25話 アルテミラ 前編
「空趨鷲の気弾が来るぞ! 全力で弓部隊と術部隊を、守るんだぁぁぁぁぁ!」
ボス攻略が始まった。
なんか守れなかった奴のセリフが聞こえた気がするが大丈夫だ、問題ない。
無数に飛び交う空趨鷲の空気砲。
剣士がパリィして、重装が盾となり行く手を阻む。
今は私も周りに合わせて踊ってみせる。
「【風花雪月・三ノ型】«赤雪の舞»」
掌底。回し蹴り。サマーソルト。
ステータス差にものを言わせ、攻撃を片っ端から無効化していく。
――狙うは空趨鷲が地に墜ちた時だ。
――剣士と重装が前線に向かったタイミング。
――そこを狙って後衛を殲滅する。
ボス攻略会議後に、私たちは攻略組攻略会議を開催した。そこで告げられた作戦は、意識が切り替わるタイミングを狙うというものだった。
(狙うは一瞬その刹那、攻めに転ずる弾指の間)
それまで踊る、私は踊る。
盤上を自由に駆け巡り、盤面を荒らす道化を演ず。
「っ、みんな気をつけろ! フェザーカッターだ!」
フェザーカッター……翼から羽根を飛ばす攻撃か。
剣士や重装で防ぎきるのは難しいかも?
「アルテミラ! 行けるか!?」
「問題無い」
声のする方に視線を向ける。
そこには一人の弓兵が矢をつがえていた。
その先は空趨鷲に向けられている。
「«パラレルショット»」
アルテミラと呼ばれた弓兵が呟いた。
次の瞬間、矢が弓から解放されて空を切る。
その矢はエフェクトを発し、無数に分裂した。
(ああ、こいつが【襲撃イベント】を邪魔した奴か)
空趨鷲のフェザーカッターの数は3桁近くあった。しかしアルテミラの放った無数に分裂した一矢は、全ての羽根を撃ち落とした。正確無比な精密射撃。プレイヤー名アルテミラ。
忘れもしない、私の邪魔をしたあんたのことを。
「アルテミラ、追撃が来る! もう一回頼めるか?」
「必要無い」
「は? 何を言って」
「翼はもう奪った」
次の瞬間、空趨鷲がよろめいた。
何が起きたのかはすぐに分かった。
錐揉み回転して落下する空の王。
その右翼に無数の矢が刺さっている。
「い、いつの間に」
「フィールドに入った瞬間、打ち上げた」
……?
は? 戦闘開始時に放った矢が、今突き刺さったっていうの? 何それ、未来予知?
演算能力とかのレベルじゃないじゃん。
「お、お前ら行くぞ! ここからは俺達のステージだァ!!」
「うおぉぉぉぉ!」
おっと、危ない。
呆気にとられるところだった。
空趨鷲が地に墜ちた。
私も行動せねばなるまい。
「【斂葬術式・一ノ型】――」
空は花吹雪が舞い踊り、地には月光が満ち足りる。
時間という絶対の理を失った世界。
顕現せよ。
「――«花天月地»ッ!!」
瞬間、世界は私を見失った。
私はこの世界の審判者。
時間という法でさえ私を裁くことはできない。
私こそが唯一絶対の法則。
そのはずだった。
「«パラレルショット»」
「……っ」
次の瞬間、無数の矢が私の肌を裂いた。
テクスチャの隙間から紅のエフェクトが飛散する。
「……アルテミラ、あんた、どうしてこの世界で」
「同文」
私の行く手を遮ったのはアルテミラだった。
«花天月地»は私の領域。
どうしてお前が動けている。
「……あんたも時間操作系の能力者か」
「把握」
思えば«花天月地»も作られたシステムだ。
同系スキルホルダーがいてもおかしくない。
「決めたわ、あんたは最優先で殺す」
「警告。次は心臓を射抜く」
上等、射貫けるものならね。




