5話 魔獣討伐(前編)
「どうして、エスタレアとアミーラまでここに?」
フーリュが愕然としている。
「俺としては三人が何故ここにいるのかと問い詰めたいのだが」
イヴェエルが現れて、私達にそう言った。
「そ、それは、今回の魔獣討伐があまりにも危険なので、無理を言ってイヴェエル兄さんと一緒に戦いたいと父にお願いしたんです」
「それで、その願いが却下されたので、勝手について来たと」
「痛い、痛いです! イヴェエル兄さん!」
フーリュの頭をグリグリしながら、イヴェエルが怒っている。
「フーリュ、お前の実力は知っているが、この任務がどれだけ危険か分かっているのか? 将来、伯爵となるお前がいていい場所ではないぞ」
「だったら、なおさら手伝わないわけにはいきません。イヴェエル兄さん一人に、そんな危険な任務させておいて、私が平気でいられると思っているのですか?」
「その気持ちはありがたいが、それとこれとは話が別だ」
「別の話ではありません。逆の立場だったらと考えてください。もし、私が魔獣討伐に行くことになったとして、イヴェエル兄さんは私一人で行かせますか?」
「それは、行かせるはずがないだろう」
「だったら、私も同じ気持ちだと分かってください」
一歩も譲る気はないといわんばかりに、フーリュはそう言った。
「はぁ、舌戦でフーリュに勝てる気はしないな。自分の身を一番に護ること。それが最低条件だぞ」
「はい、それは必ず。ありがとう、イヴェエル兄さん」
なんだかんだ、イヴェエルはフーリュに弱いよね。
喧嘩にならなくてよかった、よかった。
「おい、エスタレア、どこに行こうとしている。本題はこれからだぞ」
「あ、やっぱり、見逃してもらえませんか?」
二人が仲直りしたみたいだったので、そそくさと、この場を立ち去ろうと思ったのだが。
見逃してはもらえなかった。
「当たり前だ。どうして、エスタレアまでここにいる」
「それは、私も聞きたいですね」
やっぱり、聞かれるよね。
「私は、フーリュとは違ってちゃんと志願をして、後方支援部隊の一員としてここに参加していますよ」
「そんなことは分かっている。そうではなく、エスタレアはここにいるべきではないということを言っている」
「そうですよ。エスタレアには、危険すぎる任務です」
う、二人がかりは卑怯では?
「本来であれば、このような場所に私がエスタレアお嬢様をお連れするはずがありませんよね」
私が、しどろもどろになっている様子を見て、アミーラが助け船を出してくれた。
「では、どうして、エスタレアお嬢様がここにいるのか。お二人には深く考えていただきたいと思います」
「「うっ」」
アミーラの気迫に、二人が言葉を詰まらせている。
「……はぁ、どうして私が二人のためにこんなことを……」
「戦闘にまで参加するわけではありません。イヴェエルとフーリュが万が一怪我を負った時、直ぐに治癒魔法で回復させられる場所にいたい。ただ、そう思っただけなんです」
「そうか、エスタレアのその気持ちはありがたく受け取っておく」
「そうでしたか、そう思ってもらえていることはとても嬉しく思います」
イヴェエルとフーリュは、それぞれそう言ってくれた。
結局、戦闘には参加しないということを条件に、私達は後方支援部隊に残ることを許してもらった。
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中編に続きます。