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9話 仇敵

 第一回ボス攻略会議の事だった。

 ここに、EAO初のPKギルドが樹立した。


 知ってか知らずか攻略会議は終わりを迎えようとしている。


『みんなパーティは組んだか? ボスにアタックを仕掛ける部隊と周囲の雑魚敵を狩る部隊に分けるから、パーティの代表者は俺に人数と役割を報告してくれ』


 攻略会議の進行役がそう言った。

 そう言えば、どういった経緯で進行役は決まったんだろう。ボス部屋を最初に見つけた人物?

 そう考えると、あの進行役はかなり手ごわいのかもしれない。


「そういうわけだから、申請してくるね。僕が代表者で問題ないだろう?」

「ええ。構わないわ」


 手続きとかなれ合いとか煩わしいし。

 そう言った部分はむしろ全力で押し付けたい。


 ひらひらと手を振り、壇上に向かうロキ。

 私から見えるのは背中だけ。表情は見えない。

 見えないけれど、予測は付いた。

 ほくそえんでいるに違いない。


(ま、せいぜい利用するがいいわ。私もあなたを利用させてもらうから)


 それからしばらくして、部隊分けは終了。

 攻略は明日の正午ということになった。


『それじゃあ、解散だ。各自、回復アイテムの補充を忘れないでくれよ!』


 壇上の進行役がそういい、会議はお開きとなった。


「あら?」

「どうかしたかい? ノルン」

「……やっぱり、気安く名前を呼ばないでくれる?」

「それはダウンロードコンテンツだなぁ」

「お前の脳裡に恐怖を刻み込んで(DLして)やろうか」


 ロキは「おお、こわい」とおどけてみせた。

 どうにも調子が狂う。

 やっぱり殺してしまおうか。

 いや、今はまだその時ではないか。

 こいつにはまだ利用価値があるのだから。


「……作戦会議は練らなくていいのかしら?」


 殺意を飲み込んで、問いかける。

 私は獣じゃないから冷静な判断も下せるのだ。


「ああ、そういうこと。このボスはβ版で攻略されているからね。攻撃パターンは割れているから作戦会議なんて必要ないのさ。ちなみにこれがボス詳細資料」

「……ふぅん?」


 へぇ。いい事を聞いたな。


「随分と楽しそうだね」

「エモートは使ってないけれど?」

「筋肉に乏しい表情ですら感情で動くんだ。まして身体から心情を推し量れないわけがないだろう?」

「キモい……まぁ、楽しみが出来たことを否定はしないわ。それより、明日の予定を立てましょうか」


 アビリティ【斂葬術式】の別スキルが活きそうだ。

 ああ、何人殺せるかな。

 どんな反応をしてくれるかな。

 たのしみで、楽しみで、愉しみで仕方ない。


「そうだね。まず、方針を決めようか」

「方針?」

「そう、大暴れするのか暗々裏に遂行するのかの二択と言えば分かりやすいかい?」

「あー」


 要するに刹那的に行動するか長期的に暗躍するかということだ。前者は後者より大きな爪痕を残せるだろうが、二度同じ手は使えないだろう。加えて私という存在を明確に警戒されることになる。

 後者であれば、殺せる人間に制約がかかるだろう。それは人数であったり、位置取り的な問題だったりである。こちらも前者同様バレる危険性はあるが、バレない限り何度でもできるというメリットがある。


「中間策で行きましょうか。問題が起きた隙に乗じて最大多数の攻略組をキルする」

「おいおい、問題がそう簡単に起こるとでも?」

「起こるわね、確実に」


 最低でも一つは起きる。

 私が起こすからそれは確実だ。


「君がそう言うならそうしておこうか。しくじらないでくれよ?」

「私、失敗しないので。それより、殺すプレイヤーをリストアップするわよ」


 攻略資料に記されたボス部屋を参考に、プレイヤーの配置される場所を確認する。ボス部屋は円形で、ボスは中心から大きく離れる事は無いらしい。


 また、雑魚モンスターが外周から湧き出ると書いてある。ボスに専念している間に包囲殲滅陣を敷かれないように、雑魚キャラを倒す部隊が配置されている。


 私とロキは雑魚キャラと戦うチームに分けられた。

 というか、二人のパーティはどこも雑魚狩り。


「ちなみに、有力なプレイヤーはどいつなの?」

「そうだね……まず、トップパーティの確認から行こうか。«エレウテリア»、«不撓不屈»、«おかあさんといっしょ»の三強だね」

「待って«おかあさんといっしょ»って何」

「トップパーティだけど?」


 マジか、マジで言ってるのか。

 デスゲームでよくそんなふざけた名前つけれたな。

 人間の感性は分からない……。


「……いいわ。«エレウテリア»、«不撓不屈»、«おかあさんといっしょ»ね。それで、トッププレイヤーは?」

「«エレウテリア»からは剣士のマルス、術師のネルヴァ。«不撓不屈»のタンク黒岩戸(くろいわと)。«おかあさんといっしょ»からは鎖鎌使いのヒロミチさんだね」


 ロキはご丁寧にスクショを添えて教えてくれた。

 ただ、提示された写真はどれも見覚えのあるものだった。

 どこで見たのか。そんなの、分かり切っている。


 ――私を殺した奴らだ。


「ただ、今挙げた有力プレイヤーをキルするのは難しいかな」

「どうして?」

「配置、確認してみなよ」

「全員ボス攻略チームね」


 私たちは雑魚敵の相手で部屋の外周。

 有力プレイヤー達は部屋の中央。


「それで? 何か問題でも?」

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