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二重
軀より先に心が、心より先に軀が
裂ける 千切れる 壊れる
本能でそう感じたら
真っ先に逃げることしか思い浮かばない
弱くて 脆くて 小さい
私
何から逃げるって言うんだろう
ここから?現実から?
それとも
貴方に会ってから生まれた自我が
私の中で捥がき暴れる
私じゃ無かった私が
まだ小さいけど生きていて
強い力で引き摺り込む
私じゃ無かった
何者でも無かった
あの頃に帰りたかった
貴方の隣に居る僕が
憎くて恨めしくて苦しそうで
消してやりたかった
そう気付いた途端
軀が浮いて魂だけになって
堕ちていった
浅い息が風の音
堕ちていく方から僕の声が聞こえた
僕が僕である為の叫びが
どんどん小さくなっていく落下の入り口を見た
人影があって
それが貴方で無いことを
最後の意識で私は
祈った