8話 尊い仲間達
「今日は、わざわざ来ていただき、ありがとうございます」
「エスタレアが誘ってくれたのに、来ないわけがないじゃないですか」
「俺も楽しみにしていた」
今日は私達の家で、イヴェエルとフーリュに助けられたお礼も兼ねて、アミーラの全快祝いのパーティーを開くことになった。
「私のためにパーティーなど開かなくてもよいと何度もお伝えしたのですが」
「アミーラは気にしなくていいの! 私がどうしてもやりたかったんだから」
「エスタレアお嬢様がそう言ってくださるのであれば、今日はお言葉に甘えて楽しませていただきます」
「うん、ぜひそうして欲しい。イヴェエルとフーリュも楽しんでもらえると嬉しいです」
三人がいなかったら、あの時、私は確実に魔獣に殺されていた。
アミーラ、イヴェエル、フーリュには返しても返しきれない恩ができてしまったと感じている。
「それでは遠慮なく楽しませていただきますね」
「フ、この場にいることで、すでに楽しんでいるがな」
「エスタレアお嬢様、私は本当に感激しております」
でも、この三人はきっと、そんなことを考えもしないだろう。
そんな素敵な仲間達に出逢えたことを、私は心の中で深く感謝した。
◇
「イヴェエル兄さん、今回の魔獣討伐で起こった出来事ですが、秘密結社レイアルクが背後で何か動いているのかもしれないですね」
楽しい時間を終えた後、私達は魔獣討伐で何が起きていたのかを振り返っていた。
「ああ、それは俺も考えていた」
秘密結社レイアルクは魔術の力で世界を収めようとしている組織。
諜報員が世界中に散らばっていて、世界を自分達にとって都合のよい方向へ導こうとしていると言われている。
「陰謀論としか思っていませんでしたが、本当にそのような秘密結社が存在しているのですね」
秘密結社の存在は聞いたことはあったが、本当に実在しているとは思わなかった。
「実際に存在していて魔術研究がなされているのは事実ですが、謎が多い組織ですので、その目的が本当に世界を収めることなのかは、実のところ分かってはいません」
「どうして、秘密結社レイアルクが関わっていると?」
近辺に怪しい人物がいたようには見えなかった。
「そもそも魔術で狂暴化した魔獣が群れを成している時点で違和感があります。その狂暴性から同じ魔獣同士で殺し合うこともあるくらいですから。ですから、今回の騒動の魔獣の動き方を思い返してみても、魔獣達を先導する者がいたのではないかと推測されます」
ふむふむ。
「そして、魔獣が群れをなしていたということは、魔術を組織的に使っていたということになりますが、現在、魔術を組織的に研究しているのは秘密結社レイアルクのみです」
「なるほど」
相変わらず、フーリュの説明は分かりやすい。
「現時点ではそれくらいしか分かっていませんので、後は捕えた魔獣を調べていくしかないですね」
「分析はフーリュの方が得意だからな、お前にお願いするよ」
「フフ、任せてください、イヴェエル兄さん」
フーリュがイヴェエルに頼られて嬉しそうにしている。
「……それって、エスタレアお嬢様に、また危険が降りかかるかもしれないってことよね……。今回は悔しい思いをしたから、もっと強くなっておかないと……」
「アミーラ?」
「エスタレアお嬢様、私はもっと強くなります!!」
「あ、うん、でも、アミーラの身体に傷痕が残ったら嫌だから、できれば今回みたいに無理はしてほしくないかな……」
特に顔に傷でも残って、もしアミーラの結婚に支障をきたすようなことになってしまったら、本当に悲しいし。
「お嬢様……」
勢いで魔獣討伐に参加してしまったが、危うく大切な親友を失いかけるところだった。
私が危険に遭遇するということは、アミーラも危険にさらされるということ。
気持ちだけで行動するのではなく、そのことを理解して行動しなければならない。
今回の件で、私はそう強く実感した。
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