人に名乗って貰うときはまず自分から
「嘘か誠か佐野湊武勇伝〜!」
「パチパチ」
「おっと、もう諦めたね湊」
「まぁ、分かってたからな」
「うんうん、それじゃ。お便り読みます。ペンネーム幽トくんさんから。佐野湊さんといえば圧倒的運動神経で有名ですが。野球スタジアムに引っかかった風船を取ってあげたことがあると聞いたんですがそれはホントですか?と、これはどうなんですか?」
「ホントだな」
「お、妹の風船?」
「いや、中2の修学旅行のときかな。同じ班の女の子が手を離しちゃって取ってきた」
「あ〜あのときね。俺は別行動だったからな。何で取って来たの?」
「いや、取れるって独り言言ったの聞かれてそれだったら取って来てよって煽られたから」
「地味にガキだったよね〜。煽られ耐性低すぎw」
「うるせぇ」
「最強故の障害だね〜」
「…」
「はい、それでは今日はこれにて!」
うーむ、所属、じゃなかった。
どうしたもんかね覆面でも被れば良かった。
実は帽子被ってはいたから。まぁ、大体の奴には顔見られてないだろ。
目の前のお嬢様にはバレてるだろうけど。
「あなた、とても強いのですわね」
ですわね?
今時そんなお嬢様口調なことある?
「私、涼宮 葵ですわ、貴方は?」
律儀に自分から名乗って来やがった。
これ俺も名乗るべき?
いや、でもなぁ。
帽子をもう一度深く被る。
「ミーサ、取り敢えずそれで頼む」
「偽名ということですわね。良いですわ、貴方、私のボディガードになってはくれません?」
そうくる?
学校ではってことか。
今回は学校でのことだった。
ボディガードをきっとつけられるだろう。
高校生ぐらいの俺なら浮かねぇんじゃないかってことか?
でも、それなりに俺の素性調べられるよな。
めんどくさ。
「ちょっと無理」
それだけ言って俺は制圧した奴らを回収しに行った。
4人を担いですぐに外に走る。
旭に相談しよう。
「あ、速、断られてしまいましたわ」
俺が去った体育館で涼宮は1人呟いた。
「おーい、旭。連れて来たぞ」
「お、ナイスだね、流石」
「銃弾飛んできて焦ったわ」
実際ギリギリだったからな。
「ホントはスナイパー壊してくれば良かったんだろうけどね」
確かに、そりゃ撃たれるわな。
「もう、俺はついてなくて良いのか?正直居づらい」
「大丈夫だよ、多分すぐに学校側が対応する。もう撃っても意味ない。それにアレは引きの一手だ」
旭がそう言うってことはそうなんだろう。
「コイツらどうする?」
状況証拠、十分か?
警察に引き渡すのも面倒くさいな。
「う〜ん、別に何でも良いと思うけどな。理事長に渡す?どうせ全員潰すし」
あ、やっぱね。
別に俺たちは悪を絶対許さない。
悪い奴らみんな捕まえてやる、みたいな心意気を持ってる訳ではない。
が、これだけ近くで起こるとなぁ。
妹も心配だし、看過出来なくなった。
「アジトは分かってるのか?」
「運転手を逃した、車とそいつの服に発信機をつけといた」
止まった場所まで追いかければ良いのか。
取り敢えず、コイツは学校側に引き渡しということで。
俺は男たちを縛り体育館に放り投げた。
「じゃあ、帰りますか」
「そうだね」
◇◇◆◆
「あれ、湊さんだったりする?」
「うん、お兄ちゃんだろうね」
体育館起きた騒動の後。
心音を見つけ声を掛けた。
にしても、アレ湊さんか。
後ろ姿とか似てた気がして言って見たけど当たってた。
本当に強いんだ、湊さん。
「おい、アレ見ろよ」
1人の男子生徒が声を上げる。
その子が指さした方を見ると床が少し凹み焦げていた。
アレ、湊さん踏み切ったとこか、凄すぎるでしょ。
普通凹む?
「あはは、やり過ぎでしょ。銃弾が飛んできてたっぽいししょうがないんだけど」
苦笑い気味の心音。
確かにアレは凄いな。
「あの、黒服の人に近寄られてる人が涼宮さん、銃弾が飛んできた人だよね」
「そうだね、SPがいるの凄いなぁ」
心音も湊さんが実質SPみたいになってるけど…。
「怖いなぁ、物騒だ」
銃弾が飛んできた後の出来事が凄すぎて忘れてたけど普通日本で銃弾が飛んでくることはない。
明らかに非日常が混じって来た。
どこの誰がしたのかも分からない、困ったなぁ。
いや、湊さんは知ってるのか?
もしもの時はちゃんと心音を守らないと。
◆◆◆◆
家に帰り、ソファに寝転がり考える。
ボディガードねぇ。
大丈夫だ、今日の問題は直ぐに終わる。
ただ、少し引っかかった。
ただそれが何か分からない。
ボディガードか金は出るんだろうけど妹のことが心配だな。
天野凪…。
妹の彼氏。
頼り甲斐はないが真摯な奴だ。
心の強い奴だ。
「任せられるようになって貰わなきゃな」
◇◇◇◇
「はぁはぁ」
あの男子高校生はヤバい。
何なんだ。
取り敢えず上に報告を車で速攻アジトに向かう。
先ずは上司だ。
ドアを開け中に入る。
「あ、来たか。実行班はどこだ?」
「…分かりません」
俯きながら話す。
置いて来てしまった、でも車はもう一つある。
「そうか、多分やられたな」
思った以上にあっさり引き下がる上司。
「報告はない感じですか?」
「そうだ、連絡が途切れてる。ん?お前服についてるそれ」
指で刺された場所を見ると何かの機器が取り付けられていた。
手に取って確認する。
「発信機だな」
「!」
ミスだ。
アジトの場所がバレた。
一体誰に?
あの男子高校生か?だとしたらどのタイミングだ。
「すいません」
「別に良いさ」
そう言って発信機を潰す上司。
「お前車の方も確認してこい」
「ウィース」
近くに立っていた、確か新人が返事する。
「むしろ好都合かもな。迎えうつ。発信機は壊したまだきっとサツには提出できてねぇ。高校生の証言じゃすぐには動けないだろ。それに単身で突っ込んでくるタイプの奴らだ、人員を呼んで、いや、念のため本部でか?」
そう言うと外に出て行く上司。
少しすると俺を呼んできた。
「おい、本部に行くぞ」
「分かりました」
車を走らせ本部へ向かう。
ボスのところ。
自然と冷や汗が流れてくる。
どうなるもんか。
ちょっとして上司が口を開く。
「思い出した、多分アレは超人の旭と先見の湊…。高校生二人組だ」
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そろそろ恋愛させたい、てかどうやって恋愛させようと思ってたか忘れちまった