表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短亀摩姫ちゃんの神髄  作者: 桂虫夜穴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/83

56 生徒会委員選挙演説


「なっ、何だ!あの格好は?

いつぞやの交通安全の法被(はっぴ)と垂れ幕じゃないか!

垂れ幕は、親父さんの祭り使用後ふんどしたぞ。

しかも三本にグレードアップしとるじゃないか!」


七海が壇上を指差して叫んだ。

七草は、ちっちゃな体にピッチピチの真っ赤な法被(はっぴ)を着て現れた。

背中の二本の垂れ幕は帯に挟んで

一本は右手で握っている。

頭には、長めの鉢巻。

肩から腰に斜めにかけた、たすきには

「風紀委員長立候補、春野七草」と

迷走した文字で書かれている。

その異様な、いで立ちに生徒達は沈黙し

体育館は静まりかえった。

その後、あちこちでボソボソと話し声が始まった。


「お祭りみたい。」とか「商店街の催し?」

「これでやるの?恥ずかしくないの?」


それを聞いていたヨッシーは

身体をこわばらせ縮こまってしまった。

真っ赤な顔をしてうつむいている。

我事の様に恥ずかしくなったのだ。

しかし、七草は、そんな事は、気にならない様で

垂れ幕の棒をまるで槍のように床に突き立てると

両脚を広げ仁王立ちした。


「皆さん!お気ですか?

わた、ワタ、わた、私は…

2年A組の、なな、ナナ、なな…

七草春野、で、です。」


平気だったのでは無く

生徒達の陰口など耳にする余裕が

全くなかっただけの様だ。


「ナクサっ!もうっ!駄目だ!終わったぁ。

バクを起こしたAIみたいになっとる。

しかも自分の名前、おかしくなっとるぞ。

アンタは、外人さんか!逆だろ!」


「こっ、この度は、

わっ、私の選挙演説にぃ

おっ、お集まり頂きあ〜りがとうございますぅ。」


「アンタだけの為に集まったんじゃないよ!

もう、しっかりしなよ。」


ヨッシーは、我慢出来ず応援の声をかけた。


「ナクサ!落ち着け!

アンタなら出来る!」


ヨッシーが笑顔で手を振っている。

部員達の応援する顔も見えて

七草は、落ち着きを取り戻しマイクを口にむけた。


「ヨッシー!みんなぁ!ありがとう!

ヨーシッ! 仕切り直しだっ!

皆さーん!

私が当選すれば、おいしい事が待ってるよ。

もう、校則なんか無くしちゃうからね。

学食もタダにしちゃうよ。食べ放題だよ。

ビッフェスタイルに変えちゃうよ!

男女交際もOKにしちゃうよ。

もうコソコン隠れて付き合わなくていいからね。

後、園芸部長の

握手会の参加の権利を与えちゃうよ。

票をまとめてくれた生徒には

部長のハグも付いてくるよ。

楽しみにしてくれーっ!」


ワーッ!男子限定の声が上がった。


「では、これで私の選挙演説を終わります。」


そうお辞儀をすると突然壇場で2回ターンした。

皆、何が起きたのか一瞬、理解出来なかった。

選挙演説とダンスのターンのような動きが

余りにも不釣り合いだったからだ。

高速ターンの後、身体はピタッと止まり静止した。

垂れ幕だけが、揺れている。

その動きが止まると突然音楽が流れ出した。

マイケルジャクソンのビリージーンだ。

曲に合わせてまた高速ターンを

今度は、3回転した後、横向きに静止し

後方に歩き始めた。ムーンウォークだ。

完璧なパフォーマンスのまま脇に消えて行った。

度肝を抜かれ静まりかえっていた体育館に

生徒達の歓声が一気に響き渡った。

しかしヨッシーは、頭を抱え込んでうつむいた。


「何であんな発想しか出来ないんだ。

嘘八百並べて、出来もしない事を…

しかし何なんだ⁉︎ あのムーンウォークは!

完璧過ぎるじゃないか!

私だって、あそこまで出来ないよ。

一瞬マイケルジャクソンに見えたんだよ。

あんな変な格好なのに。

こっちの頭がおかしくなったみたいだ。

それ程の完成度だった。」


ヨッシーは我慢出来ず席を立つと

壇場の控え室の方に向かった。

七草が椅子に座り

はっぴを脱いでいるところだった。

駆け寄ると七草がヨッシーの方を向いて言った。


「どうだった?」


「アンタ、やったばバカだねぇ!

底なしの馬鹿だよ。

でもさぁ、バカおもしろかったよ。

ハハハツ!」


「そうだろ〜〜!ヒッヒッヒッ!」


七草は、薄気味悪い笑いで返した。





「七草さん!どう言う事ですか⁉︎

握手会とかハグとか私は、何も聞いてませんよ。

そもそもそんな事、校内で許可されませんよ。」


七草が垂れ幕や、はっぴを部室に片付け

体育館に戻ってくると部長が待っていた。

腕を組み不満をぶちまけた。

七草は、それに反論した。


「キスなら校内でしてもいいのか?

