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怪物のいる街  作者: こうみ
青月
21/26

第二話

 ところ変わって、神道会本部の地下牢。じめじめとした湿気とわずかなかがり火、そして並ぶ黒ずんだ鉄格子がある。ここでもまた、真実を知る場面に直面した青年がいた。

 奥の大きな牢の鉄格子を挟んで、外に立つ東堂と秋、中に縛られた津雲川が対峙する。

「まったく無様な格好だな、我が弟子よ」

「ナナシは――俺の妹りんはどうした」

「あれなら死んだよ。日向鈴がトドメを刺したぞ」

「なんだと……? 芦木がりんを連れ出していたが、お前がそうさせるために命令したのか」

「どのみちもう人間には戻れんよ、あれは。鬼の力に幼い身体が悲鳴をあげていた。楽にさせたのだよ、とてもよい形でね」

「……そうか。……りんは逝ったか」

 ぎちりと歯ぎしりが響いた。津雲川は鋭い眼光で東堂を見上げた。

「わざわざそれを伝えにきたのか? 東堂師匠」

「おやおや、まだ師と呼んでくれるのかね、嬉しいよ。だが、その問いかけは間違いだ」

 東堂は秋を一瞥する。にやりと微笑んだ。ぞくりと、秋の全身から血の気が引く。

「これから言うことはとても重要なことだ。一言一句聞き逃さないほうがいい。だれかに伝えるのもよし、死に際まで黙っておくのもよし。きみの判断に任せるよ」

 津雲川に向き直ったのち、細い目を見開いた。

「さて、我が愛しき弟子よ。私の計画は見事に失敗した。怪物のいる街は消失し、青月はだれも殺さずに復讐を果たしたうえに、〝生きたい〟と望んでいる。私が在る限り本当の意味での〝生きたい〟とは一生言えぬがな」

「失敗した腹いせに俺を殺しにきましたか? どうぞ、捧げますよ」

「兄妹は同じ言葉しか言えんのか? あの幼子も兄をやるなら自分が身を捧げると言いよったわ。お望み通りしてやった結果はどうだ、鬼の力に蝕まれた挙句青月を殺しもしなかった。貴様も、妹を異形から人間に戻せとしつこいわりに、青月を殺さなかった。彼奴が死なねば私の思惑通りにならんのだよ! なぜ殺さなかった? 殺せなかった? 旧友ゆえか?」

「申し訳ないが、俺に旧友はいない。ひとりもな」

 東堂は首を傾げたけれど、わけを知る秋は胸を締めつけられた。

 津雲川の旧友は三人いる。しかし彼らは、ある日を境にそれぞれの道へ歩むとともに、友の関係を断った。どこかで会おうともう友ではないのだ。四人のうちひとりが欠けたその日、彼らは友だった頃の記憶をかたくかたく閉じたのだ。思い出すことはあっても、友であった日々に戻ることはないのだ。そう、秋は聞かされていた。

「ふん、まあいい。まだ私には手駒がある。あいつを殺せる機会はいくらでもある」

 東堂が背を向け、立ち去ろうとする。鉄格子の向こうから津雲川が呼び止めた。

「最後にひとつ訊こう。日向鈴をどうするつもりだ?」

「あー、あの小娘か。すっかり忘れていた。もう興味はないゆえ、なにもせんよ。小娘がなにもしなければの話だがな。――また来よう」

 会話が切れて、場を支配していた剣呑な空気がさっと消えた。

 やっとのことで胸を撫で下ろせた秋は、牢の奥に身を引いた津雲川をちらりと見、東堂を追った。距離をとり、じっと男を観察する。この男が口にした言葉を呼び起こし、整理する。私の計画、思惑、青月を殺さなければならない、幼子、津雲川の妹、怪物のいる街――。滅鬼師がいつからか狩り始めた異形という怪物の存在と東堂が関係しているのは確かだ。しかし、異形と青月の死と計画、思惑がどう繋がるのかは、秋のあたまではさっぱりであった。動機らしい動機は語られなかった。それでも、まだ東堂久々津が動こうとしているのをだれかに伝えねば。そして、事によって日向鈴が危険だ。やはり、日向鈴たちへこの話を――。

