闇に咲く2
「監視カメラでバレてるから急ごっか」
言われて周りを見回してみると確かに監視カメラが設置されていた。
今更どうしようも無いので対応される前にボスのとこまで行く。
下から人来ても面倒くさいし。
俺はデスクを持ち上げ階段を塞いだ。
「エレベーター押しといて」
「分かりました」
これで少しは時間稼ぎになるだろ。
走って階段に向かう。
音を立てないように駆け上がる階段を一階分上って止まる。
このまま昇ってボスのとこに行くのも可能。
だが後で追いつかれて挟まれてしまうと面倒か。
よし、倒そう。
教室に入るかのように無雑作にドアを開ける。
一瞬俺に視線が集まる。いつものように一瞥ですまそうとしたのだろう敵たちが。
各々元々見ていたところに視線を戻、そうとして勢いよく俺を見直した。
二度見だ。
全員が揃って二度見するもんだからもしかして打ち合わせしてたのではないかと疑ってしまうほどだった。
「お前、誰だ!?」
スーツの内ポケットに手を入れ拳銃を取り出そうとしながら言い放つ男。
これも会話で時間を稼ごうって感じかな。
「湊」
それだけ言って俺は駆けだした。
狭いし床の強度もわからないので本気では走れないがそれでも、かなりのスピードで走り出す。
室内ではより速く感じる。
机をハードルの要領で飛び越え肉薄する。
「はやっ」
それがその男の最後の言葉となった。
ま、死んではないんだけど。
前言った野良医者必須技術全書の応用だ。究極医療術という原本をまとめたものらしいが500ページ近くある。いつか究極医療術も読みたいな。
今度古本屋行くか。
そこからのことは書くのも面倒だ。
何の変哲も面白みもないのだから。
圧倒的、それが表すのならいいだろう。
相手に対応する暇さえ与えずに全て倒す。
それだけだった。
「この階も制圧完了」
7から9階までを少し急ぎめで合計2分もかからない内に制圧した。
さて、最後のボス部屋ですかね。
ドン、ボス、頭。ここがマフィアなのかヤクザなのか分かんないけど。
「たのもー」
旭が勢い良くドアを開ける。
「う〜ん、早かったねぇ。ただ下でドンドンやってるのは聞こえてたからねぇ。来るのは分かってたよ。つまり、下の部下が来るんだよねぇ」
「それより早く片付けりゃ良いだけだろ」
「そんなこと出来るのかなぁ?」
ニヤッと笑うボス。
予想外の事態の筈だ。下の部下が倒されたってことだってさっき入耳に入ったぐらいだろ。
君悪いぐらいだな。
ハッタリか、それとも。
関係ないな。
フェイントも無し。
小細工もなし。
作戦もなし。
必要なし。
速攻、一直線、最速で、握りしめた拳を顔面に叩き込む。
センサーが反応する。
タレットのようなものが展開しようとする。
でも、間に合う訳ないだろ。
「……!!」
ボスは流石に武道の経験があるのか。反応し防御する。
速さを目的としたものだから最大の威力、というわけではない。
だが、それでも俺の拳はボスを1mほど後ろに弾いた。
違和感。
少し、違う。
何かを着てる?
俺が不思議そうに手を眺めているのを見て、ボスが笑う。
「気付いたか、パワードスーツだよ!」
そう言って上に来ていたコートを脱ぎ捨てるボス。
明らかにコートが変な形してたしな。
某社長兼ヒーローみたいな感じだな。
ボスって呼んでるのなんか変だな。
「名前、」
「あ?このスーツのか?アビスだ」
「いや、お前の名前」
「俺かい?俺は、ガイアだ」
コードネームか。
十分だ。
「警察が来るまであと何分ぐらいだ?」
「5分ぐらいかな」
十分すぎる、むしろ十二分。
おつりが出るくらいだ。
先ずは、タレットを破壊する。
実はさっきから話しながら弾を避けたり弾いたりしている。そろそろ、面倒だ。
一気に接近してはか......。
いきなり、変形しだした!
ロボットになるのか?動くの?二足歩行スタイルになるの?でもごめん。
大体タレットの周り五メートルに入ったぐらいから変形しだしたのだが変形し終わる前にたどり着いてしまった。
撃ちながら変形しているのだから普通間に合うのだろうが残念。
今更振り上げた足を止める気にはならなかった。
もう一基あるしそっちでいいや。
そう思ったのだが、もう旭が壊していた。
「......!いや、分かっていたさ。流石にそこそこやるんだな。でも、たかがタレットを壊した程度で何だ。このパワードスーツは砲弾すら防ぐ!さらにパンチ力は3トンを超える!」
パワードスーツから頭部分の装備が出てくる。変形というほどじゃないが。よくある感じのスーツの変わり方だ。
「そうか、俺のこの身は銃弾ぐらいだったら防げて、パンチ力は計測マシーンが壊れたから分からん」
出来心でやったのだがぶっ壊れたときは流石に焦った。何かハンマーみたいなの持ってきて必死に誤魔化した。お陰でめっちゃ怒られて弁償するだけで済んだ。
「そうか、だがその程度!」
ドンっと地面を蹴り向かってくる。少しだけ床が凹んだがそれぐらいの強さなら踏み込んでいいのか。俺もそれに合わせて踏み込む。
相手の拳を首を傾けて避け、クロスカウンターを狙...!