まぁ、アンタらのキスは

口の中の口内だろうけどね!」


「えっ!そっ、そんな事、今は、していません!」


「前は、やってたんだ?

まあ、それは、いいとして

部長こそサプライズか何か知らんけど

私達に何もお知らせ無しってのは

どんなもんかね?

これは、重要問題だよ。

情頼関係を失墜させる行動だよ!」


「それに関しては、申し訳ありませんでした。

急に思い立ったものですから

つい言いそびれてしまいました。」


「だから、その、ついは、もういいんだよ。

最近、味をしめて、わざと言ってるだろ?」


「そんな事ないですよ。

ただ今後、園芸部が活動していく事において

七草さんが風紀委員長

私が生徒会長となれば色々有利になる事が

期待出来ると思ったんです。

七草さんありきですよ。

それがなければ、こんな事は

思い立ちませんでしたよ。」


「まあ、そうだな。

いっそ、みんな立候補すれば良かったのにな。

ハハハッ!そうだヨッシーは、どこに行った?

途中でいなくなったけど。」


「あっ!七草さん!あちらっ!」


部長が壇場を真っ直ぐに指差した。


「えー、この度

美化委員長に立候補候補致しました。

早乙女好子です。」


「えっ一一っ⁉︎ 」


七草は、目玉が飛び出るくらいビックリした。

長身のスーパーモデル級の美少女が

まさにモデルがランウェイを闊歩(かっぽ)するように現れ

センターで立ち止まると

スッと立ち、演説を始めたのだ。

女子達の歓声が上がっている。

こちらは、女の娘ウケが良いようだ。

そこが部長とは違っていた。

部長の場合は、あまりの男子ウケの良さに

少なからず反感を持つ女子が存在したからだ。

しかし、ヨッシーはストレートに

女子から羨望の眼差し憧れの存在として

観られていた。


「美化委員長!

これ程、私に似合った委員がありましょうか?

この美の化身の私が美化委員長にならなくて

いったい誰がなると言うのでしょう?

それを皆さんに問いたい!

私に清き一票を美しき一票を授け給え。

アーメン!」


七草は苦々しい顔でそれを見ていた。


「アーメン。…って何だ?ヨッシー!

キリスト教じゃないだろ!

それに、出る気ないって言ってたぞ。

ふかしやがったな。

しかも、また、アレ着てきたのか!

私の事をとやかく言えんぞ!

よく脇で誰も止めなかったな。

まあ、ビビって誰も制止出来なかったか!」


ヨッシーは、去年演劇で着た銀色のコスチュームを

交通安全の呼びかけの為にパワーアップしていた。

それをまた着てきたのだ。

それは、ピタリとヨッシーの身体にフィットして

彼女の豊満な胸やお尻。

締まったウエストや筋肉までも

余す事なく披露していた。

それは男子達のエロ目線を

充分に満足させるものだった。

 

演説が終わりマイクをスタンドに戻すと

ヨッシーは両手を広げ天井を仰いだ。

すると突然、映画「未知との遭遇」の

テーマのメロディが鳴り始めた。

その直後、生徒達の悲鳴が上がった。

ヨッシーの全身が青く光輝き点滅し始めたのだ。

銀色の衣装が光を乱反射して

さらに、その輝きを増幅させている。

体育館の中に驚きとも恐怖とも思える

歓声が上がった。

手を合わせ合掌している生徒もいる。

女神が、降臨していた。

彼女は、壇場から全体を見渡すと満足気に微笑むと

脇に向かって静かに歩き始めた。

歓声が上がっている。泣いている女子もいる。

宝塚歌劇でも観たような気になったのだろうか?

現生徒会長が制すまで、その熱狂と動揺は続いた。


「やらかしてくれたな。

揃いも揃ってアンタ達は、私に内緒で!

ヨッシーは、場合によっては

親友の権利を剥奪せねばならんな!」


七草は、不満を口にした。


演説は、次々進んだ。


「皆さん、こんにちは。

会計委員に立候補しました。夏樹七海です。」


「はぁーっ!そう言う事か

七海が何だかソワソワしていた訳だ。

アイツは、態度に出るからな。

しかし、アイツは、なんのインパクトも持たんぞ。

あんなので当選するつもりなのか?」


「生徒会ですからね。

ショーをやってる訳ではないので

派手なパフォーマンスより

誠実で堅実である事を

アピールする事の方が大事なんです。

会計委員は、生徒会の予算を扱うのですから

そこが一番大事なんですよ。

その点は、七海君は、適任でしょ。

だから私が無理を言って

立候補をお願いしたんです。」


「部長!アンタッ!

生徒会の会計予算まで

その手に握るつもりなのか!

七海が会計となればアンタの思い通りだ。

相変わらず抜け目ないね。恐ろしい奴だよ。

アンタは..」


「そんな事ありませんよ。ウフフッ!

これも学園の為、園芸部の為です。」


「学園じゃない!学校だ!」


「あら、そうでしたか! 」


「そうだっ!」



続く



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