57 チョン君のとばっちり
「そうすると次は
チョン君で最後に短亀めちゃんか!」
もう驚きは、なかった。
他の生徒の演説は、大した盛り上がりもなく
普通に終わった。本来それが普通なのだ。
その後も、次々と演説が行われて
途中で短亀ちゃんが壇場に現れた。
「文化委員長に立候補しました。短亀摩姫です。
うどん屋の娘ですよ!みなさんご存知でしょ!
短亀うどんの経営者の娘です!」
「あちゃあ....こっちも、やってくれおった。
いきなり店の宣伝か!
自分で個人情報をダダ漏れにして
どう言うつもりだ?
普通そこは、隠したがるだろ。」
七海が頭を抱えた。
「今、冷やしうどんが
最高に、おすすめになってます。
美味しいですよー!
この、クソ暑い夏にピッタリです!」
「そこ、まずいぞ!
食い物商売でクソはないだろ!」
「もし、私を当選させて頂いたあかつきには
期間限定ですが、冷やしうどんを
半額にさせて頂きます。
もうこれは、私に投票するしかないでしょ。
いつ、するの……今でしょ!
これで私の選挙演説を終わります。
ありがとうございました。
気が向いたら是非お越し下さい。
お待ちしております。」
「店の宣伝に終始したな。
抱負も方針も全てとっぱらっとるし…」
七草は面白がったがヨッシーは心配顔だ。
「うどん半額って
親父さんの許可もらえてるのか?
しかも、これ買収行為だろ。
選挙で一番やったらいけない事だ。」
「締めもなんだ。今でしょ!って
林先生も最近は、言っとらんぞ!
これは、ダメだ。ヤバ過ぎる。」
「そうだな。残念会の準備が入りそうだ。」
「フーッ!やったーぁ!」
「ばんざーい!」
「バンザーイ!」
園芸部の部室で祝勝会が開催されていた。
「それにしても良くあんなので
みんな当選したな。
問題だらけだっただろ!」
七海がコーラを飲みながら言った言葉に
七草が反応した。
「いや、七海!アンタの当たり障りのない演説。
アレの方が問題だよ。全然面白くなかった。
当選したくて堪らないのがミエミエで
大衆に媚びてたね。
こんなのは、賭けだよ。大博打だよ!
インパクトが大事なんだよ。」
「やり過ぎて、落選したら意味ないだろ。」
「だ、か、らぁ…
そこに、こだわるなって言ってんだよ。
ワンステージに命をかけろよ!
短亀ちゃんを見習えよ。
文化委員長としての方針や抱負を一切語らず
うどん屋の室伝に特化した演説で
見事当選したんだぞ。凄いと思わんか!」
「それは、凄いと思うよ。
よく、あの公衆の面前で堂々と買収が行われて
それがまかり通ったのが不思議でならん。
もしかして選挙委員も事前に買収していたのか?
いや、まさかな、さすがにそこまでは、せんよな。」
七海の問いに短亀ちゃんがあっさり応えた。
「いえ!やりましたよ。」
「ええ⁉︎ そこ、冷静に言うところか?
普通、弁解とかするだろ!」
「当選を確かにする為の策ですよ。
やり方は、角席の交換条件と同じです。
うどんをご馳走した後に交渉を始めるんですよ。
買収材料は、すでに飲み込んでいるんです。
胃袋の中ですよ。
私の申し出を断る程
気概のある人は、いませんよ。
しかも指名を受けて
選挙委員はやってたそうなので
責任感も、それほどなかった様なので
交渉は、スムーズに進みました。」
「こぉわっ!怖いよ!短亀ちゃん。
それもチョン君のアドバイスか!」
「いえ!今回は、私の単独犯です。」
「えっ!単独犯って、罪を犯したって思ってるの?」
「あっ!今のは、失言です。単独判断です」
「えらい違いだ!」
「それにしてもチョン君!
アンタ私らをなめとるん……かいっ!」
七草がチョン君に詰め寄るとヨッシーが制した。
「私らって、不満を抱えてるのは、ナクサ!
アンタだけだろ!」
「ええ⁉︎ いきなりなんですか?
俺、何か問題起こしましたか?」
「問題も問題、大問題だよ!
こっちは、アンタが登場するのを
今か今かと待ってたんだよ。
チョン君が演説して
最後に、うちのホープ短亀ちゃんが
トリを務めると思ってたのに
アンタときたら短亀ちゃんが
終わっても待てども待てども出てこんから
周りを見回したら、
アンタずっとスマホでゲームやってただろ!
学校でスマホを遊びに使うなど不届き千万だ。
大体、前座の役目も果たせんのか!
アン夕が短亀ちゃんの前でボーッとしてたら
短亀ちゃんが嫌でも引き立って
当選を確かなものにできたんだよ。
まあ、奇跡的に当選出来から良かったものの。」
「いや、アンタが当選出来た事の方が奇跡だよ!」
ヨッシーがツッコミを入れたが
七草は気に入らなかった。
「イヤ、嫌、いや、その言葉
アンタに全部、いや倍返しするよ。
よっぽどヨッシーの方が奇跡だよ。
あんな使い回しのコスプレで
よく何度も出てこれるね。
アンタ紅白でトリでも務めるつもりかい?
ピンクレディと小林幸子が同居しとるじゃないか!」
「ナクサ!何でわかったんだ⁉︎ 」
「えっ!そうなのか?」
「そうだよ!ミーと幸子だよ!」
「ナクサ!やっぱアンタ見る目が違うね!
鋭いよ!」
「そっかあ!いやぁ…
何となく、そうかなぁって思ったんだよ!
そっか!イェーイ!」
「イェーイ!」
「勝手にやっとれ!」
「チョン君。気にしないでいいですからね。
ただ、皆さん生徒会のお務めと掛け持ちになるので
部室を開ける事が多くなると思いますけど
お留守番よろしくお願いしますね。」
部長が折角チョン君を気遣ったのに
七草がまた、要らぬ事を言い出した。
「チョン君!今から君のあだ名は…
[鍵っ子]に変わるからな!」
「なっ、何なんですか!
いきなり、そんなの嫌ですよ。」
「少しは、ペットのワンちゃんの気持ちを
実感してみるのもいいんじゃないか?
太郎からチョコピンに変えられた時の
彼の心情を少しは理解出来るだろうよ。」
「そんな〜」
続く




