表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】菊池家には、カレーの祭壇がある  作者: みこと。@ゆるゆる活動中*´꒳`ฅ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/2

弟が家族になった【心春side】

 "心春(コハル)に可愛い弟が出来るわよ"


 再婚する母が、私にそう言った。

 相手の男性、つまり父になる人の連れ子は私と同じ高校生。


 見せてくれた写真は中学の頃のものらしく、可愛い男の子が写っていた。


「最近はあまり写真撮らせてくれないんだって」


 それで中学時の写真。

 わかる、わかる。私も親に撮られそうになると逃げちゃうもん。


 写真で記憶した少年と、初めて対面した時。

 直近の写真じゃなかったことを、激しく抗議したくなった。


 菊池早翔(ハヤト)


 私の新しい弟は。

 見上げるほどの高身長で、男らしく整った顔面の持ち主だった。


(ふぅわあああああっつ?? こんなの、聞いてない!!)


 異性という感じがガンガンにする。

 広い肩幅、筋肉質な腕。成長期にしっかり育った同年代がそこにいた。


 嘘でしょ? こんなのと同じ空間でこれから生活するの?! うちの親と相手の親は、子どもの情緒なんだと思ってるの?? まさか大丈夫だと思ってるの? どっちも年頃の男女だよ?!


(私自身が中学の時とあんまり変ってないから、思い切り油断してたわ)


 菊池くん……、あ、私も菊池になったんだっけ。

 早翔くんは平然としてる。


(なんでアンタも異論を唱えんのじゃーいっ)


 とはいえ、ずっと頑張ってきた親が幸せそうに笑っていると、文句なんて言えないよね。私もそう。

(はっ、それともこんなチビは対象外ってこと?!)


 私が平均よりちょっと低めの身長なので、まだ幼く見えることは認めるけどもさぁ。年は立派な女子高生なのですよ。

 でもって私が"姉"なのですよ。11か月先に生まれてますからね。


(一緒に住むって本気なの?)


 呆然としている間に諸々の挨拶が終わり、二階の部屋を割り振られた。

 彼の隣。


(親ども~~! 危機感足りなさすぎんか?!)


 あああああ。もうもうこんなの、慌ててる私だけが馬鹿みたいじゃない。


「"お姉ちゃん"って呼んでね」


 私に出来ることは、ヤツを意識しないよう家族になってしまうこと。

 にっこり笑って、早々に防護壁を作った。


 そして決意した。

 "早く好きな人を作ろう"と。


 弟相手に、おかしなことにならないように。



 そう思ったのに。


「……なぁ心春(コハル)、あのカレーって食わねぇの?」

「"お姉ちゃん"って呼んで!」


 この愚弟は何度言っても、呼び方を改めやがらないんだわ。

 やや精悍な低い声で、私の名前を呼び捨てるんじゃない! ゾクゾクしちゃうでしょーが!

(思いっきり好みな声とか! どうしてくれんのよ、もうっ)


 ちなみに今の問いは、私が部屋に飾っている、レトルトカレーに対しての質問だ。

 どうやら狙っているらしい。育ち盛りめ。


「食、べ、な、い! 手を出したら承知しないからね!」


「てか、どうしてずっと飾ってんの?」


 うむ。もっともな質問。


 それはね、プレゼントで貰ったカレーが「中辛」表示だからだよ。

 中辛って甘口に近いものと、限りなく辛口に近いものがあって、迂闊に手が出せない。お子様舌の私に、後者が当たると哀しいことになっちゃうのだ。

 でも食べたくはある。

 つまり今は覚悟のための猶予期間ね。


 しかしそんなことより。


「! っ、関係ないでしょ。乙女の部屋のぞかないでよ」


 ナチュラルに他人(ヒト)の部屋に入って来る距離感を問い(ただ)したい。が!


