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完結戦
鶏戦記 完結戦
一週間後、Sは生の丸鶏を買ってきた。
圧力鍋を用意し、水、すりおろしたニンニクと生姜、そして塩を入れて味を調える。
そこに水洗いした丸鶏を入れた。
生の丸鶏はローストチキン以上に、死んだ生き物を感じさせたが、ローストチキンを切り分けるときに感じた胸騒ぎはなかった。
ただ生き物を料理するという、当たり前の気持ちをSに与えた。
蓋を閉めて火をつけ、圧力がかかったところで十五分弱火で煮る。
手羽元で何度もやっているだけに、手馴れていた。
減圧も含め、小一時間で丸鶏の蒸し煮が出来上がった。
圧力鍋で煮ると、肉の身離れが良く、切り分けも楽に出来る。
スープも濃いくらいの出汁が出ていて、美味しかった。
ローストチキンを作るとなると手間がかかりそうだったが、これならすぐに出来る。
新しい発見と満足で、戦いは終わった。
食べる所から始まったこの戦いは、自ら丸鶏を煮るところまでさかのぼる戦いになった。
それは、食料を自ら獲ってくる事がほとんどない今、生命に思いをめぐらす一つの機会、戦いだった。
完