帰り道を尾行←これだけ見たらただのヤバいやつ
うーむ、まだ慣れん。
「おはようございます」
教室に入ると同時に誰にも聞こえないような声でやる気なさげに呟く。
あの場ではあれ以上追及することもないので話を続けなかったが正直頭の中は妹の彼氏のことで一杯だ。
一体何処のどいつなんだ!体の奥底から憎しみが溢れてきた。
「よう!湊、どしたんや机の角に思いっきり足ぶつけたときみたいな顔して」
いきなり声をかけてきたのは幼稚園の頃からの幼馴染、菅原 旭だ。
いっつもニコニコ笑ってて何考えてるか分からないが容姿は整ってるのでそれなりに女子に人気だ。胡散臭さと例えの意味わからなさが今まで会って来た人で断トツだ。
「何だよ、机の角に思いっきり足ぶつけたときみたいな顔って」
「なんか、苦痛と憎みを察知した」
ったくこれだから油断ならない。過去、こいつに何かを隠し通せたことがあるだろうか。
そんなに顔に出やすいのだろうか。
「別に、妹に彼女が出来ただけだよ」
「……へ?」
初めて聞くようなポカンとした顔と気の抜けた声だ。内容がもっとどうでもいいことなら今すぐ写真を撮ってSNSにアップしてやるのに。
「だ〜か〜ら!妹に彼女が出来たの!」
ことがことなだけに俺は苛立ちを隠さずもう一度言った。
「ま、マジで?」
笑顔が引きつってるぜ色男さんとでも言ってやりたいとこらだが、何をそんなに焦ってるのだろう。
はっ!まさか、こいつ妹のことが?あまり接点は無いはずだが。
いやでも、俺の妹はスーパーウルトラビューティフル美少女だ、一目惚れの線もあり得る。
少し探るか。
「ああ、まぁ、俺の妹はスーパーウルトラワンダフルビューティ美少女だからな」
「え?あ、まぁ、な?…こいつ妹のことになった途端IQ下がりやがる、、ビューティ美少女って美美少女?」
ん?途中から小さすぎて聞こえなかったが肯定したやはりそういうことか、、。
「いや、お前と俺の妹はそもそも釣り合わん諦めろ」
「いやいや、そうじゃ無いでしょ。何?俺が狙ってると思ってたの?俺はむしろお前が、いや…彼氏大丈夫?」
「何故そこで彼氏の心配が出てきた?」
「だって、湊。締める、とか普通に言いそうやし」
そんな野蛮に思われてるのは心外だ。
でも、実際言っただけに反論出来ない。
「流石に何もしてないのに殺しはしないさ」
「手繋いだら?」
「殴る」
「キスしたら」
「締める」
「即答できるのが怖えよ」
まだ、公認もしてないのだ、早すぎる。
「はぁ。まぁ、今に始まったことちゃうか。そんで、相手はどんな人なの?」
「…………」
正直何も聞けなかった。
「…。え?まさか何も聞いてないん?」
「…良い人だそうだ」
「それだけ?」
「……すぐに深く聞いたら嫌われるかなって」
「お前が未だにそんなことを考えていたのが信じらんねぇ」
俺だって嫌われるか考えることはある。
それに、彼氏の話に耐えられる自信が無かった。
「前から、好きな人が出来たみたいなことは聞いとらんかったん?」
「聞いてない。前兆無しだ」
そうなんだ、前兆が無かった。あまり、仲良い男の子の話は聞かなかったので、てっきりあまり関わりが無いもんだと。
脅されてるなら俺を頼るだろうし、てか、分かる。そんな感じは無かった。あるいは、騙されてるのか…。
「そりゃそうか、言ったら次の日死体で発見されそうだしな」
「…俺は妹が悲しむことはしない」
少し、だけイラついた。
「冗句だよ冗句。まぁ、もうすぐ卒業だし、この機にって感じで告られてOKしたのかもな」
そうか、それはあり得るかも知れない。
「何だったとしても調べる必要性がある」
「なるほど」
「今日は、迎えに来てこなくて良いと言われた。恐らく一緒に帰るつもりだ。放課後、尾ける」
「へ〜、面白そうやん、俺も行くは」
「分かった遅れたら置いてくからな」
「オッケー」
そういうと旭は去っていった。
今日はなかなかに取り乱したアイツがみれたな珍しい。
今はそんなことより帰りの尾行のことだ。
「お待たせ」
「遅い、行くぞ」
