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短亀摩姫ちゃんの神髄  作者: 桂虫夜穴


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34 角席と交渉術


朝の部室。


「おはよー!おっ!ヨッシー!

ちゃんと懺悔椅子に座っとるじゃないか?

そこでちゃんと反省するのだぞ!良いな!」


「ううっ!わかってるよ!

昨日の騒動は、全て私が、蒔いた種が原因だ。

みんな申し訳なかったよ。この通りだ。」


ヨッシーは、立ち上がって深々と頭を下げた。


「あのぅ、その椅子…

懺悔椅子って言う名前なんですか?」


短亀ちゃんの無邪気な質問だ。


「いや、その時々で、その名を変える

不思議な椅子なんじゃ!

ある時は、懺悔椅子。

またある時は、落ち込み椅子。

そしてまたある時は

燃え尽き症候群椅子と化すのだ!」


「今、思い付いただけだろ!」


「そうだ!しかし、あの日から始まったんだぞ!

七海…アンタが、部長に演劇の事で盾付いて

キツーいお仕置きを受けただろ。

それでアソコに座り込んだんだよ!

それが全ての始まりだ。

次がヨッシーだ。その時も部長の関節技に

完全ロックされて身動きひとつ出来なかった。

それでヨッシーのプライドが

ズタズタに引き裂かれたんだよ。

それで、そこに座り込んだんだ。

だから、この場所から…あの時から…

この椅子の輝かしき歴史は始まったんだよ。」


「どこが輝きだ!

真っ暗闇でしかねーよ!この椅子は!」


ヨッシーの反論に対して七草が穏やかに諭した。


「いや!その椅子は、癒しの椅子でもあるぞ!

そうして腰掛け、みんな傷付いた身体と心を

鳥が、羽を休めるように癒したじゃないか!

今も、そうだろ。ヨッシー!」


「まぁ、確かにこの角椅子は

壁に囲まれて何かに守られてる。

安心感があるんだよな。

それで弱った自分を休ませる

絶好の場所になってるのかもしれないな。」


ヨッシーが納得した

その言葉に短亀ちゃんがハッとした顔をした。


「私の教室の椅子も、角にありますよ。」


「ええ⁉︎ それは、物理的に無理じゃないか?

教室で…

角を取れる可能性のある唯一の場所となったら

窓際の最後尾だろ。

そこでも、後ろは、通路になっているから

多少の開きがある。

その間隔を埋めない限り、角席とは、いえないぞ。」


七海の疑問に短亀ちゃんの瞳が輝いた。


「そこなんですよ。

その困難をかいくぐって

角席をゲットしてるんです。」


「よくわからんなぁ。

どんな事をしてるんだ?」


「はい!もちろん始めは

普通にみんなと同じ並びです。

でも授業が始まると

ジワジワ、バックして行くんです。」


「そんな事したら

すぐ隣りの子や先生にバレるだろ!」


「まさか、そんな事、誰も気にしませんよ。

みんな授業の方に集中してるんですから…

それに本当に極々、少しずつ後ろに下がるんです。

物音も立てない様に気をつけてますから

誰も気にも止めません。そうですね。

日本列島に太平洋プレートとフィリピンプレートが

沈み込むくらいのスピードですよ。」


「ますますわからん!

遅いのか早いのかさえ感覚的にもわからんよ!」


七海は納得が、いかないようだ。

ヨッシーも同じ様な思いだ。


「しかし、授業が終わると

さすがにバレてしまうだろ?」


「初めは、気が付いた先生に注意されてましたけど

先生も根負けしたようです。

諦めたのかもですけど……

「別に授業妨害をしている訳でも無いしな。」

…との見解で事態は、収束しました。」


「何か大問題が起きたみたいな言い方だな。

それにしても、そんな面倒な事を

毎日やってるのか?」


「私にとっては、一大事ですよ。

居心地の良い場所を確保する為の

戦いの様なものです」


「クラスのみんなからは

何かクレームは、ないのか?」


七海は自身を何とか納得させようと質問を続けた。


「それは、ないですけど…

席替えの度に、その席になった生徒との

交渉が待ってるんですよ。

自分が、たまたま、その席になったのは

初めの頃の一度だけでしたから

その為の交渉が中々大変で....」


「えっ!それ、どうやってんだ?

面白そうだな。」


今度は七草が瞳を輝かせ興味を示した。


「まあ、やっぱりあれですよ。

うちの、うどんをご馳走するとか…

その生徒の友達も含めて取り込む訳です。

外堀から埋めると言う言い方が、ありますけど

外堀も内堀も一緒くたに埋めてしまうんですよ。

放課後なんかに、うどん屋に誘ったら

小腹が空いてますからね。

すぐに着いてきますよ。

ご馳走した後に角席交換話を持ちかける訳です。

うどんを食べちゃった後ですからね。

断る勇気のある人は、いないです。

それに、そこまで、あの角席に固執しているのは

私くらいですから…

すぐに明け渡してくれますよ。」


「怖一わっ!こえーよ!短亀ちゃん!

アンタなんちゅう策士なんだい?

ビックリだよ!」


「いえ!私じゃないですよ!

アドバイスしてくれたのは、チョン君ですよ!」


「えっ!また、とばっちりだ!」


「何が、とばっちりだい!

実行犯は短亀ちゃんかもしれないが

首謀者で主犯格はチョン君!アンタじゃないかっ!

幼気(いたいけ)な少女達に詐欺まがいの行為をして

大事な角席をぶん取るとは

まるで地面師じゃないか!不届き千万だ!」


「もう、やめて下さいよ。

犯罪者みたいな言い方!

彼女達は、大した興味もない角席を

美味しいうどんと交換出来たんですよ。

これは、列記とした物々交換です。

その彼女の友達なんか棚ボタじゃないですか!

win-winですよ。

お互い得したんですから…」


「まっ、そう言う事にしとくか!」


「実際、そうですよ!」


「そだな」



続く

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