五、恵 午後二時。その1
五、恵 午後二時。その1
恵は海岸に居た。とある会社に入社し、営業として街を歩き回っていた。今日は外回りとして海沿いにある会社を訪れていた。午前中に一社周り終え、昼食にパスタ屋でランチを食べた恵は、次に行く予定していた会社に向う為に、海沿いの道を歩いていた。恵は手首の内側にあった時計を見た。そこには時間が午後二時を示している。
「二時か。約束の時間まで三十分か」
そう言葉を呟く恵の前で岸壁で軽い飛沫が飛ぶ。過去にこの道を通ったことがあったが、飛沫が上がるほど荒い海ではなかった。しかも、今日に関しては天気も快晴だった。
「地震でも起きた?」
波はだんだんと激しくなり、飛沫がさらに高くなる。そして、波は恵の足元を濡らすくらいにまで達し始めた。
「きゃあ、何もう」
徐々に押し寄せる波。恵の足元に一回、二回。そして、三回と押し寄せる波も回数が増える。
その状況に恵だけでなく、周囲の人間もこの異常に気づき徐々に騒ぎ始める。その間にも段々と波は荒々しくなる。遂には柵を越える高さの波が来た。
「キャアッ!」
恵は激しい高波に襲われる。多くの水量が恵の身体全身を包んでいく。それだけの水量に教われれば呼吸もすることもできない。
この状況は、恵のみでなく周囲に居た人間たちも次々と高波に襲われていく。
数秒後には波は引潮となり、海岸の水量も減っていく。恵は身体が柵に引っ掛かり、海中まで引き込まれずにすんだ。
「ケホッ。ケホッ」
大量の海水を飲み呼吸もやっとできる状態となり、呼吸をするよう身体が求めていた。全身も海水でずぶ濡れとなってしまい、衣服も非常に重い状態となっていた。
なんとか呼吸を整え終えた恵は、足首まで水量まで浸っている中でなんとか立ち上がった。
「なにあれ!」
周りでも恵と同じように助かった人たちが、また何かで騒ぎ始めだした。恵もその状況に気づき周囲の人々の視線を追い、その先に何があるか確認した。そこには、あの巨人兵が海に居た。下半身は海面に浸っており、上半身のみが視認できる状態である。
「本当に何アレ」
恵も周りの疑問に同調し呟いた。そして、自分の中にある危機センサーが信号を発していた。