一刻を争うのだ。
「何を、そんなに急いでるんよ。そうそう無いやろ騙されるとか」
「手ぇ繋いでたらどうすんだよぉぉぉぉお!」
「…あ、はい」
まだ早い。止めなければ俺は妹の学校まで走っていった。
学校の近くまで来て様子を伺う。
すると玄関で立ち止まってる妹の姿が見えた。
「居た。玄関で待ってるってことは中学生か。同学年の可能性が高いかな?」
「あぁ、そうだな。妹を待たせてる。減点50っと」
「採点してるの?」
「一応な」
「あ、来た」
「急いで来たか、加点1っと」
「減点に対して加点少なすぎじゃね?てか元々何なの?」
「妹の彼氏って時点で減点だから−100スタートだ」
「あ、彼氏としてじゃなくて人としてなんね」
「ああ、そうだぞ」
分かっていると思っていた。
「…そんな当然のような顔されても」
にしても
「ここからだと上手く顔が見えないな」
「う〜ん、そやねぇ。バレたらあかんのやったらあんま前にも回れんしな」
くっ、確認をしておきたいが仕方ない。
バレて仕舞えば普段見られてない時の行動が分からない。
二人が校門から出てくる。
並んで楽しそうに話してやがる。
「普通に楽しそうやな〜」
「そうだな」
「別に良いんか?」
「まぁ、妹が楽しい分には良いんだ。流石に手を繋ぐのは早いがな」
「wそういうもんなのね」
決して、妹の幸せを願って無いわけじゃないんだ。
ただ、もし彼氏がやばい奴だった場合だな、、、。
「でも、ヒョロっとしててどっちかって言うと妹さんの方がグイグイって感じ?」
「うーむ、ああいう奴に限ってってこともあるからな…」
「…いや、考えすぎや思うけどな」
だと、良いのだが。
楽しそうに話して帰ってるな。
それにちゃんと車道側に立ってるのはデカい加点5しとこう。
「良い雰囲気だな、付き合いたてなんやろ?にしてはあんまりギクシャクしとらんし」
「そうだな、まぁ、でも近すぎない距離保ってるし。ずっと前からってことはないんじゃ無いか?」
少しだけ二人の間にまだ壁がある気がした。…普通の人よりは近いがな。
「なぁ、どんな奴だったら許すんや?」
いきなり振り返って聞いてくる。やっぱりこいつ妹のこと…。いや、この目はちゃんと認めるのか?って目だな。
「うーむ、別にスペックは良いんだが。ちゃんと妹のことを好きで妹のことを考えてくれる奴かな」
俺がそう言うと旭は意外そうな気がした。
「なんや、ちゃんとしてるやん」
まるでちゃんとして無いと思ってたみたいだな。なんか癪だ。
「あとは、妹のために紐なしバンジー出来れば認めてやるよ」
「いや、それ下手したら死ぬ奴やないかい!」
やっぱ無茶苦茶やったわ〜なんて旭が呟いてるのを尻目に俺は観察を続けた。
あの身の動かし方は喧嘩とかどっかの武芸を嗜んでる人の出はないな。
足取りはしっかりしてるから寝不足とかでもないだろう。真人間してそうだ。
顔は、上の下位か?少し可愛げのある感じだな。
「う〜ん、これは直接見ないと分からなそうだな。今のところ普通そうだが」
「そうやな〜」
連れて来てもらい試すしかないようだな。
「少し考えてることがある手伝ってくれ」
「オッケー、面白そうな予感がするわw」
そう言って旭はニヤリと笑った。
もう一度二人に目をやるとどうやら道が別れるところだったらしく、さよならしていた。
「特に問題はなかったな」
「うん、そやな」
少し安心してため息を吐いた。
「wなんかあれやな、マジでお前シスコンよな」
まぁ、否定は出来ないが、馬鹿にされてるようでムカつく。
「別に良いだろ、家族なんだ、心配さ」
「…そっか。それもそやな。どうする帰るか?」
「ああ、そうだな。お前は帰ってくれ俺はアイツがちゃんと帰れるか見守る」
「…あ、そうやな。別に子供とちゃうんやから大丈夫やろうけどな。分かった、ほなさいならな」
「さよなら」
軽く別れを告げて俺は妹が帰るのを見守った。
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