「さっきからじろじろと、私に何用かね?」

 はっと我に返る。東堂が前を向いたまま問うてきた。

「いえ、失礼しました」

 顔を合わせていないのに圧迫感がする。苦しみを堪えつつ、相手を警戒した。

「そう怖がらなくていい。私は私が興味を示した人間以外は手をかけないよ」

「信じろというのか?」

「私は、私の興味があるもの以外は視界に入れない。入れたくもない」

 安堵していいのかわからず佇んでいると、いつの間にか東堂はいなくなっていた。


     ×


 黄昏時。店にやってきた日向は、誰もいないことを入念に確かめる。物音ひとつなく、気配もなかった。抜き足差し足で青月の作業場へ向かう。明かりはつけず、綺麗に片づけられている奥へ進む。鎮座するガラスケースの前で深呼吸をしたのち、それを覆う幕を下ろした。

 ――言葉を失った。なかに在る彼女は少女の目を奪った。少女はあたまから足先まで見つめる。人間離れ――もとより人ではないが――した美しさを初めて目にした少女は瞬くことさえ忘れる。艶のある金色の長髪は、櫛ですいたばかりの如く整っている。長い睫毛の奥に輝く淡褐色の瞳は視線がやや下にあり、半開きだ。ちょうど少女の足元辺りを見ている。慈愛を感じる瞳の目元はどこか、少女に似ていた。顔立ちに幼さが残っているところもまた、親と子らしくそっくりだ。細身の身体を包む真紅と黒の着物が色白である彼女をいっそう際立たせた。膝に重ねて添えてある両手、色とりどりの花に埋もれる両足はどこか、人形離れした生々しさがある。触れればおそらく、温度を感じるかもしれなかった。

 ――会えた。少女は微笑む。嬉しさが胸いっぱいに広がり、じんわりと全身を巡る。人でなくなったことなんて関係ない。彼女が少女の母親であることに変わりないのだから。

 そうして少女はようやく、言った。言えた。

「お母さん……やっと、やっと会えた」

 母親を抱きしめるように、ガラスケースに身体を密着させる。

 一歩下がり、またじっくりと母親のすがたをした人形に見入った。純白の布が被さった台の一段目に彼女が座し、その上の二段目に鮮やかな装飾の刀が置かれていた。彼女が座す周りには、赤い薔薇、スターチス、デンドロビウム、トラノオ、ニオイアラセイトウ、ハハコグサ、彼岸花、ヒャクニチソウ、風鈴草、フレンチマリーゴールド、ムギワラギク、ワイルドストロベリー、勿忘草――と、多種多様の花々が咲く。造花だろう。

 再会の喜びに浸っていると、急に部屋の明かりが点いた。びくりと肩を上下させ、後ろを振り返った。

「日向? そこでなにを――っ!?」

 怒られる。そう思い日向は俯いた。

 驚いた青月は荷物を机に置き、つかつかと日向に歩み寄った。ガラスケースと日向を交互に見、手をあげ、彼女のあたまを優しく撫でた。

「え、ええ? おこ、らないんですか?」

「怒らないよ。いつか、くると思っていたから」

 顔をあげ、青月の表情を窺う。穏やかな色がそこにあった。今まで見たことのない色だ。

「だれから、すべてを聞いたんだい?」

「黒鋼さんです」

「へえ、あいつ教えたんだ。てっきり俺に言わせるかと思っていたのにね」

「あ、あの……」

 言いたい。目の前にいるのは父。そう言ったっておかしくない。けれど、喉に言葉が詰まってうまく言えなかった。代わりに口から出てきたのは、

「この花って造花なんですか?」

 心のなかでぽかぽかと自分のあたまを叩く。違う、そうじゃない!

