63 声援なき子だよ!
「さあ次だ。円陣組もうか。」
「よし!バシッ!と決めるぞっ!」
「エイエイ!オーッ!」
みんな拳を突き上げ気勢をあげた。
ステージの脇で待っていると
前のチームの得点が出た。95点を叩きだした。
80点以上が合格だ。
その上位から優勝、準優勝、副賞、特別賞
ほのぼの賞、親子賞など
多数の賞が儲けられている。
なるべく皆さんに賞が行き届<様にと言う配慮だ。
もちろん参加賞も用意されている。
大口のスポンサーがついたのだろう。
参加する身としては有り難い事だとみんな思った。
「95点か...優勝は無理だな。」
「まっ、参加する事に意義ありだ!
ここまで用意するのに苦労したんだからな。
やる事は、やったんだ。後は披露するだけだ。」
「では、次のエントリーチームステージへどうぞ!」
「おっ!呼ばれたぞ。行こう!」
「そうだな。いざっ!出陣だ!」
まずはヨッシーが先陣を切った。
モデル並みのプロポーションに会場が沸き立った。
例のフワフワ羽衣をたなびかせ
颯爽とモデルウォークで端から端まで歩き回り
セクシー衣装をこれでもかと披露し
最後にポーズを決めた。
仮装会場が突然、ガールズコレクションのような
歓声に包まれた。
「カワイイ!」
「綺麗!」
…と、あちこちで声が上がっている。
同じ学校の生徒達も来ていた。
ヨッシーのファン達は奇声をあげ手を振り
今にも失神しそうな程叫んでいる。
二番手は部長と七海だ。
また大きな拍手と歓声が上がった。
部長の豪華衣装と巨乳に度肝を抜かれたようだ。
ステージ裏では仕舞っていた胸の谷間が
エロ過ぎる程全開している。
二人は腕を組みゆっくりと歩を進めた。
七海は平安貴族の様な出立だ。
七海の守護神はスサノオなのに
部長の趣味で光源氏もどきにさせられている。
当然、部長は紫式部もどきだ。
あのヒラヒラ刃衣だけが
かろうじて女神の痕跡を残している。
しかし、この二人
作家と小説の主人公的な関係だ。
色恋ざたとは無関係なのに
ラブラブ設定に変えている。
部長の手元のフラワーブーケは何だ?
結婚式の披露宴か!
ここで済ますつもりなのか?
訳、わからん!
しかし、よくあんな着物が現存したものだ。
こんな商店街の祭りで披露するものじゃない。
博物館にでも寄贈した方がいいんじゃないか。
そこで保管展示してもらうとか…
七海が着せられてるのもそうだ。
気が気じゃないだろう。
染みや傷をつけたら一生、部長のしもべだ。
いや、もうそうなっているのか。
しかし部長のお婆様には、いつも感心する。
カワイイ孫娘の為とはいえ
家宝の様な着物を惜しげもなく貸し出すのだから…
そもそも私達庶民とは価値観が違うのだ。
もったいないからとタンスにしまい込み
その存在さえも忘れてしまう様な無駄で
それこそ勿体無い事はしないのだ。
必要な時に必要な物を効果的に使用して
その後はしっかり管理をして、ちゃんと後世に残す。
それが武家の仕来り
未裔として今尚存在する所以なのだ。
「七草先輩!出番ですよ!
何だか、ボーっとしていません?」
「ああ、いかん。物思いにふけってた。
さあ、行くか!」
七草の着物は、レモンイエロー。
羽衣はオレンジだ。
ミニの裾がドレスの様に広がり
キュートさを演出している。
笑顔で颯爽と飛び出したのだが
しかし、観客の反応が薄い。鈍い!
「カワイイ!」
…と言う、同情の声がチラホラ上がったが
声援はそれまでだった。
ヨッシーと部長コンビの
あの強烈なインパクトの後では
影が薄いのは当然だ。
感覚神経が麻痺して何を見ても
感動も感激もできない状態に皆陥っていた。
七草は半泣き状態で半分隠れるように
七海の横に並んだ。
「七草!可愛いかったぞ!」
「もういいよ。同情するより金をくれ!」
「ハハハッ!家なき子か」
「声援無き子だよ!」
「そだな!」
「そだなじゃねーよっ‼︎」
続く




