83 最終章 はーい!喜んでーー!
今回で最終章となります。長い間、お付き合い頂きありがとうございました。ミッドナイトノベルズ掲載の「浦島乙姫伝説」も合わせて読んで頂ければ幸いです。「園芸部シリーズ」も少しづつ短編を書いています。書きたまったら、また、連載したいと思います。その節は、また、よろしくお願いします。
「ところでさーっ!
お姉さんも、お姫様カットなんですねぇ?」
七草の軽口に短亀ちゃんが噛みついた。
「お姉さんなんて気安い呼び方しないで下さい!
豊玉さまですっ!恐れ多いです!」」
「みっ、短亀ちゃん!怖え一よっ!」
「言葉に気をつけて下さい。
殆ど神に近い存在のお方なんですから!」
「正に神さまに紙一重だな!」
「ヨッシーうまいっ!」
「おうっ!」
「うふふっ!本当に中のよろしいこと!
でも、これは、お姫様カットじゃないのですよ。」
豊玉さんの話に短亀ちゃんが直ぐに反応した。
「ええっ!どう言う事ですか?」
「これは、乙姫様カットなんです。」
「ええーーっ⁉︎ 」
豊玉さんの言葉に短亀ちゃんは驚きを隠せなかった。
「元々は豊玉姫さまが、なされていた髪型を
平安女子達が、こぞって真似をしたのです。
これは我が家に伝わる文献にも記されています。
豊玉姫さまが元祖であり始祖なのです。」
豊玉さんの説明に何故か七草が即反応した。
「ええっ!始祖っ!始祖か⁉︎ 不死鳥か!
不死鳥伝説か!美空ひばりか!」
ヨッシーが切れ気味で七草を制した。
「もう、黙っとれって
いつも、いいところで口を挟む!
しかも、しょーもない事しか言わん!」
「美空ひばり様をしょーもないとは、何だ!
訴えてやる一っ!」
「美空ひばりさんは素晴らしいよ。
その名前をチャカしているのが気にくわんのだ!」
「そっ、それは、そうだ!悪りぃ!」
「素直でよろしいですね!
自分に非があると気付いた時に
すぐに謝罪するところ潔くて気持ちいいです。」
「ええーっ!本当ですか?照れるなぁ!」
豊玉さんに褒められ
七草がニヤケ顔になったが
ヨッシーは気に食わなかった。
「おだてないで下さい!
すぐ調子に乗るヤツなんで!」
「あら!そうなの?」
豊玉さんの問いにヨッシーと七草は同時に答えた。
「そうなんです!」
「違います!」
「そうだろがーーっ!」
「そだねー…」
「そっかぁ、このヘアカット
豊玉姫さまカットなのかぁ!」
七草が、感激して、そう言ったが
豊玉さんは慌てて訂正した。
「そ、そこは乙姫さまカットにして頂けるかしら…
本名丸出しは少しばかり気が引けます。
それに個人情報ですし….」
「わっかりましたー!」
「うふふっ!あーあ、楽しい!
そうだ!これから
お茶屋さんで、お茶しましょうよ。
お団子も頂いて…
もちろん、あちらの方達も誘って!
何だか、名残惜しいんですもの。
ねっ!ご馳走しますから!
どうかしら、時間が許すのであれば...」
「ちょっと待って下さい。
部長さんに、お話して来ます。」
短亀ちゃんがベンチに速攻で向かった。
部長にお伺いを立てている。
短亀ちゃんが振り向くと腕で大きく円を描いた。
「ヨッシャ~!OKだ。」
ヨッシーが笑顔で拳を上げた。
豊玉さんも、溢れる様な笑顔を披露した。
「良かった。楽しみだわ!」
みんなも笑顔になった。
「じゃ、先に向かっていらして
私は、お茶屋さんに
お席の予約をお願いしますので...
そちらは何名かしら?」
豊玉さんの問いに七草が答えた。
「えーっと…六人だな。ハイ!六名です!
それは、いいとしてチョン君はどこ行った?」
七草の問いにチョン君が短亀ちゃんの後ろから
バツが悪そうにユックリ手を挙げた。
「あのー、ここに居ますけど…
初めから居ましたよ。
七草先輩より前から、ずっとですよ!」
すると七草は腕を組み神妙な面持ちで
チョン君を諭した。
「アンタひと言も喋らんと
「居ましたー」って主張してもね。
それは通らんよ。
その存在が他の人に認識されて
初めて人は存在意義や価値を見出すものなんだ。
誰にも認識されてなかったら
チョン君!アンタ、おらんのと同じだよ!」
「そんなに皆さんで
機関銃みたいに喋り続けられたら
オレなんか、その隙間に一ミリも入れないですよ。」
「そうですよ。横暴ですよ。
チョン君は奥ゆかしいだけですから…
でも出るところは出てますし
出す時は出すんです!」
「あぁあ、短亀ちゃんも、すっかりエロ事姫だな!」
「ええ!お金の話ですよ!
お金を出すって言ったんです。
さっきも、このお守りをチョン君が
お金を出して買ってくれたんです。」
「それで今度は
アンタが、お返しに搾り出してやるんだね!」
「そっ、それは、まぁ....」
「そこは否定せんのかっーい!!
「えへへっ!そうですね!」
「このエへへ娘がっ!」
「はいはい!皆さん!着きましたよ。
席は一番奥の方のようですね。」
部長の声かけに、みんな一列に並び
店の中央の通路を奥へと向かい
テーブル席に着いた。
「では、皆さん揃いましたね。
豊玉さん。太郎さん。
今日は大変お世話になりました。
おかげで、すっかり気分が良くなりました。
こちらが、お礼をしたいくらいですのに
ご馳走になるなんて大変恐縮です。
でも折角ですので美味しく頂かせて頂きます。」
「はい!遠慮しないで
他にも何か召し上がりたい物があれば
注文して頂いて結構ですわよ!
若いんですものドンドン召し上がれ!」
「はーーーい!よぉろこーんでーーっ!」
みんな、既に用意されていた串団子に
かぶりつき舌鼓を打った。
…が…しかし…
ひとり、団子を口にすることも忘れて
豊玉さんの顔をじっと熱く見つめている者がいた。
短亀ちゃんだ。
短亀ちゃんはあざとくも
豊玉さんの横の席に陣取っていた。
そして、テーブルの下では早くも
豊玉さんの透き通る様に白く柔らかな手に
自身の指を絡ませていた。
その表情は、初めは澄ましていたが
徐々に、頬が、ピンクに染まり
瞳は潤んで、その奥で怪しい光を放った。
すると豊玉さんの頬も何故か薄紅色に染まってきた。
瞳は潤んで、杏の様な唇からは、甘い吐息が漏れた。
それを七草は見逃さなかった。
「短亀摩季。今度は豊玉さんかい⁉︎
全く、恐ろしい娘だよ…」
短亀ちゃんの真髄が、今まさに
神髄と成し発揮されようとした瞬間を
七草は目の当たりにしていた。
そして、短亀ちゃんの口元から
あの笑いが…
「エヘヘッ!」
何かを予感させる。
あの、短亀ちゃんの笑みが溢れた。
おわり




