6章「飛翔」
コクピットは、一回だけ訓練で乗ったことのある景色と、全く同じだった。
一つ違うのは、上部に謎の赤いボタンがあることくらいか。
「聞こえますか?こちら本部よりエスク。エンジン始動して、一度飛んでみてください。大丈夫です。敵機はいませんし、ちょっとした遊覧飛行ですよ」
下にある無線から声が聞こえた。
慣れない手つきで、応答する。
「こちらイーグル。了解」
ええと・・・
「油圧よし、メーター故障なし、燃料よし・・・」
始動させる。
前のプロペラが回転し始めて・・・コクピットに揺れが伝わってくる。この感触はどうしても慣れなさそうだ・・・。
始動したと同時に、整備員達の声が響き始めた。
やかましいが、これくらい大声じゃないと聞こえないんだろうな。
聞いている間に、光が差し込み、一人の整備員がOKサインを出した。
行かなくては。
「こちらイーグル、ただいま出撃する!」
足踏み桿を下げる。
途端エンジン音が大きくなり、思い切り後ろに引っ張られる。
あっという間に加速し、メーターは九十ノットを示した。
滑走路がもう無くなる。このままでは凸凹の地面に触れ、大破する。
急げ。操縦桿を上げろ!全身全霊で!!
操縦桿を全身で上に引っ張った。
揺れが少なくなって・・・僕は鳥になった。