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24. 異常な平常心

 明け方に涼羽精工の工房に流火を送り届けた悠之歩と翔は、そのままその工房の会議室で今回の流火移送の報告書を作成することとなった。内容は、移送ルート近辺で違法装骨格の戦闘が発生し、警察と涼羽SAの承認の下で戦闘を行ったというものだ。


 この報告書と戦闘の映像データを涼羽SAで精査し、妥当だと認められれば、それが警察に送られ、あとは自動的に事務処理が完了する。


 昼頃に2人が報告書を書き上げると、矩場が深和と燎を連れて工房まで車で来て、そのままミーティングをすることとなった。


「……お前らホント、《《持ってる》》よな」


 開口一番、矩場が言った。


「初めての予備警備員業務で、装骨格戦闘に出くわすかよ」


「総点検の直前でよかったね。気兼ねなく暴れられたっしょ」


 燎が言った。


「で、2人ともカウンセリングは受けたんだな?」


「あぁ、問題ないそうだ」


 翔が答えた。


 戦闘直後、パイロットはカウンセリングとして、問診や導波動波形の検査を受けることになっている。悠之歩は軽度の興奮状態と動揺はあったものの、一般的かつ許容範囲内の反応とのことだ。一方翔は、戦闘から2時間には既に平常時の状態に戻っていた。


「翔先輩は、問題なさ過ぎて逆に異常って言われてましたけど」


「翔さん、メンタルもぶっ飛んでんね」


「そうか? 普通だろ」


「……まぁ、こいつに関してはもういい」


 矩場は呆れつつテーブル前の椅子に座った。


「戦闘の結果は、こっちでも報告を受けた。違法装骨格3機を無力化、パイロット2名逮捕、人的被害ゼロ。初の実戦にしちゃ上々だな」


 矩場が言った。


「パイロット1人には逃げられましたけど……」


 悠之歩が言うと、矩場はひらひらと手を振った。


「装骨格を無力化するって目的は達成してる。逮捕は警察の仕事だしな。それより春日と千秋、流火で実戦をやった所感は?」


「模擬戦と特に変わらなかった」


 翔はさらりと言った。


「俺も千秋も訓練通り動いたしな。違法装骨格が槍と剣しか持ってなかったのも、流火相手みたいなもんだった。周りに建物がある分、壁を蹴れるからブレーキや踏み台には困らなかったくらいか」


「まぁた参考になるのかならんのかわからん報告だな……千秋は?」


「えっと……僕個人の問題としては、音斬を撃とうと焦って、腕ばかり意識しちゃいました。だから音斬の成功率が低かったです。立ち回りは……とにかく目の前の相手に集中してたので、先輩と同じで、模擬戦と近かったです。暗視視界の訓練もやってましたし」


 歩法の感覚はもはや無意識にまで染みついているが、歩法と共に、しかも流火で柔法を意識するのはあまりに困難だった。そのため、剛法だけの単調な刀の振り方になっていた。


「なるほどな……音斬の方、もうちょい詳しく聞かせてくれ。敵に追いつきにくいとか、狙いやすいタイミングとか、どうだった?」


「1機、突撃と一撃離脱が巧い相手がいて……その機体を追うと、Gで丹田が刺激されて、音斬の直前に必要な脱力が難しかったです。緊張してたせいもあると思いますけど。他の2機は、方向転換が下手というか……隙が多かったので、音斬を撃つのに集中できました」


「機動戦になると撃ちにくいか……そういや、春日は疑似音斬撃たなかったのか」


「そういや出なかったな」


 翔は他人事のように言った。


「2機同時に相手してて、複雑な動きはしないようにしてたからかもしれん。プレッシャーかけて、千秋の方に行かないようにするのを優先してた」


「お前、そんなキャラの癖して、意外と他人を立てるよな」


「立ててる訳ではないだろ」


「褒めてんだから素直に受け取れよ」


「褒められたとも思ってねぇよ」


「ま、翔さんは流火で飛べてりゃそれで満足だしね。アドレナリン依存症なだけっしょ」


 燎が笑う。


「にしてもさ、矩場さん。戦闘区域は警察が封鎖してるんだよね? 出ようとする車とか人間の検問ってしないの? そこでパイロットを捕まえられないかなって思ったんだけど」


「あからさまに怪しいのは止めてるが、戦闘中に全部止めるのは無理だな。避難誘導はスピード重視だし。戦闘開始前に一般人全員を逃がせない以上、遅れて逃げてきた、無関係の人間もいるだろ。何より、細い裏道やら全部封鎖するのは無理だ。半径500メートルの交通規制でも、結構な数の警官が要るからな」


「あー、結局は人手か」


「後で、警察とSBPOが監視カメラを調べるらしいけどな。運が良けりゃ、追跡して後で逮捕できるだろ」


「SBPOもカメラを調べるんですか?」


 深和が質問した。


「装骨格犯罪の被害者のために、支援金を支給してるからな。申請者の身元とか調べんだよ。ほら、倉庫に装骨格を隠し持ってた奴が、被害者面して来るかもしんないだろ?」


「たまにいるんだっけ? マッチポンプで、保険金詐欺みたいな感じなのをする奴とか」


 燎が言った。


「ああ。ただ、SBPOのリスク管理部の調査能力は、警察以上って言われててな。被害者の正体見抜いて、警察に情報提供して、実行犯と黒幕を逮捕したこともある」


「ひぇ~、罪重そ」


「実際重いぞ。装骨格を使う時点で、ほぼほぼ人間への殺意があると証明されてるようなもんだしな。組織的に保険金詐欺に使うとなると、場合によっては内乱罪も乗っかる」


「ま、過失で装骨格に乗るなんてあり得ないしね。当然か」


「何にせよ、千秋と春日はよくやった。無事帰れたなら何よりだ。今日は帰って、ゆっくり寝ろよ」

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