20章「飛翔に対するカシュラーの考察」
昼食の時間が終わり、皆が警備体制に入る。
雰囲気が変化し、夢から覚めたようだ。
廊下は誰もおらず、静まり返っている。
戦闘機の点検を受けに、第三戦闘機庫に向かっている所、奴がやって来た。
カシュラーだ。
「やあ。サーライト兵長」
奴と関わるな。さもなくば、まだ何かが起こる。奴は何か、名状し難い嫌悪感のある空気がある。
無視して通り過ぎようとした時。
「待て」
凄まじい勢いで、手首を掴まれた。
爪を手首に食い込まれる。
「少し話をしようじゃないか」
少し口角を上げ、カシュラーはそう言った。
・・・・・・
煙草の臭いがする。カシュラーはポケットから煙草を出して火をつけた。
生憎だが、僕は煙草なんか吸えない。
「・・・見たんだな。不死鳥の飛翔の姿を」
「はい。それが何か」
傷を塩で塗られたような気分だ。皆が何故悲しんでいるのか知らないのだ。
「私は不死鳥の飛翔に興味がある。貴官は、何故機体が宇宙に飛び立てたと思う?機体にぶつかりながらも」
「・・・さあ」
「レンサーエネルギーの暴走、それが偶然上手くいったのだよ。だが、これは貴重なデータだ。このデータを使えば、宇宙での戦闘も可能になる」
そう目を輝かせて話す。奴は戦争の事しか考えていない。周りの事は気にせず、ただ自分の私欲の為に生きているのだ。
少し落ち着き煙草を一吸いした。
「・・・君は私の事をどう思うだろうか。君は恐らく私の事を嫌っているだろう。・・・一人の軍人として言わせてもらおう。お節介かもしれないが。
身を投げ出し、死ぬ運命が必ず軍人にはある。でも、その中でも、決して誇りを捨ててはいけないよ、兵長。死神に取り憑かれてもね」
そう言い、カシュラーは出ていった。最後の言葉が、やけに胸に残り続けた。




