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彷徨

作者: 大日向 渡

初めて投稿してみました。

濡れた髪をくしゃくしゃにかき乱し、何かに苛立ち怒鳴る俺。

部屋の至る所に散らばる本は、俺の心理状態を如実に示している。...と、一端の心理学者気取りに頭の中でつぶやく。第三者が見たら気でも触れたかと思うだろうか。いや、そんなことはないだろう。誰しも一人で自分の部屋に閉じこもっている時は叫びたくなるのではないだろうか。

例えば、過去の忘れたくなるような過ちなどが繊細に蘇ってきて、胸のなかに花火をぶちこんでそれを反芻させた様な気恥ずかしさに襲われる。

そんな経験を誰しもが持っているのではないだろうか。

そうに違いない。

人間一人では安定しないものだ。

否、不安定こそが人間の本質なのではないか?

後悔、悦び、悲しみ、夢、嘆き、苛立ち...ジヤンルの違うそれらの感情が蠢く様こそが本来、の感情ではないのか?いくつかの感情、言語にカテゴリィすることが構造学的な現代の世界の捉え方であるらしいが、そもそもの混沌、ケイオスの世界こそが人の生きる世であるのだ。

気が楽になった。

俺は異常ではない。

ノオマルなのだ。

走る。窓から飛び降りて。

二階の窓だ。関係ない。高さなど概念に過ぎない。

高さは低さなのだ。

風を切る。

運動会でアンカァとして駆け抜けたあの頃を思い出す。

疲れない。疲れなど幻だ。

白い息が風と共に後ろへ流れていく。否、俺が後ろへ走っているのか?

方向など気休めに過ぎない。

近くの公園に辿り着いて闇夜に浮かぶ満月へ吠える。

ほのかに浮かび上がるアスレチィックへかけ登り、自らを鼓舞するかの様に吠える。

俺を見てくれ、俺はここにいる。

静寂に響き渡る遠吠え。


全身が疼く。

腿の内側から外側へ伝わるぞわっとした感覚。

爪が伸びだす。指が太くなる、骨の構造が変わっていくのが分かる。背中の毛が逆立ちはじめるのがありありと分かる。

俺は無敵だ。






一人、いや、一匹の狼が

夜を駆け抜け彷徨する。




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