あああ!!!
その先にあるものは
変わった依頼を受けた。ただトンネルを進めばいいらしい、しかし一日に一歩しか進んではいけないという
報酬は出ないが、依頼は引き受けた。解決してみたい、ただそれだけで
一歩目
何も起きなかった。トンネルの先には微かに光がある様だが、虫も鳥もいない。後ろに一歩、後ずさると私はトンネルの入口にいた
九歩目
私は少女と手を繋いでいた。赤い帽子を被った私の膝ぐらいまでの背丈の少女。帽子を深く被っているせいかよく顔が見えなかった。
「こんにちは」とできる限り優しく言ってみたが、少女は前だけを向いていた
十二歩目
少女はやはり前を向いていた。私はポケットに違和感を覚え、左手でまさぐってみると食パンが一枚出てきた。ジャムも塗っていな食パンである。食べようとしたら急に吹いてきた風に飛ばされ、消えてしまった
十五歩目
少女はやはり何も答えない。そう言えばどうしてトンネルに入ると翌日まで進んだ位置にいるのだろう。風は吹いていない、私はラップに包まれたおにぎりをラップごと食べた
二十二歩目
線路に立っていた。ホームからたくさんの人がこちらを見ている、しかし動けない。ベルが鳴っているというのにいつまで経っても電車は来なかった。飽きてしまって、後ずさるとトンネルの入口に私は横たわっていた
二十八歩目
「つまらない顔をしているのね」
少女はこちらに顔を向けずそう言った。
思ったより大人びた声だったため思わず
「レディさんだったんだね」と私が言ったら
繋いでない方の手で帽子のつばをつまんで
顔を隠した
三十歩目
雨が降っていた。
内部ではあるはずなのに
夏の雨ではない、尖った重く冷たい雨だった
三十一歩目
首輪をつけられて、私は教室の一番前に立っていた。発言する者、皆が私を殺すべきだと
主張した。だがたった一人だけ私を生かすべきだと発言した少女がいた。皆はその少女に
墨汁を頭からかけて泣いていた。私が瞬きすると教室には豚が一頭寝ていた
三十九歩目
苦労のすえ私と少女は手を繋いだままラベンダー畑にたどり着いた。毒では無い美しいと思える様な紫のラベンダー畑だ。だが、少女は泣いてくれなかった。空を見上げたまま、口をあんぐりあけて太陽の光を待っていた
四十一歩目
ああ、この私が思っているより正義とは不確かな物だったのだろう。あの人は今日死刑を言い渡さたよ。私の目の前で無実を訴えていたのに、あんなに苦しそうだったのに。せめて首に縄をつけられるまでにあなたが幸福を恨んでいませんように
四十三歩目
喉が渇いたのでペットボトルの水を少女と半分ずつ飲んだ。口が濡れていたので、吹いてやろうとしたが「や!」と拒否するので、ハンカチを引き裂いてやった
五十歩目
目の前の棺桶に母が目を開けてしまわれていた
五十五歩目
片目を失った緑色の人たちが私の横を猫背で通り過ぎてゆく。待ってくれと言う暇もなく
そうして、ある程度通り過ぎた後にバズーカを持った老人が横を通っていった。老人は笑っていたが、気味が悪かった
五十六歩目
/pj-e868865だった。笑えたやっと
【追記なし】
五十八歩目
三十二歩目でようやく幸せを掴めたってのに
どうして君はトースターに餅米なんか乗せてしまうんだね。お地蔵様だってあんなに消費されてしまったから、ジャズの犠牲にだってなりたくなかっただろう。ああ、僕を馬鹿だ
靉靆だとか好き放題言ってくれ。キミとキスなんかした僕は逃げることも許されない
五十九歩目
トンネル内の地面はアスファルトであった
六十一歩目
三毛猫が寝ていた
六十六歩目
恐らくアルミニウムで出来ている扉を発見した。そばにはまだ原型を留めている清涼飲料水の缶が落ちていた。いくつか煙草の吸殻らしきものもあるようだ
六十七歩目
また人は首を吊った。足元に宝くじを散りばめながらこんなに綺麗な部屋でだ。もう散々だ、なぜ私の目の前でそうやって人生を捨ててしまうのか。窓には花が咲いているじゃないかチューリップだってダリアだって彼岸花だって向日葵だってそうだろう?そうやって私に悩みばかり押し付けて天国へと旅立ってしまうなんてあなたは勝手すぎるよ
七十歩目
驚くべきことに私の他にトンネルを往く人がいた。入口とは反対の方から歩いて来たのは
スーツを着た女性であった。怯えて私にしがみつく少女の頭を女性がそっと撫でると少女はとてもとても泣いてしまった。しかし、目的を聞きそびれてしまったが、どうして女性の靴はあんなに真っ赤だったのだろう
七十一歩目
目を開けた時、そこに見えたのは天井であった。ベージュ色の天井、確実なのは私が立ったとしても頭も手も届かないことだろう。
臍の位置に薄いタオルがかけられていた。捲ると下着の一枚も無くてどうやら私は裸であるらしい。バルコニーの方に目をやると少女が大の字で寝ていた。タオルなど無く肌を全て晒した状態である。起こしてやると目を擦りながら「花を見ていたらねてた」と言った。
バルコニーの周りには黄や赤や黒の薔薇が溢れていた。全てがきちんと咲いていた。
「どうして裸なんだ?」
「わかんない」
「身体が冷えてないかい?」
「ん、わかんない」
こんなやりとりが続いて、何かあたたかい物をいれようとしたら少女はお腹に手を置いて
