入寮
叔父に言われた通り、僕は入学式までゆっくり寮で過ごそうとした。でも、部屋に用意されている服を見て僕はうなだれた。制服と私服。私服は叔父が気を利かせて置いてくれたのだろう。でも目の前にあるスカートをはじめとする衣類は男なら絶対着ないようなデザインのものばかりだ。女子校なので当然男子生徒用の制服などあるわけもなく、セーラー服が佇んでいる。僕はため息をついた。
今は入寮予定者が来始めている頃で寮にはあまり人がいないらしく、なんとか人に会わずに自分の部屋まで来ることができた。しかし、これからここで安心して学校生活を送るためには女の子として過ごさないといけない。つまり、女の子の格好をしないといけないということだ。しばらくためらったが意を決して用意してある服に着替えた。
着替えた後、洗面所にある鏡をまじまじと見つめた。髪の長さは女の子のショートカットくらいあるし、親譲りのサラサラな髪質でぱっと見女の子に見える。とは言っても僕の個人的な感想であって、他人から見てどう思われるのかわからない。試しにスカートを履いてみたのだが、なんとも言えない感じがする。膝の少し上まで隠れるという点は短パンと同じだが、開放感というか、よく言われるスースーするという感じが慣れない。
しばらくその違和感と格闘していると部屋がノックされた。突然のノックでびっくりしたが、急いで着てきた服を片付けドアを開ける。すると、目の前には30代くらいの女性が立っていた。
「初めまして。私はここの寮の管理人をしてる大原理恵と言います」
「は、初めまして…。優希です」
「理事長から話は聞いてるわ。1人だけ男の子は大変だろうから色々便宜を図ってあげなさいって言われたの。だからこれからよろしくね」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
この寮ではシャワーこそ個室で浴びることが出来るものの浴槽は用意されてなく、風呂に入るためには大浴場へ行かないといけない。なのでみんなが入った後に僕が風呂に入れるようにしてくれるとのこと。僕は安堵した。大家さんの
「意外とかわいいわねぇ。食べちゃいたい」
という呟きを聞いてしまうまでは。