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短亀摩姫ちゃんの神髄  作者: 桂虫夜穴


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29 トラウマとカレー


「これだったか!

本当のトラウマの原因は…」


七草も七海も、確信を得た。


「胃腸は、治ったが再発の恐怖で

カレーが食べれなくなった。

そして大好きなママの手作りカレーも

食べる事が出来なくなった。

その無念さとママに対する申し訳なさが

複雑に絡み合ってカレーに対するトラウマを

更に、こじらせていたんだな。」


短亀ちゃんが散々泣きはらして

部長の胸から離れた。


「あっ!すいません!

エプロン、そんなに濡らしてしまって....

部長さんの後ろ姿を見ていたら

小さい頃の事を思い出してしまって….

母の台所姿を思い出したんです。」


「部長、そんなにオバンくさいか?」


「ナクサ!黙ってろ!

話の大事なところだ!

短亀ちゃん。続けて!」


「はい。

幼い頃は普通に母が食事の用意をしてくれて 

みんな揃って食卓を囲んでいました。

それが、うどん屋の経営を始めてからは

みんな忙しくなって

母も経営に携わっていましたから

中々、食事の用意も出来なくなって

その内

私もお店を手伝うようになったものですから

賄いで済ます様になったんです。

おかげで、いよいよ母の手料理を

食べる機会が無くなっていって...

確かにお店のカレーうどんって

凄く美味しかったんですよ。

本格スパイスを多用していて

チェーン展開してからは、開発部も発足しましたし

私も、その味にハマってしまったんです。

ただ、それだけにしておけは良かったのに

独自スパイスを使用する様になってから

事態が悪い方へ傾き始めたんです。」


「独自スパイスが毒入りスパイスに

なってしまったんだな!」


「ナクサ!口を挟むなっていっただろ!」


「いえ!七草さんの言うとおりなんです。

ネットで購入したスパイスの中に

中毒性や依存性のあるハーブが紛れていたんです。

初めは、週に一度程、カレーうどんを

賄いで食べていたのですが…

そのスパイスをかけてから

だんだん、その周期が短くなっていって…

とうとう毎日食べる様になってしまったんです。

周りの店員さん達が心配し始めて

両親に連絡してくれました。

自分では

もう到底やめられなくなっていましたから…

まるで麻薬患者みたいになっていたんです。

賄いカレーうどんを食べ続ける事を

心配してくれる店員さんに

暴言を吐いた事もありました。

全てが狂っていたんです。

そして両親に知れた頃には

胃腸は、既にボロボロになっていました。

それでも、やめられなかったんです。

痛みを堪えて食べ続けたんです。

最後は、食べては、吐き、食べては吐きと

言う事を繰り返していました。

実は、診てもらったのは

胃腸内科だけでは、ないんです。

その病院には、診療内科もあったので

精神的な面も一緒に観てもらいました。

おかげさまで今はこうして元気にしています。

カレーが食べれないと言う後遺症は

残りましたけど…

それ以外は、何も不自由は、無いので...

ないので..うううっ…

ただ、母のカレーが食べれ無くなって

それが、悲しくて…

みんな母のカレーが大好きなんです。

今日は、カレーだよって言う日は

朝からワクワクして夕食が待ち遠しくて....

それなのに今は、私の事を気遣って

お家でカレーを作る事はなくなったんです。

ウウッ…」


短亀ちゃんは

柔らかい体を曲げ膝を抱えて泣いたが

しばらくすると顔を上げて笑顔を見せた。


「でも、今日のカレーは

あの賄い毒入りうどんとは違うなと思いました。」


「短亀ちゃん!

アンタんちの、うどんは毒入りなのかい?」


「まっ、間違えました。

私が入れた激辛スパイスが毒入りでした。

すいません!

それで、このカレーの香りが何だか懐かしくて...

甘くて素朴な香り。

母の作ってくれたカレーを

思い出させてくれたんです。

凄く今このカレーを食べたくて

気持ちがワクワクしています。

あの頃と同じ気持ちです。」


「そっかあ!何か、いい兆しだな。

本当に食べれたらいいな!」


ヨッシーが笑顔でそう言った。

本当にそれを強く願っていた。


部長が白い皿にカレーを装うと

ヨッシーがみんなに配膳した。

りんごと蜂蜜プラス高級マンゴーの

甘い香りがしている。...筈だ。

湯気が、ほのかに立ち食欲を掻き立てた。


「じゃあ。皆さん行き届きましたね。

まぁまぁの出来だと思いますけど…

何しろ初めて入れた食材が色々入ってますから

好みは、分かれるかも知れませけど…

でも、まずは、短亀ちゃんに一口…

味見して貰おうかな?」


「はっ、はい!いただきまーす!」


香りは、全く気にならない様だ。

大きく鼻で息をして香りを楽しんでいる。


「大丈夫です!

