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短亀摩姫ちゃんの神髄  作者: 桂虫夜穴


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65/83

65 全褒めでお願いします!


「チョン君ご苦分さま!」


部長が労いの言葉ををかけた。

ここは、やはり部長の出番だ。

チョン君は控え室の壁の角の椅子に座り

うなだれている。

部室の角席と同じ風景がそこにあった。

チョン君の、うつむいた顔から汗か涙が

ボタポタと雫がおちている。

ヨッシーがクレンジングを持って

チョン君の横で片膝をついた。


「チョン君、カッコ良かったよ。

やり切ったじゃん。

私、感動したよ。」


ヨッシーは実際、涙ぐんでいる。


「さっ、こっち向いてお化粧落とすから…」


ヨッシーはチョン君の頬を優しく

白くて柔らかい手の平で包むと上を向かせた。


「プッ! 」


思わずヨッシーが吹き出した。

その間抜けメークは汗と涙でドロドロになっていた。


「何ですか?モーッ!」


「ハハハッ!汗と涙の結晶だ。美しい!」


「そだな!」


「どこがですか?」


「ハハハッ!」




チョン君のドタバタ劇で園芸部、守護神軍団は

まんまと優勝をかっさらったが

あのチョン君のエロい腰突きが

後で物議をかもしたら、厄介な事になりそうだし

折角頑張った小中学生諸君や親子チームの為にも

その栄冠の座は他のチームに譲る事にして

辞退を申し出た。

すると、その奮闘で

大いに、この大会を盛り上げてくれたと言う

審査員の評により特別賞を頂いた。

それは折角の、ご厚意なので

ありがたく頂く事にした。

 

特別賞の盾を七草が頭上に掲げ

歓喜の雄叫びを上げると観客も大いに沸いた。

部員も小躍りして喜んだ。 

その中に、たった一人ポツンと

私服に着替えて棒立ちした青年がいた。

チョン君だ。

綺麗に髪がセットされている。

しかし、サングラスとマスクで

その表情は読めない。

…が、サングラスの下では一筋の涙が流れていた。

 

 

チョン君の回りに部員が集まり

胴上げしようと言い出した。

彼は恥ずかしいからと辞退したが

その直後、長身の体が軽々と宙を舞った。

胴上げする方も一人だけ長身の青年がいたが

他は小柄な少女三人だ。

その見た目に反して

長身の青年が空中高く舞い上がり

手足をバタバタする姿は

見るからに不思議な光景だ。


「やめろーっ!やめろ一っ!短亀一っ!」


彼は解っていた。

この異常な高さの胴上げの中心に

短亀ちゃんがいる事を…

あの武道により物理法則を無視した投げを

自ら体験した身だ。

あの技が再現されたのだ。

最後は大きな体が猫の様に回転して無事着地した。

ストンと軽く床に着いた。

あの日と同じだ。痛みもケガも無い。

観客は度肝を抜かれて騒然としている。

私達はやらかした事に気付いて

そそくさとステージを後にした。

チョン君は七海に肩を抱かれ

んフラフラ千鳥足でその場を後にした。




「怪我の功名ってヤツか?」


「チョン君のおかげですよ。

本当にありがとうございました。」


部長が両手を揃え丁寧にお辞儀した。

皆、着替えも終わり

短亀うどんで打ち上げとなった。

短亀ちゃんが予約をしておいてくれた。

いつもの一番奥の座敷で祝杯だ。


「チョン君、悪かったな。

嫌な思いばかりさせて…」


七海は正座をして頭を下げた。


「いやっ!頭を上げて下さいよ。

もう大丈夫ですから。

…って言うより何だか

清々しい気持ちなんですよね。

ヨッシー先輩が「やり切ったね。」

…って言ってくれたじゃ無いですか!

確かにそうだなって思って…

不可抗力とは言え

自分が、あんなに他人を笑わせるなんて

この生涯で一度もなかった事ですよ。」


「私達だってそうだ。

いつもスベッてばかりだ!」


「ハハハッ!そうですよね。

でも、子供達も喜んでくれたみたいで

良かったです。

漫画って、何かの媒体を挟んでしか

評価を受けれないじゃないですか。

「本当に受けてるのかな?」とか

「本当にみんな面白いと思ってくれてるのかな?」

…って……実感が湧きにくいですよ。

でも今日は肌で感じました。

それこそ鳥肌ものですよ。

あんなに、みんなが笑って

終いには泣き笑いしてる人までいましたよ。」


「えっ⁉︎ あのパニック状態で

観客の、そんな表情や様子まで見れたのか?」


「パニックって何ですか?

俺は至って冷静でしたよ。」


「えっ⁉︎ ウソっ!マジッ⁉︎ 」


「はい!初めはヤバって思いましたけど…

子供達のキャッキャ、ゲラゲラの

笑い声が耳に入ってきたんです。

これ、もしかしてウケてるって思ったんですよ。

それで一世一代の大舞台だと思って

振り切る事にしたんです。

志村ケンさんみたいにやろうって思って

ステージを走り回りました。

気持ち良かったなぁ。

やった事がダイレクトに返ってくるんですよ。

漫画家では感じ得なかった。

生の反応を味わったんです。

LIVE感ってヤツですかね!

それは快感でしたよ。痛快でした。爽快でした!」


チョン君の満面の笑みに七草は感心した。


「たまげたな。

あれが途中からチョン君の演出だったのか。

やっぱ天才だな。

伊達にヒット漫画家やってねーよ。

日頃は、いるかいないか、わからん程

存在感がないけど…やっぱ、やる時はやるんだな。

やってくれるんだな。でかした!」


「あのー…爽めてます?けなしてます?」


「両方っぽいな!」


「うーっ!ここは全褒めで、お願いしますよ!」


「ハハハハッ!そだな。」



続く

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