 青月はやや首を傾げたあと、そうだよと返答する。

「枯れたら意味がないから、偽物にしたんだ。最初は本物だったんだけどね」

「そうだったんですか。あ、もしかして、花言葉が――」

 ふに。青月の人差し指が日向の唇に触れた。

「内緒。さあ、もう帰ったほうがいい。暗くなっちゃうよ」

 指さされて時計を見た。午後七時をとっくに過ぎていた。

「あっ! もうこんな時間!? すみません、私、帰ります。また」

 青月がひらひらと振る手を背に、日向は大急ぎで帰宅する。

 ただいま。お帰り、ごはん出来ているわよ。わあ、美味しそう。いただきます。

 食事時に間に合い、残さず頬張った。ごちそうさま。

 自室へ入るとともに、今日一日のことがあたまにたくさん浮かぶ。ベッドに寝転がり、ぬいぐるみを抱きしめて顔を埋めた。ふと、母のすがたを思い出す。

「お母さん、とってもきれいだった。だれかに自慢できそう、ふふ」

 続けて、青月の顔が浮かんだ。

「大丈夫、今は呼べないけど……いつか、呼べるようになる。なるったらなるもん」

 テーブルに置いてある目覚まし時計を見る。

「もうなにも起こらないよね。異形だって、鬼だって、もうこの街にはいないんだし」

 少女はそう願った。

 だが、日々はそう簡単に過ぎてはくれなかった。

 翌日、東堂の店を訪れようとした道中、声をかけられる。

「あれ?」

 振り向くけれど、だれもいない。気のせいだと思ったのも束の間、突然腕を引っ張られ、がくんと身体がバランスを崩す。されるがまま、細い路地に連れていかれてしまう。掴まれた手を払い、相手を確認する。

「申し訳ない、日向殿。ですが、急いでおります。無礼をお許しください」

「秋くん? って、その格好は――」

「あ、えっと、あの、似合っていません、よね」

 今の秋の恰好は、水色のパーカーに膝下までの黒のジーパン。変わりばえのない服装ではあるものの、もとが美少年なためかモデルさながらなのだ。細身に柔らかそうな身体が抱きしめたい衝動を誘う。

「か、かわいい……」

「八羽様が『出かけるのに狩衣? ダメよ、これになさい』と――ではなくて、あなたに話があるんです」

 秋の声音が真剣なものになり、またなにか起こると悟った日向は真摯な面持ちになる。

「東堂様が津雲川様に会いに来られました。会って話をしただけでしたが、その内容をあなたがたに伝えるべきと僕は判断し、一言一句あなたに告げます。どうかそれを、仲間の方たちにも」

「わかった。間違わず、全部伝える。だから、話して」

 秋は見聞きした事柄をすべて話した。日向は驚愕と怒りを混ぜた表情をする。

「まだ、なにか起こるのね。あなたの話を聞いていると、すべての黒幕が東堂さんみたいに聞こえる。青月さんを殺めようとしていて、津雲川さんにも手をかけようとしている。そこまでして一体、なにがしたいんだろ」

「わかりません。動機らしい動機は語っていませんでした。ただ、あなたが仰ったように、すべての黒幕はおそらく東堂様、いえ、東堂久々津でしょう。あの方が、この街をおかしくしてしまった。異形なんて居もしない怪物を生んだ。たったひとりの意思だけで」

