74 除夜の鐘を聴きながら
「ヨッシー!隣の部屋が騒がしいな。
ドタン、バタンって…あーあ、目が覚めたよ...」
「ああ、また短亀ちゃんが
マッサージをやってるんじゃないか?
アレは効くからな!
明日は部長もスッキリ顔だろうな!」
「あっ、紅白、もう終わったのか!」
「ああ、今年は紅組の勝ちだ。」
「そんな事はどっちでも良いけどな!
そろそろ勝敗をつけるのも
やめにした方がいいんじゃないのか。
みんな頑張って楽しんでるんだからな。
そう言う時代らしいぞ!
学校の運動会でさへ
そうなりつつあるらしいのにな。」
「そうなのか!でも頑張り甲斐がなくならないか?」
「それはスポーツが得意な
一握りの者だけの言い草だ。
体力も無くて運動神経の鈍い者は
張り合いどころか
ただ、さらしモンにされるだけだ。
引き立て役だ。」
「ナクサ。アンタ運動会
ずっと、つらそうだったもんね。」
「万年ビリはつれーよ!
やっぱ!アンタみたいに、せめて足が長けりゃねぇ」
「そこじゃ、ねーだろ!…うん。しっ!
ナクサ!耳を澄ましてみろ。」
ゴーン!ゴーン!
「除夜の鐘だ!
あっ!行く年来る年やってんじゃん!
ああ。今年も、もうすぐ終わりか!
ヨッシー色々お世話になりました。
来年もよるしくお願いします。」
「ああ、こちらこそ....って
今、挨拶したら年が明けたらどうするんだよ!」
「また、やればいいだろ。
めでたい事は何度やってもいいだろ!
それにしても隣、まだやってんな!
静かに、おごそかに
除夜の鐘を聴くと言う情緒の欠片もないのかね。
他の客にも迷惑だ。
ヨッシー!メールしといてくれよ!」
「そだな。わかった。」
「どうだ。」
「既読もねーよ。何、夢中でやってんのかね?」
「も一良いか!そのうち止むだろ。
おっ、カウンタトダウン始まったぞ!
あっ、あれどこ?」
「渋谷だろ。スクランブル交差点だろ!」
「規制してるんじゃなかったか!」
「ああ、最近は日本人は自粛してるみたいだけど
インバウンドがな。
集まって大騒ぎしてるみたいだ。
ワタシタチ、ワカラナカッタヨ。の世界だ。」
「自分の国でやって欲しいな。
日本の年末年始は厳かに静粛にだろ。
バカ騒ぎする人なんていないよな。嘆かわしい!」
「おっ!5、4、3、2、1 明けましておめでとう!」
「ハッピニュイヤーー!」
「だ、か、ら。インバウンドやめろって。
あけおめ!だろ!」
「アンタも省略すんなよ!」
「そだな!」
「だから、短亀!なっ!止めろって!
こんな事オマエらしくないから!」
「あら!私らしいって何ですか?
部長さんも言ってました。
私の事を勝手に決め付けないでください...って…
こんな女の子だってイメージで縛りつけないで!
私は日々変わってるの。
昨日の私と今日の私は違うの!
明日の私は、もっと変わってる。
でも、たった一つだけ変わらないものがあるの。
チョン君を想う気持ち。これだけは変わらない。
それだけは、わかって欲しいの!
今すぐ好きになってもらわなくてもいい。
でも今だけは側に居させて!
チョン君、お願いします。」
「短亀…それって…
向かい合って言う言楽じゃないか?
そっ、うう、そんなの咥えて、上目遣いで
うっ、フーッ、言う事じゃ
あっ、ないだろう....」
「だって、ウンウン。
さっさと行動に移さないとウンウン。
チョン君ゴチャゴチャ
屁理屈ばかり、こね始めるから…
ウンウン…」
「喋る時くらい、やめてたらどうだ。
もう、よけたりしないから…」
「そう!よけたく無くなったのでしょう?
気持ち良いんだ?」
「そりゃあ、まあ悪くはないよ…」
「ホラッ!また、そんな気のない言い方!
もうっ!夢中にしてあげるんだから。
自分から毎回してって
言いたくなるようにしてあげる!」
「ああっ…短亀っ!それっ!
だっ、あぁっ!駄目だぁ!」
「シッ!カウントダウンが
もうすぐ始まるわ!
ホラッ!テレビでやってる。
あっ、聞こえる?除夜の鐘も…
108回鐘を鳴らすのよ!
鐘を突く事で煩悩を…厄を打ち消すのですって…
悲しみや苦しみを浄化するの。
だから今、それに合わせてストロークしてる。
私がチョン君の煩脳を全部吸い取ってあ、げ、る。」
「そっ、それ、逆だよ!
俺、煩悩だらけに…
あっ、なっ、なっちゃうよぉ!」
「いいよ!そしたらいくらでも吸い取ってあげる。
エヘヘッ!あっ、カウントダウン始まったね。
こっちもフィニッシュしよう!ウンウンウンウン!」
5.4.3.…
「あっ!駄目だっ!短っ亀っ!そこっ!
あっああああっ!ヤッバイイイ!いっくうううう!」
...2、1、発射一一っ!
「ああああああああああいっああああああぁ!」
続く




