13話 «双頭鴉»
「【襲撃イベント】?」
聞いたことが無いイベントだ。
だが、ロキ曰く、これさえ起こせば町中でのPKが可能になるという。
生産職を殺すためにもぜひとも起こしたいものだ。
「そう。大量のモンスターが街を襲撃するんだ。イベント中の街はセーフティエリアから外れ、【プレイヤーキラー】でも侵入できるようになる」
「丁度いいじゃない。じゃ、行ってくるわ」
そんなおあつらえ向きのイベントがあるとは。
思い立ったが吉日。レッツ襲撃。
「ちょ、ちょっと待って! このイベント、一つだけ問題点があるんだ!」
「は? そういうのは先に言いなさいよ」
「言わなくても分かるだろう? トリガーが分かっていないんだ。モンスターの大量発生なんてβ版含めて観測されていないし、行ったって無駄足に終わるのが関の山さ」
「ああ、なんだ。そんなこと」
どうにでもなるのよね、そんなの。
*
というわけで、戻ってきました最初の街に。
えー、こちら訪問ハローワーク。
おらおら働けニートども。
……まじめにやろっか。
「【風花雪月・一ノ型】――」
それは召喚系スキル。
召喚の手動再現ってなんだよって思うかもしれないが断っておきたい。アビリティ【風花雪月】のレベルは既に4。システムのアシスト有りで発動できる。
「――«双頭鴉»」
次の瞬間、MPがごっそり抜け落ちた。
同時に私の影が盛り上がる。
ごぼごぼと膨らんだ後、黒い鳥が羽ばたいた。
無数の群れをなして。
空が、闇色に包まれる。
……盛った。
実際は178羽しかいない。
だって私のMP4480しかないんだもん、なぜか。
ちなみに«双頭鴉»の効果はこう。
――――――――――――――――――――――――
【風花雪月・一ノ型】«双頭鴉»
――――――――――――――――――――――――
モンスター名『阿吽カラス』を召喚する
ステータスは使用者の50分の1になる
1ペアにつきMPを50消費
――――――――――――――――――――――――
阿吽カラスは二体で行動するモンスター。
フィールドからはポップされず、«双頭鴉»の効果によってのみ召喚できる。
(ステータスは貧弱でも、モンスターはモンスター。こいつらに襲撃させるでも問題無いはず)
厳かに、天に手を向ける。
178のカラスが取り囲むように舞い踊る。
「ここにあまねく黒翼よ!」
さあ、初仕事だ。
「喰らい尽くせ! 打ちのめせ! 生きとし生ける者どもを!」