4 短亀うどん。うんめぇーっ!最高ーっ!
園芸部一行が短亀うどんに到着した。築百年の古民家をリノベーションした店舗は、モミの木や、桜、紅葉などの大木がしげり、季節を感じられ独特な趣きをかもし出していた。
一行は、短亀ちゃんの後に続き、店内に、入っていった。天井は、吹き抜けで大きな梁が剥き出しになり、屋根の茅葺きを見る事が出来た。
短亀ちゃんは何の迷いもなく一番奥の座敷に向かって行った。一行は、ゾロゾロとその後を追った。事前に連絡して、その場所を開けておいたのだ。気の利く娘だこと。
「皆さん、遠慮なくお好きなものを注文してください。
私は、ちょっと厨房の方に顔を出して来ますね。」
そう言うと、短亀ちゃんは、店員さんに声を掛けながら、奥に消えていった。
「凄いな!短亀ちゃんって。
一見おとなしくて引っ込み思案みたいに見えるけど。
メチャメチャしっかりしてるよな。」
七海が感心してそう言うと七草も同調した。
「ああ、そうだな。
何だか、若女将みたいだもんな。」
「ハッキリ、正直に話すしな!」
ヨッシーも同感のようだ。
「正直過ぎて、グサッて、くる事もあるけど
間違った事は、言って無いんだよな。
でも、敵を作り易いタイプかもな!」
七草も七海も真剣に語った。
「でも、本人は、それを意に返してない。
気にして無い。天真爛漫って事なのか?」
「そうかもな。」
「おっ!来たぞ!うまそうだ。」
銘々の前に頼んだものが配膳された。短亀ちゃんも
うどんを運んできた。本当に働き者だよ。良い娘だ!
「いただきまーす!」
みんな手を合わせ食べ始めた。
「ナクサ!アンタ!また、やったね!」
「なんだぁ?いきなりい。」
七草は口に大海老の天麩羅を咥えたまま応えた。
「それだよ!今咥えてるそれだよ!
アンタ遠慮ってものが無いのかい?
いくら遠慮なくって言われても、
大海老天二本は、ないだろう!
一本でも気が引けるのに!」
「なっ、何だよ!
素直にご馳走に、なってるだけだぞ!
それなら、部長は、どうするんだ?
黒毛和牛肉うどんだぞ!
私より遥かに高いヤツ食ってるぞ!」
「ウッ⁉︎ ズズッ!ゲホッ!」
部長は、丁度、うどんをすすっている時だった。口から麺がゾロリと垂れている状態で突然、ふられてビックリして吹き出した。
「千晴...。大丈夫か?」
そう言いながら、七海がおしぼりを、手渡した。部長は、口を拭きなが弁解した。
「ケホッケホッ!えっ⁉︎ まずかったのでしょうか?
私は、こう言うお店初めてでしたから
システムがよくわからなくて…。
いつも食べてるものを
トッピングしたのですけど...。」
「システムって言う程のもんじゃないよ。
それに、普通にいつも食ってんだ。高級和牛を….。
私達は、そうしょっちゅうは、食べれないよ。
部長の、こう言う店も、初めてって
なんかやっぱ世離れしてるなぁ。」
七草のツッコミに部長が応えた。
「あっ、そんな事は、無いと思いますけど。
お蕎麦屋さんは、行った事ありますよ。」
ヨッシーも参戦。
「ああ。あれだろ十割蕎麦とか高級なヤツ!
常連さんのみ。一元さんお断りみたいな。」
七海の感想。
「京都の料亭みたいだな。」
「まあ、いいんじゃないの。
こうやって庶民の食生活に触れてみるのも。」
七草が、嫌味な言い方をした。
「またぁ、そのトゲのある言いかた。
やめて下さい。」
「そうだな!せっかく美味しいものを
ご馳走してもらってるんだ。
短亀ちゃんの為にも美味しく楽しく頂こう!」
七海がみんなを託したが、七草が、こっちも、ツッコンだ。
「七海。アンタさぁ。偉そうにまとめてるけど。
でっかい牡蠣三つも乗せてんじゃん!
この強欲深野郎がぁ!」
「ええ!俺だけか!チョン君も同じヤツだぞ!」
「ハハハッ!だってこのメニューの写真
美味しそうだったから。」
「何い⁉︎ 結局、私だけか、奥ゆかしいのは…..
でも、キツネうどん好きだから良いよ..。」
そう言って、ヨッシーは、うつむいてしまった。
「ヨッシー!ヨッシー!」
声がした。顔を上げるといつの間にか、どんぶりに大海老が乗っていた。その大海老と眼があった。
「わっ!?何だこれ?」
真前で七草がニヤニヤしている。
「ナクサ!アンタって、ヤツは!あっ、ありがとう!あー!頂きます!あっ、美味しい!
プリプリしてるよ!尻尾までいっちゃうよ!
サクサクがうれしいねー!最高ーっ!」
「ヨッシー!げんきんなヤツだな。うまいか?」
「そだな。うまいよーー!」
続く