3章「ワークス基地」
ガタガタ揺れる乗り心地もへったくれもないトラックの荷台が、止まった。
移動中敵軍に見つからなかったのは幸運か。
「降りろ、サーライト兵長」
ああ、名前は知らないが、相手は中佐だ。礼儀を正しくしないと。
・・・・・・
サンボル基地は酷い有様だったが、このレンサー軍本基地の、ワークス基地はまだシュトゥルモヴィークも、T26も、きちんと整備され、いつでも使えるようになっていた。
だが、航空機は今まで戦地で見た物と違っていた。
何だろう。デザインは全く同じなのに、雰囲気が違う。そう、電子的な匂いがするのだ。
気を取られていたら、中佐に叱責された。
「兵長、レンサー軍は初めてだろう?しかもいきなり指揮官ときた。そんなに余裕でいいのか?」
「申し訳ありません。ただ・・・何故私が呼ばれたのか疑問でして」
「ああ、それは私もそう思う。・・・これは噂なんだが、レンサー軍は、落ちこぼれ共を集めて、新技術の実験台にさせているという噂だ。勿論、軍曹を落ちこぼれと思いたくないが・・・」
・・・・・・中佐。僕は十分落ちこぼれです。
・・・・・・
「どうか、二の舞にならないでくれ・・・」
中佐は一人言った。
シュトゥルモヴィーク=ソ連の航空機の呼称。ここではil2の事を指す。
T26=ソ連の戦車。第二次世界大戦前から使用された。