いえ!むしろ好きです!

この香り!」


そう言いながらスプーンをカレーに差し込み。

一口、口に含んだ。

それをみんな固唾を飲み、見つめている。

すると短亀ちゃんの顔が歪んできた。

また、その瞳から涙が、溢れだした。

それを見た七草が駆け寄って

両手の平を短亀ちゃんの口元にかざした。


「短亀!出せ!吐けっ!遠慮するな!

無理して食うな!ここに、出せっ!」


短亀ちゃんの顔が泣き笑いに変わった。

そしてゴクリとカレーを飲み込んだ。


「おいしい..です。

…凄く...おいしいです。

ありがとうございます。」


「何だよ…..気持ち悪くなったのかと思ったよ。

でも、おいしかったんだな!

ああ...良かった。」


七草は、気が抜けて、また椅子に座り込んだ。


「本当だ!良かった。おめでとう!

何だか、そう言いたくなったよ!」


七海も、うれしくて思わず祝福の言葉を口にした。


「ハハハッ!それにしても、ナクサ!

何、慌てて飛び出してんだよ。

そんなモン嫌なら皿に吐き出せばイイ事だろ!」


「そんな事、短亀ちゃんが出来る訳ねーだろ!

部長が精魂込めて作ってくれたカレーに

自分が噛み砕いてグチャグチャなったものを

吐き出せるか!」


「そうか。そうだな。

それは、そうだ!

でもそれを咄嗟(とっさ)に考えて突っ込んだのか?」


七海は七草の行動に感心していた。


「ヘヘッ!いや、それは今思いついた。」


「なっ、何だぁ..。でまかせか!

……と言う事は…

何も考えず、がむしゃらに突っ込んだのか?

まぁ、その方が七草らしいけどな!

ハハハッ!

まあ、結果オーライだ。

さあ、冷める前にみんな食べ…..

えっ⁉︎ おい!何で、みんなもう食べてんだ!

あっ!千晴まで!」


七海は置き去りにされた気がして

慌ててスプーンを手にした。

そこに七草がツッコんだ。


「アンタのウンチクがまた始まりそうだったから

お先に頂いたよ!

ホラッ!七海!

グズグズ言ってないで、アンタも早く食べなよ。

メチャクチャうまいから!」


「わかったよ!いっただきまーす。

おっ!本当に、うまいなーっ!

以外と全部の食材が馴染んでいるところが

驚きだな。」


「チキンと魚介系も入ってるからな。

うまいに決まっている。」


「チキンは、わかるが魚介系が入ってたか?」


「カッパえびせんとスルメだろ!

立派な魚介だ。」


「お菓子や、つまみとしては

立派すぎる程立派だが

カレーの具材としては

立派か、どうかは、甚だ疑問だ。

しかし、決して邪魔は、していないな。」


「それが隠し味ってもんだ!

自己主張せずメインの食材を引き立てる。

AKBでたとえるとすれば....」


「だから、そこで例えるなって前も言っただろ!」


ヨッシーのツッコミが入った。


「そうだな、彼女達は

後ろの方も自己主張が強かったからな!」

 

「ナクサ!アンタ、本当にさっしーに消されるよ!」


「オー怖!おかわり!」


「何!もう食い終わったのか!」


ヨッシーの言葉に部長が答えた。


「七草さんのは、少ししか

よそってなかったんですよ。

元々、少食ですし納豆にどう反応するか

わからなかったので用心しました。

でも大丈夫だったようですね。

ペロッといっちゃいましたね。」


「ああ!メッチャうまいよ!」


「皆さんもドンドンお代わりして下さいね。

たくさん作ってありますから…

短亀ちゃんは…

あまり食べ過ぎない方がイイかな!

少しずつ慣らしていきましょう。

リハビリ中みたいな感じで...ねっ!」


「はい!そうですね!」




続く

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