 早翔くんは今まで男子校だったそうで、男女の距離にニブいことが、これまでの観察で分かっている。


 そういう子ってフツー女子に免疫無くて遠慮せんか? と思ったのだけど、彼の精神年齢は見た目よりずっと少年だったのだ。

 私だけ一方的にドキドキしてるとは、悟られたくない。


 意に反して火照ってた頬を感じてると、見た目にも出てたらしい。


「なんで真っ赤に……。はっ、もしかして彼氏からのプレゼントとか?」


 続いた言葉に、心臓(ココロ)が跳ねた。


 彼から"彼氏"という単語を聞いて、こんなにビクつくなんて。

 私ちっとも平常運転できてない。


 誤魔化すようにカレーについて講釈を垂れながら、早翔くんを部屋から追い出した。

 かなりカレーにご執心のようだった。まあね、1000円のカレーとかどんだけ美味しいんだろうと思うよね。甘口だったらなぁ。



 とにもかくにも日常生活が危うい私は、さくっと恋人を……そんなに簡単に出来たら、苦労なんてしない。

 ともあれ努力はしないと。


 いいなと思ってる男子(ひと)はいるのだ。

 カレーをくれた有野 勇くん。人当りの良い性格で、落ち着いてるし。

 とりあえず彼についての情報を集め……。


「有野くん? 他校に彼女いるよ?」


 終わったぁ──!!


 即終了でした、はい。

 彼女持ちに手を出すなんて、絶対やっちゃいけない。


 これは失恋? 失恋になるのかな?


(貰ったカレー、さっさと食べよう)


 そうして帰宅して口にしたカレーは、予想通り私には辛くて。


 泣きながら食べてたら、早翔くんも帰って来た。そして涙に驚かせてしまった。


 辛くて泣いてるなんて、幼い子供みたいで恥ずかしい。

 咄嗟の私の口から、出た言葉は「失恋した」という言い訳だった。


 びっくりした。めっちゃ気を遣われてくれて、こんなに優しかったんだと危うく(ほだ)されかけて……。


 ダメダメ、弟なんだから。

 え? "カレー巡り"?


 そうね、いい機会かも。一緒に出掛けて免疫つけて、完全に"家族"と割り切れちゃえば。


(よっし、頑張るかぁ!!)



 その時はまさか、向こうが私を意識しはじめ、積極的にグイグイ来るようになるなんて、予想もしてなくて。

 両親だけでなく私たちも、夫婦という家族になっちゃったことについては……。


 人生ってわっかんないよね──って思ったのだった。




 お読みいただき有難うございました!


 唐突に思いついて書き加えた「心春視点」なので、いろいろ不備があるかもなのですが、本編に対する"味変"ということでお楽しみいただければ幸いです(*´▽`*) 心春ちゃんお口悪い…(笑)


 義理のきょうだいは分籍したら結婚可能らしく。

 彼らの両親は反対しませんでした。"私たちの遺伝子が孫レベルで繋がってくなんて素敵よね"だそうです。のんき!!(≧□≦);


 というわけで、男の子も女の子も菊池というお話でした。

 それにしても「菊池祭り」大盛況。菊池と聞いて真っ先に浮かんだのは、菊池寛。ついで菊池秀行でした(笑) 文書く人ばっかりや(笑)


幻邏様から作品バナーをいただきました♪ありがとうございます!

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
良かったらコチラもよろしくお願いします!
短編が多いです!

・▼・▼・▼・▼・▼・
【総合ポイント順】
・▲・▲・▲・▲・▲・

・▼・▼・▼・▼・▼・
【新しい作品順】
・▲・▲・▲・▲・▲・

・▼・▼・▼・▼・▼・
【異世界恋愛+α】
・▲・▲・▲・▲・▲・

【直近の作品】
『あの時あなたは、私を捨てようとした』
【もふもふの作品】
『婚約破棄される予知夢を見たけど、望むところよ!』
― 新着の感想 ―
[良い点] 「カレーの祭壇」というタイトルから引き込まれ、ラストまであっという間でした。そういうことだったのですね。二人のそれぞれの心境が合わせ鏡のように生き生きと描かれて、さらにその先の未来がとても…
[良い点] タイトルから、何だろう? と惹き込まれました。 発想がすごく面白いです! 義理の姉弟にきゅん……♡ 心春ちゃんサイドを読んで、そうだったのかと笑いました。 イラストも可愛いですね(´▽…
[一言] まさかの真実にニマニマしてしまいました(*´ω`*) お互いがお互いを意識しちゃっていたとは……! また義理のきょうだいが結婚可能とは知りませんでした! 確かに血は繋がってないですものね。 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