昂る体温と邪恋
お題「体温」「邪恋」
肌を刺す冬の風が、二人に吹き付ける。防寒具を着ていても、この風に二人は震えていた。ただの寒がりなのかと思うと、二人はお互いの指先を握り合っていた。唯一露出している指先がかじかんでいるので、温め合っているらしい。
吐く息は白く、霜が降りる屋根は寒々しい。そんな冬の夜中に二人は何かを話し合っていた。線の細い、レディースの服を着こなしている少女のような彼は、猫撫で声でもう一人に囁く。うっとりとした、甘い声を向けられているのは、筋肉を纏った青年だ。壮年の雰囲気を感じさせるのは、洗練された立ち振る舞いのせいだろう。しかし、そんな青年は今困っているようだ。
ねだるような甘い声のまま、彼は問う。その手には誰かの連絡先のようなメモが握り潰されていた。困り顔のまま、青年は問いかけに返す。それはいつのまにか入れられていただけで、どうせただの職場の友人だろう、と。それでも彼の服を掴む力は変わらない。どこか不安そうに、ギュッと掴まれた青年のスーツは徐々に伸びていく。更に困り果てる青年の顔を見た彼は、捕まえていたスーツから手を離すと、今度は服の下に手を差し込んだ。青年の肌を舐めるように這わせながら、上目使いで再び問う。熱を帯びていく甘い声に、蕩けきった甘美な吐息が、二人の体温を急上昇させる。煮詰められていく体温が沸騰する頃、青年はため息をついた。
そして、赤子の頭を撫でるようにゆっくりと、優しく彼の指を外していく。肌を犯していた指は宙を彷徨い、行く先を探す。所在無げにふらついた手を、青年は片手で引き寄せた。戸惑う彼に視線を合わせると、青年はついばむようなキスを唇に落とした。直後彼は、処女雪を彷彿とさせる白い頬をリンゴのように赤く染めた。
彼を安心させるようなほほ笑みを見せると、青年は彼をお姫様抱っこし、家の中へと入っていった。