82 乙姫と太郎の名前の由来
授与所の中の椅子に短亀ちゃんを座らせた。
こちらも熱いお茶を頂いている。
「すいません。先程から部長さんに続き
私まで倒れてしまうなんて…
でも、こんな事初めててです。
それ程ショックでした。」
「そう、驚かせてごめんなさいね。
偶然が色々重なってビックリなさったのね!」
「えっ!これって得然何ですか?
浦島太郎さんと乙姫様って
そんな偶然、ありますか!
私は必然としか思えません!
失礼を承知でお聞きします。
お二人のお名前の、ご由来をお聞かせ下さい。
お願いします!どうかお願いします。」
短亀ちゃんは立ち上がり
膝に顔が当たる程、深くお辞儀をした。
「あっ、頭をお上げになって短亀ちゃん!
あっ、ごめんなさい!
お友達さんの呼び方を真似してしまって...」
「いえ!嬉しいです!そう呼んで下さい!
ちゃん付けで呼んで下さい!」
「そう、じゃあ。
まずは座って!」
豊玉さんは短亀ちゃんが椅子に座ると
その手を自身の手の平で包む様に優しく握った。
「改めて短亀ちゃん!よろしくね!」
その瞬間、短亀ちゃんの瞳のダムが決壊した。
大量の涙が一気に赤く火照った頬に襲いかかった。
「うわーん!神です!やはり神です。
まごう事なき美女神様で一ーす!
美し過ぎる一っ!」
「あらら!短亀ちゃん!壊れちゃったね!」
ヨッシーが苦笑いした。
「ちょっと落ち着けよ。ホラッ!
お茶飲んで...お名前の語由来聞きたいんだろ?」
「そうでした。失礼しました。
よろしくお願いします。」
「短亀ちゃんも凄く可愛いわよ!
それに、こちらのお嬢さんも凄い美人さんで
スタイルが良くて羨ましいわ。
やはり若さに叶うものはありませんわ!
最強ですよ!」
「えっ、失礼ですけど。
豊玉様の年齢は、おいくつなんですか?」
「えっ!私ですか?
私は今年ニ千二十五歳ですね。」
「ブッ!」
短亀ちゃんがお茶を吹き出した。
ヨッシーが背中をさすっている。
「ケホッケホッ!豊玉さま。
いきなりそんな冗談をおっしゃるから...
油断していました。ケホッ!」
「なんかデーモン閣下みたいだったな!
あっちは今十万六十三歳くらいらしいぞ!」
「桁が違いますね。
でも端数は、結構いってますね。」
「昭和のハードロックバンドだからな。
…って、そんな事はどうでもいいんだ。
ちゃんと話を聞こう。
ウチは、いつも横道にそれていかん。」
「はい!じゃあ、初めましょうか!
まず、私の名前ね。
実は、私は
豊玉姫様の血を継ぐ家系の末裔なんです。」
「う~ん...」
「短亀ちゃん!
駄目だ。完全に白目剥いてる。
余程のショックの様です。
どうぞ、お話を続けて下さい。
私が、ちゃんと短亀ちゃんに後程、伝えますから…」
「そうですね。わかりました。
えっーと、どこまでだったかしら…
そうだ、その豊玉姫の家系に生まれた者の中でも
長女として生を受けたものは
その名を長きに渡り受け継いできたのです。
その責務を今、私が負っている訳です。
太郎さまは浦島太郎と言うただの
偶然の同姓同名のお名前です。
亀の思返しの浦島家とは
全く縁も、ゆかりもございません!」
すると太郎さんが豊玉さんに耳打ちした。
「私だけ、そんな残念な感じですか?」
すると豊玉さんも小声で返した。
「だって二人共末裔だなんてありえないでしょう。
そんなの怪し過ぎます。ここは我慢して下さい。」
「そうですね。止むを得ません。わかりました。」
「あっ、失礼しました。こちらの話で……」
そう言うと豊玉さんはヨッシー達の方に向き直った。
「あ〜!そうなんですか!
太郎さんは未商じゃないんですか?
それは、残念!」
ヨッシーの言葉に太郎さんが反応した。
「やはり残念ですか!すいません!
ご期待に添えなくて申し訳ないです。」
「いえ!さすがに、それは、ないですよね。
もしも、そうだったら凄い事ですよ!
いにしえの太古から続く家系の末裔が
現代で結ばれる。
これは、もうロマンでしかないですよ。
大スベクタルロマンですよ。」
「そっ、それは、大袈裟過ぎませんか?」
「いえ!それ程の事です!
ああ、これチョン君の次回作にならんかねぇ……
おおっ!短亀ちゃん。蘇ったか!
浦島さんは普通だったぞ!
縁も、ゆかりも無いそうだ!
残念だったな!」
「あの~。普通と残念はさみしいので
もう、おっしゃらないで、頂けますか?」
「そっ、それは失礼しました。」
「おっ!ヨッシー!短亀ちゃん!お揃いでっ!」
「ナクサ!どこに逃亡してたんだ!」
「また一周して来たよ。」
「あーあ、また帰りはグッタリだな。」
「わっ!お守り一杯だっ!
天下統一出来るお守りないですか?」
「そんなもん、ある訳ねーだろが!」
「有りますよ。」
「ええー!あるんですかーい!」
「こちらですね!ハイ「天下統一」
あとは「武者修行完徹!」とか
他には、「美神降臨」ですかね。
こちらは面白グッズ系ですね。
皆さん、お土産で買って行かれますよ。」
「マッ、マジかヨッシー買ってくれ!」
「嫌だよ!自分で買えよ。」
「お年玉は帰ってからだもんな。
前借りしとけば良かった。
お小遣い、もう底をついたからな。」
「お菓子ばっか、買うからだろ。
毎度の事ながら呆れるよ。」
「短亀ちゃんは何を買ったんだ。」
「家内安全と商売繁盛ですよ。
これに尽きますよ。
みんなが健康で幸せなら何も言う事ないでしょ。
七草先輩…
その先に天下統一も、あるんじゃないですか!
健康第一ですよ!」
「クーッ!効くねーっ!その言葉!
それが真理だよ。当たり前で普通の事だけど
それが中々うまく行かないもんだ。
暴飲暴食不摂生。その先には病気しかないよ。
全ての生活が壊れてしまう。
家族まで巻き込んでしまうからな。
よし、それ買っちゃおう!家内安金!
ヨッシーお金貸してくれ!お年玉で返すから…」
「天下統一じゃないのか?」
「まずは健康第一だ!
それを見据えていれば
その先も見えてくるんだろ。
じゃあ、それしかないだろ!」
「そうだな!じゃ私も買おう!それとそれっ!
家内安全二つお願いします。」
「はい!ありがとうございます。」
「あっ!ヨッシー!私がピンクだよ!」
「何言ってんだ!私が買ったんだぞ!
私がピンクだ。アンタは茶色でいいだろ!」
「嫌だ。そんな色。ジジくせーよ!」
「はいはい!
じゃあ、そちらもピンクに替えましょうね。」
「はーい!ありがとうございまーす。」
「これで無敵だな!」
「そだな!」
「そーかしら?」
「そーなんですっ!」
「そーなんですっ!」
続く




