誕生日プレゼント
『1』
「モウ……ド……タイ」
そのかすかに聞こえる声が俺の重い瞼を持ち上げさせた。ソノ先に見えるのはいつもどうりの見慣れた天井。このいたって平凡な部屋で毎日だらだらと過ごしている。
俺はふと時計をを見た。
2時18分。外は真っ暗。
「まだ真夜中じゃねぇか。」そう思いながらまた目を閉じた、
「…あっ」手足が動かない。それに少し頭が痛い。前に何度か金縛りにはあったことはあるが今回はいつもと違う。体が燃えるように熱い。このまま焼け死んでしまうほど。
そのとき嗅いだことのある匂いが神経伝いに脳に伝わってきた、
「この香り、千尋…?」
千尋とは俺の同級生で、俺と千尋は一年前から付き合っている。が、そんなベタベタせず程良い距離感を保っている。(そのくらいがちょうどいい)
「でもなぜ今千尋の香りがした?」
少し考えたが思い当たる節が無い。
そんな事をしているうちに金縛りはとけていた。
しかしその後の記憶がない。おそらくまた眠ってしまったのだろう。
『2』
私は家で昼ご飯を食べているときからソワソワしていて何を食べたかさえも覚えていない。
今日は私の誕生日だ。
しかも人生初の彼氏とディナーを二人っきりで食べる。しかも修平はサプライズプレゼントまで用意しているらしい。修平は隠しているつもりでも 私にはとっくにばれている。
修平とは私の彼氏で以前から付き合っているて、今日は二時半に駅で待ち合わせしている。まだ一時だがもう緊張して部屋の中をウロウロして落ち着かない。そうこうしているうちに出発する時間になった。
「行ってきまーす!」
私は元気よく家を飛び出していった。
『3』
私は10分早く待ち合わせ場所に着いた。
「少し早すぎたかな…」
そう言いながら目は彼の来る方向をずっと見つめていた。
「ヤバい…遅れた」
俺は今までにないぐらいの速さで走っていた。
「今日だけは絶対に遅れちゃダメだ!」自分に言い聞かせながら坂道をかけ下りていった、
その後結局俺は彼女に会えていない。
「遅いなぁ」
私は彼の家に行ってみることにした。
途中で人だかりができていたがそんな事に目もくれず坂道を上っていったが彼の家には誰も居なかった。
『4』
その日以来私は彼に会っていない、というより会うことができない。学校も一週間ぐらい休んでいる。
先生によると彼は「引っ越した」らしい。
少し後に知ったことだが
私の誕生日にあの坂である少年がトラックにひかれ亡くなったらしい。
今、分かっていることは、少年がいきなり車道に飛び出してきたのが原因だということ。
あとその少年は空の箱が入った小さな紙袋をもっていたということ。
彼女はあの坂へ行ってみた。今は坂の角に花が置いてある。
彼女は何もせずただただ立ち尽くしていた。
後ろを通る車の音がやけに大きく聞こえた、
今までの思い出が頭の中を凪がれていく。
帰ろうとしたそのとき彼女は目を見開いた、
小さな紙袋が花の隣にそっと置いてある。
千尋は箱をあけてみた、やっぱり何も入っていない。
千尋は箱をぎゅっと胸に抱えまるで独り言のように呟いた…
「もう一度、会いたい」