海を見ている背中が嫌いだった (超短編×2)
海を見ている背中が嫌いだった。
あいつが海を見ている時は、あいつがここにいない時だから。
俺の下を離れて、ただ、遠く、どこか俺の知らない場所を想っている時だから――。
俺の目の届かないところで、あいつは何の断りもなく、勝手に満足してふっと消えてしまうような、そんな危うさを感じていた。
俺とあいつは、どれだけ親しくしていても、別の生き物だから。
歩みの違う鼓動を抱えて、ただ、それぞれに進んでいくしかない。
何を見ているのか、何を想っているのか。
きっと、俺には見えない物が、あいつには見えているんだろう。
俺では感じられないことが、あいつには感じられるんだろう。
知っている。
もう何度も繰り返しているから。
――あいつはいつも俺を置いてけぼりにするんだ。
きっと、あの時、むりやりにこっちを向かせることだってできた。
“こっち向けよ”
その一言で、あいつは笑って、俺に顔を向ける。
そんなこと分かり切ってた。
あいつはただただ、優しくあろうとする。
だから。
だからこそ、それを知っている俺が声をかけてはいけないと思った。
俺などが手を伸ばしていい存在じゃない。
……本当なら、俺とあいつが出会ったことすら……どうなんだろうか。
この出会いは正解だったんだろうか。
あぁ、いけない。考えても仕方のないことをまたぐるぐると回し始めている。
俺は、決めたはずだ。
たとえ結末がどうなろうとも、この出会いを正解にするんだと。
俺は、あいつと出会ったことも、あいつと時間を共にしたことも全て、それでよかったんだと思うことにしたんだ。
そうでなきゃ、あいつとまっすぐ向き合うことなんて、とても出来ないから。