「ねぇみて」
「息をすうとこんなにふくらむ、はくとこんなにちぢむ」と少女は嬉しそうに私に教えてくれた。「すてきだね」と私は笑ってしまった
七十二歩目
(要望)とだけ書かれた紙が落ちていたので
「もっと面白いことをください」と書いてその場に置いていった
七十六歩目
スコップで地面を掘っている者がいた。
なにをしているのかと聞けば
「虫歯を造っているのさ」と言うもので
私はどうやら人生で初めて虫歯を造る光景を見ることになったらしい。だがいつまで掘っても穴は全く広がらない
「硬いから当たり前だろう」額から汗を流しながらそいつは言った
私はともかく少女はと言えば私の足にしがみついて、顔を見せずに震えていた
「もしかして怖いのかい?」と聞いたら
小さな声で「へいきだもん…」と少女は言った
やれやれこんな光景はこれきりにしてほしいものである
七十七歩目
幸福が形あるものそれも綺麗でしか無い物だけで満たされたらなんと人生は価値の無い事だろうか。足元に落ちているこのダイヤはひとつとして私を愛してくれない。手のひらぐらい大きさがあってもだ。数でもない形でも無い大きさでもない私には私を愛してくれるだけのそれしか美しいとは認められない
七十九歩目
人生で二度目の中学校の卒業証書を受け取った。だが、その証書は名前以外白紙であった
壇上からたったひとりの女の子が私に向かって手を振っているのが見えた。やめてほしい
八十二歩目
草原に敷かれた畳の上で優雅にほうじ茶を
飲んだ。雨のように桜の花びらが降ってきたがどこから来たのだろう。モンキチョウが親指にとまってくれた。ありがとう
八十八歩目
目の前でサングラスをかけた男に
「引き返さないと恐ろしい事が待っていますよ」と言われた。やけに自信ありげだった
九十歩目
遠くから呻きがやって来たと共にそれは目の前にいた。ああ、すまない乱れてしまった。
背丈は五…いや六メートルはあるか?目から血液らしきものをひたすら流していて、複数ある手がからから動いている。腹に巨大な瞳がある。これは何なんだろう?
「喰い⌒lowシてやろうか?」それは私に言った。だが、私は目をあけて立っていた。
風が髪の毛を揺らした。蝉の声もした
「どうぞお好きに」
私がそう口にしてから数十分?私は生きていた
「なぜ二げ無ィ?死にタいのか?」
あらゆる声が混じった様なその声がトンネルに響いた。邪魔はいない
「もう充分だ」
「人生は充分使ってしまった。ここで終わっても私は悔いなんてない。さぁどうぞ」
手を広げて、死を待った。私は人生で初めて死を待ったのだ。それもあまりに醜い死をだ
「ふ…ふざけるなぁあぁぁぁ!!!!っっ!」
その時、複数の気味の悪い顔が私の周りを囲って、全てが私に襲いかかろうとした
ぱぢっ
少女が手を叩いた
そこにはトンネルが広がってばかりだった
「もう!いい加減にしてよ!」
少女はやけに不機嫌そうに私を見つめた
手を見てみると、煤で汚れてしまっていた
九十一歩目
もうすぐ小学校を卒業だというのに
「仕上げ磨きをしてくれなきゃやだ!」と
駄々捏ねるもので、私は初めて他人の口を磨く事になった。目いっぱいあけた口には小さな今にも壊れてしまいそうな白色の歯がいくつも並んでいた。中には斜めになっているものもあり、綺麗に磨くのは難しい。
歯茎に当たってしまったのか「んっ…!」と
右手を跳ね上げた。申し訳ない
そうして、ブラシを口から外す時には既に私の膝の上で寝てしまっていた。子供とはみんなこんなものなんだろうか
九十三歩目
マンホールがあったので蓋をあけて中を見てみると、私の家の風呂に繋がっていた。
掃除をしばらくしていない風呂を見るのは少し気まずい
九十四歩目
特になし
九十六歩目
下着を少女に選んでもらった。派手な色ばかり好む。だけど文句を言うのも申し訳ないな
「ご褒美に何か買ってあげようか?」と聞いたら「あたしとずっと一緒にいて!」なんて
返すもんだから頭を軽く叩いてしまった
九十九歩目
神父すらいない式場の真っ赤な絨毯を新郎新婦がゆっくり進んでいく。式場には他に私しか来ていない。壇上のマリア像は片目がえぐれてしまっているし、ピアノは半分が布で隠されている。そして、二人は盃を手に取ると私に酒をついでくれとお願いした
「私なんかでいいのか?」
「いいの。それぐらいで」
二人は同じ盃をそれぞれ一度だけ口付けした
何かを失ってしまった気分だったが、あなたのその純白のヴェール姿が宇宙からやっと辿りついた何億年も前の光で染められて、私は心の底から笑ったのだった
百歩目
踏み出したと同時に私はトンネルの入口に立っていた。まるであの時の様にだ
がっかりして、トンネルからマイナス一歩を踏み出すと、あたたかい雨が降っていた。
傘なんて持っていない、駅まで走るかと思ったその時
「どうぞ」と傘を差し出したのは化粧もしていない淑女であった
私はどこかでこの顔を見たことがある、だが口にしてしまえば何もかもがほんとうにがっかりする結果になってしまうだろう。
私は淑女と手を繋いで駅までゆっくり歩いた
トンネルが遠くなってゆく
何もかもが
マイナスになってゆく
【調査終了】




