


遥は、少しだけ表情を緩めていた。


________________________________________




一つだけ、引っかかっていた。



遥は、覚えていない。



________________________________________


散歩して帰ることにした。


ショッピングモールのエスカレーター。


ゆっくり降りていく。


さっきの会話の余韻が、まだ残っていた。



遥は、隣にいる。

でも、どこか違う気がした。

理由はないが、

それでも、そう思った。



「遥?」




返事がなかった。


「……瑞樹?」


「なに?」


顔は見ようとしなかった。


「……聞いてたの?」


「聞いてた」


当たり前のように返ってくる。




「どうしたらいいのかな」


自分でも情けないと思う質問だった。

でも誰かに聞いて欲しかった。



「駿が決めれば」


それだけだった。



名前を呼ばれたことが、


どこかに残った。


________________________________________


間を置いてから、駿は口を開いた。


「……遥に、代わってもらえる?」



強く言ったつもりはなかった。

確認するような言い方だった。

________________________________________


瑞樹は、一瞬だけ黙った。



その沈黙が、ほんのわずかに長く感じた。






「……気にしてるんだ」



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