新学期です。
「おい、起きろ~」
ベッドで布団にしがみつき無防備な姿をさらしている心音から布団を奪い取る。
未だに兄に起こされてる心音...。
いい加減直させるか。
「う~。もうちょっと~」
布団を返してと、ベッドから絶対に立ち上がらずにもがく心音。
「凪君くるんじゃないのか?」
「ハッ!」
ガバっと起き上がる心音。
「そうだった!ちょ、い、急いで!」
慌てて準備を始める心音。
「はぁ、生活力付けさせなきゃな」
今日は始業式、心音は新一年なので凪君と普通に遊ぶらしい。
普通って何だよ、と思いもするがあの感じだとふしだらなことはしないだろう。
まだ、キスもしてないみたいだし。
よく遊んでるし雰囲気は悪くないのだろう。流石にこんな直ぐに険悪ということは無いだろうが。
朝ごはんを食べ、学校へ行く準備をする。
「行ってきます」
「いってらっしゃーい」
心音の明るい声、朝からよく元気だ。
「んで、何でお前がいるの?」
「いや~、ボディーガード?」
「それ、世界一俺にはいらないのお前知ってるだろ」
「あはは、たまには幼馴染と一緒に登校しようってだけじゃん」
朝から胡散臭い笑顔えを浮かべてる旭。
「嫌なんだが」
「酷くね?」
俺は構わず先を行く。
それに付いてくる旭。
「クラスどうなるやろなー」
「お前と一緒じゃないことを願うわ」
「そこは安心して教師脅して一緒にしてもらえるようにしたから」
「は?」
何してやがんだコイツ。
いや、考えてみたら同じクラスじゃなかったこと3年からなかったからその頃からか。
道理で同じクラスになることが多いと思った。
特に話すこともないので無言で学校まで行く。
高校に近いとこに住んでるので徒歩登校だ。
何かあったとき自転車より走る方が早いので自転車には乗らない。
下駄箱まで行くと人だかりがいくつかできている。
喜んでいる人や落ち込んでる人、それを励ましてる人など様々だ。
きっと、クラスのメンバーのことを話しているんだろう。
俺には仲いいやつが旭しかいないから関係ないな。
「さて、うんうん。ちゃんと同じクラスだな。これで教師を締めないですむ」
そもそも、締めんなよ。
えっと、2組か。
俺は旭を無視して上履きに履き替え二組を目指す。
「お~い、旭!お前何組だった?」
丁度いいところに旭の友達が来た。
さっさと教室に向かう。
教室にはすでに何人か居て仲いい人で集まってたりするようだ。
「おはようございます」
教室に入ると同時に言う。
相手に聞こえるかは置いといて挨拶はちゃんとしている。
別に特に理由はないが何となくのルールだ。
勿論返事は来ない。
俺は自分の席を探し座った。
急にざわつきだす、教室。
特に女子はこっちをチラ見しながらひそひそ話していた。
チラ見しても意味ないから。バレてるっつーの。
もしかして、女子の席に座ったのかと確認してみたがそんなこともない。
「おっはようー」
明るいが胡散臭い声が聞こえてきた。
「おはよう」
教室の中の何人があいさつを返す。
「あ、居た。先行くなや。湊」
初手無視。
「いやー、みんな見てるね。高校デビュー?いや二年になってからだから新学年デビューか」
「うるせぇな。心音が心配してるんだとよ」
「あぁw自分の所為でお前が我慢してるんじゃないかって?」
「そゆこと」
別に俺はどっちでもいいけどな。
「いや~、でも制服の状態で顔さらしてるの新鮮だわ」
感慨深げに頷く旭。
相変わらず大げさだ。
「あー!デパートでナンパから助けてくれた人じゃん!」
騒がしゴホン。明るい大きな声の主が聞こえてきた。
えっとー、あー。彼氏君試験のときの子か。
教室に入ると同時に近づいてくる。
「ありがとね、あんときは」
「人違いです」
初手否定。
「いや、人違いじゃないっしょ。髪切ったっぽいけど分かるよ」
「じゃあ、多分あってるわ。どういたしまして」
多分今頃凪君が家に来てるかな?
心音ちゃんとカギ閉めてくれるかな。
「え?二人は知り合い?いつの間に湊知り合ったん」
いきなり乱入してきた女子と俺の関係性がいまいち掴めてない旭。
「お前が通り魔した日。二人が買い物してるときだ」
「あぁ、あの日か。へぇ~」
「通り魔?まぁ、いいや。それよりさ!お礼したいんよ。そう言ったのに名前も何も言わずどっか行くし」
あぁ、そういえばそんなことも言ってたような。
「菅原 旭だ」
「嘘つけ、それ俺の名前だろうが。何?詐欺でも疑ってんのだとしたら何故俺の名前をだした?」
もしかしたら、あとでぼこぼこにされたり変な金請求されるかも知れないからな。
「あはは、仲いいね二人共。菅原くんの名前は一応知ってるよ。あ、私は日高 朱莉よろしく!」
菅原はこの高校ではもう有名人だし、知ってて当然か。
相手も名乗ったし俺も名乗らないわけにはいかないか。
「佐野 湊だ。よろしく」
ギャルっぽいけど、先に名乗ったり距離感も分かってる気がする。
多分、友達多いんだろうな。
朝の憂鬱な気分を紛らわすように少しにこやかに返事をする。
「ッウ、イケメンってホントに一つ一つの動作が絵になるんだ…」
「ホントにそれなw」
「菅原くんも充分イケメンだと思うけど」
よく分からないことを話す二人。
というか、イケメンが絵になるって言うか絵が基本イケメンなんじゃないか?
「あ、私ちょっと呼ばれてるから。ごめん。あのときのお礼したいからまた話しかけるね」
そう言って窓際の方の女子の集まりの方へ行く。日高。
忙しそうだな。何であんなに学校生活に精力的になれるんだろう。
「精力的だな〜って気怠げ主人公気取ってるとこ悪いんだけど。君妹のことに関しては相当だよ?」
「普通だろ」
やめろ、感覚バグってるなー。みたいな顔で見るな。
殴りたくなる。
「でも、あれだな。ああいう向こうから距離を詰めてきて、そのあと一定の距離を取ってくれる明るい奴って良いんだろうな」
「え?」
今まで気にして無かったから分からなかったが色んな奴がいて色んな人間関係があるんだろうな。今まで、自分がどういう人間が好きなのか良くわからなかったが
「楽だな、こっち的には。ああいう奴のことは結構好きなのかも知れない」
「あ〜、確かにね。てか、もしかして俺のこともそんな風に思ってる?」
「いや、お前のことは好きじゃない」
「酷って反射で言いそうだったけど嫌いとは言わないんだね」
本当にうざいなこいつ。
鋭い。
「さぁな」
ッスー。春季講習