千早類
あたしの右耳にあるピアス。
左耳にピアスはない。
揃うことは一生、ない。
なくなってしまった。
君も、思い出も、時間も。
それでも、あたしは君が好きで。
あの日何もできずにいた子供だったのはあたしだから
この思いと生きて行こう。
桜が満開で本当に綺麗だなと見ていた。
この桜よりも綺麗なものなんてほかにないと思っていた。
だけど、僕は見つけてしまった。
どんなものよりも綺麗でまっすぐな君に。
耳下くらいの茶髪のショートヘアに右耳だけにつけられたピアスが風にキラキラと揺れて。
桜を見ながら泣く君を。
これを一目惚れというんだなと思った。
そんな高校一年生の春。
「千早〜〜!食堂行こう!」
「待って待って」
急かす友人の後を追う僕は今日はなにを食べようかなと考えてていた。
「あ、中間順位でてる」
友人が呟き僕は足を止めた。テスト順位を公開するなんて恥ずかしい。と思いながらも僕は僕の名前よりも彼女の名前を探していた。
「あ!花田さん!15番!」
「うわ〜、相変わらず特進科でもねーのにすごいな」
「前回よりも二番上げてる!ますます惚れ直しだよ!」
「はぁ、花田さんのテスト順位を把握して覚えているお前が気持ち悪い。」
呆れた友人は食堂へと足を向ける。
そりゃ、把握っていうか覚えている。ていうか記憶からなくなることはないであろう、彼女。
花田綺良
僕の好きなひとだ。一目惚れから一年経っても色褪せてくれない。普通科の彼女と特進科の僕ではまるで接点がないうえ、彼女、花田さんはサボリ魔らしくあまり学校でも見かけずこういう張り紙で花田さんの情報を得るしかないのだ。