直後俺は弾き飛ばされるようにその場を飛びのき回避行動を取った。
直後エネルギー弾が腕から出された。
手のひらではなく前腕に発射装置が付けられてるみたいなイメージ。
腕時計を付けるところらへんに少し盛り上がりと穴があった。
そんな風に射出されるのね。
念の為回避したがあの太さのなら避ける必要もなかったか。
ただ、射出方法が一つとも限らない。爆発させるみたいなこともできるのか?
それと触れた場合どうなるか分からない。
いきなりのSF要素だな。
「ふむ、良く避けたな」
念の為ギア上げるか。
集中力を高める。
感覚をどんどん研ぎ澄ましていく。
これちょっと疲れるんだよな。
所謂、ゾーン。
「来いよ、来ないならこっちから行く」
もう一度床を蹴り肉薄する。
こっちは遠距離武器を持ってないから撃ち合いは出来ないからな。
肉弾戦しかない。
顔狙いの飛び蹴り。
当然防がれる。馬力はやっぱ負けてるか。
最初のパンチの時はまだちゃんと起動してなかったとかか?
今度は手数で攻めていく。
膝蹴り、ストレート、ジャブ。
相手のパンチを屈んで避けてダンサーみたいに足を回して足払い。
アッパーと思わせて回し蹴り。
「くそ!速い...。だが、パワーなら勝っている」
俺の殴りを受け止めながらのストレート。
なんとか左腕でガードするも少し離される。
こっから最速で殴りか蹴りを入れるには?
体の力を抜き、倒れこむように詰める。
体に力を入れて踏み込むという予備動作を無くす。これぐらいの距離なら踏み込んで行くより速い。
相手からは一瞬で相手が近づいてきたように見えるだろう。
回転数ではなく一歩の歩幅を広げた詰め方。
そんで、腕を取って投げ飛ばす!
リミッツオフ。
ようは火事場の馬鹿力の意図的発動。
人間は普段100%の力を出していない。
というのも筋肉の限界、100%の力を出すと体に大きな負担がかかるのだ。
だから普段は脳により安全装置がかけられている。
それを一時的に外す。
筋肉を軋ませながら投げ飛ばし壁に打ち付ける。
そこに追い打ちをかけるように走って飛び蹴りをする。
壁を貫き外に出る。
足場なんてないのでもちろん自由落下。
こっからもう一度投げて地面に打ち付ける!
流石にこの高さから落ちたら少し痛い。ちょい痺れてる間に...とかもいやなので壁に足をかけるようにして勢いを減らす。
ガイアが落ちる寸前のところで態勢を立て直す。
そしてロケットのように足からジェットをだし昇っていく。
すれ違い俺は地面に降りる。
「残念だったな!」
そういって元の十階を目指していく。
あそこまでジャンプとかは無理だし。
助走距離確保。
思いっきりだ。
ドンっと地面を陥没させるほどの勢いで走り出し。
壁を、走る。
凄い前傾姿勢みたいな感じになってるが仕方ない。
ガイアを追って走っていく。
ガイアは戻るのではなく。屋上へと行っていた。
「よし、一度立て直して......」
まだ、少し浮いてるのか、それじゃ。
屋上の縁に足をかけ思いっきり飛ぶ。
そして体全体を捻って。思いっきり。
「お兄ちゃん、パンチ!」
「は?」
やっぱ無しだな。この名前。
浮いていたガイアを地面に打ち付けるように吹き飛ばす。
止めの、キック。
10階の天井を突き破り瓦礫とともに着地する。
パワードスーツには罅が入っていた。
「やっぱここ鉄筋コンクリじゃないな」
俺はこんなに簡単に壁や天井が壊れたことに驚いていた。
裏山のところが頑丈だったのか。
「おつかれさん」
旭がやってくる。
凪は何だかぼーっとしていた。
俺も口を開こうとしたタイミングでパトカーの音がした。
あ、サツか。
それと、多分部下たちが階段を上がる音。
「話すことも特にないし、先に、」
「逃げるか」
呆けている凪を抱えて開いた穴から飛び降りる。
「え?え、えぇぇえええ?」
やっと、自分の置かれた状況に気付く凪。
「舌噛むなよ」
忠告だけして俺は着地した。
ッツ。ちょい痺れる。
「よし、お前の親と妹も心配してるだろうし帰るぞ」
凪を降ろし俺と旭は夜の街を歩き始めた。
まぁ、ここ市街地じゃないんだけど。
色々お願いします。寝る。