「きっと、その意思を持たせる原因があったんだと思う。じゃなきゃ、ここまでしないはず」

「あなたの考えは正しいですよ。日向殿、伝えるべきことは伝えました。あとはあなたとあなたの仲間に任せます。どうか、お気を付けて。無理をなさらないでください」

「うん。秋くんもね。そうだ、今から私と一緒に」

「いえ、僕にはまだすべきことが残っているのです。ここで失礼します。――さよなら」

 震えていた。少年の最後の言葉が。これから身を挺してすべきことをするのだろう。

 日向はその背中を見送り、彼女は彼女の為すべきことを為しにいく。


     ×


 店に戻った日向の呼びかけで青月、霧生、暁華、黒鋼が集合する。彼女が秋から聞いた話をし終わると、各々それぞれの顔色を見せた。やはりと納得顔する者がひとり、真か偽か悩む者がひとり、信じられないと疑う者ふたり。日向はもちろん秋の話を信じている。そのためみなの反応に少しだけ驚いていた。

「信じて、くれないんですか」

「俺は信じるよ、日向」と、青月が言った。「でも、ほかのみんなは今聞いたばかりだ。悩んだり疑ったりするのは当然だろうね。なにしろ、ずっと師として傍にいた人が黒幕かもしれないなんて言われたんだからね」

「悪い、日向。俺はあたまが悪いからよ、本当かどうかわからねえ」

「本当か、どうか……ううん、秋くんは嘘なんて言ってない。だって、声が震えていた」

「本当だったとしても、私には信じられん。第一、なぜまだ青月を殺めようとする?」

「簡単なことじゃないか、俺がこうして今でも活きているからだよ」

「その動機がわからないと私は言いたいんだ。あの方はなにがしたいんだ」

「東堂師の思惑、計画……ナナシと津雲川を使って青月を殺めようとしたが失敗に終わった――そう言ったんだな? あの人は」

「はい。秋くんからはそう聞いています」

「ふうむ、どこでどう繋がるんだろうな、あのふたりと東堂師が」

「あ、それは俺も思ったぜ。どういう関係なんだ?」

 青月が人差し指を立て、みなの視線を集めた。

「こうは考えられないかい。ナナシことりんは津雲川の妹だった。その妹を異形化させたのが東堂だった。妹を人質にあの人は津雲川を動かしていた。どう? 辻褄が合うだろう」

「師匠があの子を異形化させただと?」暁華が目を見張った。

「そうさ。俺を殺すためだけに、幼い子の自由いのちを奪った」

「なるほどな、青月の考えは筋が通る。動機はともかく、今までの出来事を繋げるとしたらその考えが妥当だ」

「じゃあなにか、りんは人質、津雲川はりんを守ろうとして青月と戦っていたのか? 東堂さんは計画通りにするために、三人を利用していた……そんな人の傍に、俺たちはいたのかよ」

「津雲川とりんで俺を壊すのは失敗した。それで終わるわけないと思っていたけれど、まさか本当に動いてくるなんてね」

「なんだよ青月、やけに落ち着ているじゃねえか。命が危ないっていうのに」

「ヨウスケくんには悪いけど、今は危機感よりむしろ期待感のほうが勝っているんだ。あの人がどうやって俺を壊しにくるのか、わくわくしている。ま、ただでは壊されないよ」

「……変な奴」

「青月さん、それは……」

「ごめん、日向。気を悪くしたなら謝るよ。大丈夫、今の俺は前とは違うから」

「はい。――それで、これからどうしますか?」

 日向の問いかけに、みな口を閉じる。しばしの沈黙ののち、暁華が一番に口を開く。

「幼子を異形化させ、子を人質に津雲川を利用して青月を狙った。しかしその計画は失敗。そしてまた、新たな手段で青月の命を奪おうとしている。それがもしも本当ならば、お前は阻止するつもりなんだろう? 青月」

「もちろん、そのつもりだよ」

「……お前は、そうするんだな」

「まだ腑に落ちない顔だね、暁華。秋くんと日向が嘘を言っているとでも?」

「そうは思っていない。だが」

 暁華が言い淀む。代わりに黒鋼が返答する。

「俺も暁華と同じ気持ちだ。長く師として仕えていた人が黒幕だった、だったら俺たちはどうするべきなのか……青月のようにまだ動こうとしているあの人を止めるべきか、それともってやつだ」

