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我らソビエトに栄光あれ!  作者: 新山翔太
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34章「反乱、セロ・カシュラー編 3」

 あれからしばらく経っていた。僕達は連日会議室で、僕達七部隊メンバー、技術部で話し合っていた。

 カシュラーはあれから不気味な程静かで、襲っても来なかった。皆の予想では、ナチスすらも敵に回した彼は、今はナチスの方を攻撃しているのではないか……。という事だ。

 ……しかし、僕達は何となく気付いてしまっていた。基地長不在のこの状態では、僕達は勝てないのだ、と。

 だが何も出来なかった訳では無い。

「……あのホログラムの中には、レンサーエネルギーの塊のコアがあるんです。ホログラムと弾がぶつかると、化学反応を起こし、装甲を作り出す。それ自体はそんなに固いものじゃないんですけど……」

 難しい顔をしながら、技術部代表の若い男が話す。

「……けど?」

「……如何せん、それが無限に出てくる物だから……。一機じゃ太刀打ち出来ません」

「なら、複数で攻撃すれば……」

「……いや、二機程度では足りない。もっと沢山の戦闘機で攻撃しないと、装甲を作り出す速さには勝てないんです」

 僕達は、ようやくあのホログラムの秘密に迫れた訳だが……そこにあったのはどうしようもならない結論だった。

 技術部の男が話終わると、皆溜息をつき、椅子にもたれかかった。

 ……今の僕達には、機体も、パイロットもホログラムに太刀打ち出来る量が無かったのだ。

 その内皆諦め始めて、カップに入っていた珈琲を飲み始めた。

「……こんな時こそ、ソビエトもナチスも争わずに協力するべきなのに……」

 ぼそりと、同席していたリロサヤが言った。……そんな事が実現しない事は、戦ってきた僕達が一番よく知っていた。

「……無理だよ」

 僕はそうとだけ言って、不味い珈琲を口に入れた。


 会議が終わって、訓練をしてベッドに入ったが、どうも寝付けなかった。目を閉じると、頭に浮かぶのはあのカシュラーの勝ち誇った顔……。そして、休憩室でかけられた言葉。

「身を投げ出し、死ぬ運命が必ず軍人にはある。でも、その中でも、決して誇りを捨ててはいけないよ、兵長。死神に取り憑かれてもね」

 頭の中でその言葉がぐるぐると回り出す。……やはりそうだ。僕が縛られているのはソビエトでもナチスでもない。

 奴なのだ……。セロ・カシュラーに、僕は未だ縛られている。


 翌朝、あまり眠れなかった自分を叩き起して、僕は珍しく表に出て体操を始めた。

 ずっと、外に出ずにいたと思う。久しぶりの外の空気、風、太陽。全てが新鮮に感じられた。

 太陽を浴びると、何となくカシュラーの事も忘れられていて、気分が良かった。

 やがて、体操が終わって中に戻ろうとしたその時だった。

 僕の視界に映っていた太陽が、一瞬暗く見えた。何かと思えば、下からぱたりと音がする。

 ……地面に紙が落ちている。……どうやら降ってきた様だ。無意識に僕はそれを拾い上げ、内容を読む。

「ソビエト連邦軍所属ワークス基地の皆様方へ。こちらはナチス・ドイツ軍ボルケ基地。セロ・カシュラー率いる反乱団に、こちらも甚大な被害を受けています。そちらの状況も、あまり良くは無いと思われます。このままではどちらも反乱団に壊滅させられてしまうでしょう。……ならば、これからソビエト連邦軍と、ナチス・ドイツ軍は一時休戦し、ワークス基地とボルケ基地で一時的に同盟を結び、共に反乱団を排除しませんか」

 ……どうやら、ナチスからのビラの様だ。……確かに、空から戦闘機の音がしている。

 読み終え、どう報告しようかと思って前を向いた時、そこには一人の男性が立っていた。

 ブロンドの髪に長身で……間違いなくナチスの兵士だ。

 彼は両手を挙げ、こう言った。

「貴方はワークス基地の兵士ですか? ……私はナチス・ドイツ陸軍所属、アンドレアス・ベルガー一等兵です。……武器は持っていません。どうか中に入れてください……」

 そう、たどたどしい英語だが、確かに意志のある目で、彼は僕を見つめていた。

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