9話 オーシェン王子の憂鬱
「エスタレアを王都から追放するように仕向けたとはリンディリアなんだろ?」
僕が好意を寄せていたエスタレアが、妹のリンディリアによって王都を追放されてしまった。
「そ、それは」
「エスタレアが僕をたぶらかしていたという噂になっているけど、僕が彼女に一方的に片想いをしているだけということは、リンディリアも知っているはずだよね」
「……だからこそ、私の愛するオーシェンお兄様が、あのような女に想いを寄せているなどとは到底納得できず、お父様に偽りの報告したのです……」
「何か言ったか?」
「いえ、何でもありません」
「はぁ、もういい、しばらくは顔も見たくない。次にエスタレアに何かしたら、僕が許さないから」
「分かりました……」
リンディリアが僕を溺愛しているのは知っていたが、まさか、エスタレアにまで危害を加えるとは。
僕の考えが浅かった。
「エスタレア、怒っているだろうなぁ……」
◇
僕がエスタレアに初めて出逢ったのは、魔法学校に通っている時だった。
エスタレアは僕の一つ上の学年で、魔法成績は優秀ではない様子ではあったが、何事にも一生懸命に取り組んでいる姿に、僕はいつの間にか心惹かれるようになっていた。
そんなある日、魔法学校の生徒に扮していた敵対している王国からの刺客に、僕は命を狙われた。
傷を負いながらも何とか返り討ちしたので、魔法学校の医務室に向かったのだが、途中でエスタレアに偶然会って、僕の傷を治癒魔法で治してくれた。
エスタレアは治癒魔法が得意で、怪我を負った生徒をよく治していたらしく、傷を治した相手がアルザナ王国の皇太子だということには気づいていなかった。
「そんなところもエスタレアの魅力なんだよね」
刺客に襲われたことで父から指示を受けて、僕はそのまま魔法学校を自主退学することになってしまった。
エスタレアに逢えなくなってしまったため、僕は傷を治してくれたお礼の手紙と贈り物をさせてもらったのだが。
「まさか、その様子をリンディリアに見られてたなんてね……」
エスタレアが卒業する時に告白をしようと思っていたのに、魔法学校自体に通えなくなってしまった。
手紙をきっかけに逢う機会を作って、仲良くなれたら告白したいと思っていたのに、王都からもいなくなってしまった。
「やっぱり、僕とエスタエレアは縁がないのかなぁ」
でも、考えてみると、本当に縁がなかったら、出逢うことすらなかったんだよね。
「よし、父上にエスタレアが僕をたぶらかしていたという話はリンディリアの嘘だったという話をして、まずはエスタレアの王都に入れなくなってしまった禁を解いてもらう。そして、エスタレアにしっかりと謝罪をして、まずは友達になってもらう」
最悪な印象からの出発で前途多難だけど、ここまで女性に心惹かれたのは初めての体験だから。
「もう少し、あと少しだけ、この恋を諦めないことをお許しください」
遠く離れた地に行ってしまったエスタレアのことを想いながら、私はそう呟いた。
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王子を溺愛する王女に嫉妬され悪役にされた天然系の令嬢は、王都を追放された後も心優しい伯爵の息子達から愛されました【リメイク版】
というタイトルでリメイク版を完結させましたので、興味がありましたら、そちらも読んでいただけると幸いです。