「ふうん、なるほどね。あの人を師として見ているなら、正しいほうへ導くべきだと、俺は思うんだけどな」

「正しいほうへ、か」

「お前の言うことに一理はあるな。もう少し時間をくれ。まだ俺も暁華も、信じられないんだ」

「いいよ。それでいいかい? 日向」

「はい。黒鋼さん、暁華さん、返事を待っています」

 青月と日向は東堂久々津の計画を阻止する考えだ。暁華と黒鋼は答えを出せずにどうするか言えずじまいになった。残るは霧生ヨウスケひとりである。みなが彼に注目する。

「あ、あんまじろじろ見るなよ! 俺は、俺は……もちろん阻止したい。だが、あの人は俺の力をよく知っている。たぶん、青月の力にはなれない。一緒にいても、足を引っ張るだけだ。もちろん、協力はするさ。でも、戦うときはその……俺は抜けるぞ。もう暴走はしたくない」

「ふむふむ。ということは、俺と師匠の一騎打ちになりそうだね。黒鋼と暁華の悩みの種も、大方師匠と戦いたくないってところかな」

 言われたふたりは頷いた。

「戦うことになってしまうのなら、仕方がないと思える。だが、もしも私たちが立ち向かっても、あの人の視界には入らないだろう。興味のあるもの以外は視界に入れたくない人だ。きっとあの人もお前との一騎打ちを望んでいるだろう」

 暁華に黒鋼が続く。

「そういうわけだ。悪いが俺と暁華は、なにもしない」

 ふたりは退室する。日向が呼び止めようとするのを、青月が手で制する。

「大丈夫、あのふたりは味方だよ。今は俺たちでなんとかしよう」

「――なんとかとは、なんのことだね?」

 突然の声に青月たちは背後を振り向いた。いつからいたのか、自分の椅子に寛ぐ東堂のすがたがあった。聞かれていたのか、と青月は内心焦る。表に出ないよう表情を取り繕う。

「あれ、いつからいたんですか」

「――さあな。そんなことより、私の質問に答えくれ」

 東堂の射抜く鋭い眼光に、青月も日向も霧生も心臓が停止した感覚に陥る。

 青月は息を吸い、返答する。

「あなたがまだ、事を起こそうとしていると聞きました。どうなんです?」

 東堂が三人を凝視して視線を逸らした。

「あの青年か……ふん、報せるのがはやいな」

「ではやはり、秋が報せてくれたことは事実なんですね」

「だとしたら、どうするかね」

 挑発的な笑みが向けられる。それに返すはただ一言。

「思い通りにはさせませんよ」

 笑みが消え、剣呑な空気が流れる。日向と霧生はひやひやしながら見守る。

 すると、東堂がはち切れんばかりに笑声をあげた。部屋中に反響する笑い声は、少し長く続いた。三人はその様子にぽかんとする。

「貴様らが私に盾突くか!? いいとも、いいとも、やってみるがいいさ! 最初に断っておくが、私はそう簡単にはいかぬぞ? ニンゲン風情にやられる私ではないわ!」

 狂気に顔が歪む。

 化けの皮が剥がれた男に衝撃を受けた日向は立っていられず、ソファに座り込んだ。

「暁華と黒鋼が聞いたらしばらく立ち直れない発言だね、ふたりがいなくてよかったよ」

「ふははは、そうだな。あのふたりの前ではこんな顔はしないが」

「一体、津雲川をどうするつもりなんだ?」

「決まっている、私の手駒にするのだよ。お前を殺す道具に仕立て直す」

「想像したくもないね」

 紫煙が虚空をゆらりゆらりと彷徨う。

「さて、私は正体を明かした。私が計画を成功させるのが先か、お前たちが阻止するのが先か……楽しみになってきた。ああ、そうだ。私はもうここには戻らんよ。好きに使いなさい」

 最後のほうの語気が寂しげなように聞こえた。

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