表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/5

最終話 こんなメンツで世界救うってマ?

勇者一行↓

アレトス  男 18歳 勇者

フリード  女 16歳 弓使い

リリーナ  女 18歳 魔法使い

エリザベス 男 23歳 戦士

 勇者一行は魔王城に辿り着いたのだ!

 ずっと前にアレトスが魔王軍幹部を倒してしまっているので、道のりは語るほどの物はなかった。道中フリードが呆れていた事は、まぁ予想の出来る話だ。


「魔王って筋肉あるのか?」


 リリーナがアレトスに魔王について聞く。


「いや、魔法ばっかりで鍛えてなさそうな腕だったな。でも近づくだけで呼吸が出来なくなる」


「そうか、残念だ」


 リリーナが肩を落とす。その横でフリードが(あわ)ただしくしていた。

 理由は一目瞭然である。


「その〜、勇者アレトスよ。我魔王ぞ? ここで雑談するのは違くないか?」


 そう、魔王を眼前にして和気あいあいとしてる勇者一行など初耳にも程がある。

 空気を地味に読んでしまう魔王は、お茶まで用意しちゃってるし。


「どうぞ。粗品ですが」


 律儀にも魔王は、アレトス、フリード、リリーナ、エリザベスの4人分お菓子まで持って来ていたのだ。

 ラベルには「魔王城特産トマト使用! 絶品ほうじ茶」と書かれていた。

 フリードはこの状況の意味不明さ故に脳がクラッシュしてしまった。そのまま地面に倒れる。


「魔王め…… 俺の仲間をよくも!!」


 アレトスが怒った。そして聖剣が鞘から抜かれる。刀身は白銀に輝き、世界の闇を照らす剣。それこそ勇者にしか扱いきれない代物(しろもの)なのだ。

 ちなみに、前回の農家のおじさんも鞘から抜刀してました(フリード体験談)。


「威勢が良いな勇者よ。それでもお前1人では我に勝つ事は不可能だ!」


「いいや、今の俺には仲間がいるんだ!」


「勇者お前、後ろ見てみろよ」


 アレトスが振り返ると、そこには驚く光景が広がっていた。気絶して倒れてるフリード、バルクアップに勤しむリリーナ、恥ずかしくて柱の影に潜むエリザベス。


 アレトスは魔王に向けてニヤッと笑った。


「ふっ、これが日常だぜ」


「え、あえ? え?」


 魔王は混乱した! これが勇者の実力である。

 歴史上存在しなかった魔王を混乱の状態にした初の勇者、それがアレトスだ。


 アレトスは誇らしげに、はにかむ。その瞬間、上から光が降り注ぐ。


 魔王城は薄暗いと言うイメージだが、めっちゃ電球ついてて明るかった。気を効かせたエリザベスが演出として全部点灯させていた。


「あっ、電気代……」


 エリザベスによる魔王への精神攻撃。この戦いを早く終わらせなければ今月の支出が酷くなる。

 魔王は決意を固く持った。


「我の本気を見せる時が来た様だな。真の姿を見て生きて帰った物は数十人程度。勇者アレトスとて無事に家に戻れるとは……」


「ながい。うるさい。頭おかしくなる」


 フリードが意識を取り戻し、起き上がる。次に気絶しない為に魔王のセリフを制止した。

 魔王の変身が中途半端に止まり、微妙にダサくなった。体は進化してデカいのに顔だけ小さいまま。


「うっうう。うわーん」


 魔王は涙した。


「この日までずっと準備して来たんだよ? 魔王城の雰囲気を暗くしたりさ、そのせいで何回転んだと思ってるの? 勇者アレトス、もう止まってくれ……」


 フリードが魔王に一定の共感を示した。でも人類の敵であるには変わりない。弓を構えた。


「アレトス! 矢を後ろから渡してくれ!」


 フリードの手に握らされたのは聖剣だった。アレトスが真面目そうに語る。


「これを撃つんだ。そしたら強そうじゃない?」


 アレトスは続けて言い放つ。


「大丈夫だ。外しても取ってきてやるから」


 フリードは丁重に聖剣をお返しした。アレトスは悩んだ。魔王に無策で近寄るのは危険だ。

 5秒熟考した末に答えを導き出す。


「おりやぁ!」


 聖剣の投擲だ。その1撃は音を超えた速さで魔王の肩を掠めとった。そして、魔王城の壁に穴が空く。投げられた聖剣は勢い余って近くの池に落ちていった。


「なかなかやるじゃねぇか」


 アレトスと魔王の息が合う。アレトスは聖剣を落としてしまった事を。魔王は肩にちょっと当たった事に。


ゴゴゴゴゴーー


 大地を揺らす程の生命の鼓動が部屋を響かせる。魔王を含めて全員が後ろを振り向いた。

 そこに居たのはバルクアップが完了したリリーナだった。


「ふぅ、ふぅ」


 1歩進むだけで床にヒビが入りクレーターが出来る。魔王城の耐久値は高い。しかし、リリーナの筋肉がそれを上回った。それだけの話だ。


「怖っ、誰あの人?」


 たまらず魔王がアレトスに質問してしまう。


「うちのパーティーの魔法使いだよ。ほら雷を纏ってるでしょ? リリーナは筋肉に雷の負荷をかけてるんだと思うよ」


 魔王が表情は半笑いのまま、膝から崩れ落ちた。

 彼の本能はコイツらと戦うのを全力で否定し始めたのだ。


「ふぅふぅ。腹筋が喜んでいる」


 プロテインを飲みならリリーナが筋肉と語り合っている。

 魔王の戦意は喪失した。


「降参です。無理だよ、あの筋肉に押し潰されたら転生が今後出来ない気がする。本能がそう言ってるもん」


 魔王などの上位の魔族は死んだとしても長い年月を掛ければ必ず生き返る。その(ことわり)すら打ち砕く筋肉。


 魔王は世界征服を諦めたのだ。この魔法使いモドキ(リリーナ)がいる限り勝てないと。

 とりあえず電気代がもったいないので魔王は電気を消しに向かった。


「死ぬところだったぁ……」


 電気の制御室に入った時、部屋の隅に何か大きな物が(うごめ)いている事に気づいた。

 魔王は警戒する。


「何をして……」


「きぁぁぁぁぁ、見ないでっ!」


 エリザベスだった。視線による恐怖から逃れる為に魔王を全力でビンタしたのだ。


「あ、ぐはぁっ」


 魔王は倒された。不幸中の幸いか、倒された原因がリリーナではないのでいずれは転生する。

 その時には悪行は出来ない程のトラウマを1日で植え付けられていた。


 しかし、これで良かったのだろうか。フリードは帰り道に魔王に弔いを向けた。

 勇者アレトス一行の冒険は一旦ここで幕を閉じる。

読んで頂きありがとうございます!


これぞ明るいファンタジー。そして勇者じゃなくて筋肉を恐れる魔王。言ってることが意味わからないですよね。僕もです。

それでは、また次のお話で!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