27 カレーとトラとウマ
早朝の部室
「ナクサ!アンタ朝から
激辛カレーパン何か食って胃袋、大丈夫か?」
「だいのじょーぶだ!」
「何だ!もちのろん!みたいな嫌な言い方だな!」
「大好きな、おにぎりじゃないのか?」
「たまには、浮気したくなるのも乙女心だ。」
「乙女の内から浮気などしたらいかんだろ!」
「恋愛関係みたいな深刻な言い方するなよ!
カレーは、おにぎりの次に私の大好物なんだよ!」
「おにぎりの次は
うどんじゃなかったのか?」
「だからぁ…
うどんは、おにぎりと対を成すものだ。
セットだ。ペアだ。カップルだ。
一緒に食す相乗効果により旨さが倍増するのだ。
しかし、うどん単独となると
カレーに二位の座を明け渡してしまうのだな。」
「じゃあ、カレーうどんは、どうなるんだ?」
「甘いな。七海!
それで私に難問を突き付けたつもりか!
よく聞け!カレーうどんは
うどんであって、うどんでは、ない。
分類的には、カレーに属するのだ!」
「たいそうな事を言って
あくまでもオマエの見解だろ?」
「そうだ!よそで言うと恥をかくぞ!」
「そんな事をしたり顔で言うな!」
「私の判断基準では、カレーと名の付くものは
全てカレーだ!」
「極端過ぎるだろ!」
七海が口を挟んだ。
「じゃあ、七海は、カレーが嫌いなのか?」
「いや!嫌いな訳ないだろ!
どうして、そんな質問に行き着くんだ。
むしろ大好きだ。
カレーに唐揚げにハンバーグ!
男子の好きな家庭料理のトップ3に必ず入るだろ!
そもそもカレーが嫌いなヤツなんているのか?
俺の周りじゃ聞いた事ないぞ!」
「当たり前だ!
ザ・カレー様を食せぬ者など
この世に存在する訳がない。
そんなヤツは、存在価値すらないわ!」
「あっ、あのう..わっ、私…
食べ..食べれないんです..。カレー…」
一同の視線が一斉に短亀ちゃんに集中した。
そして七草の驚きの声。
「なあにぃ~~⁉︎ 」
「マジか‼︎ 短亀ちゃん!」
ヨッシーも七海も少々驚いた。
「いるんだ!やっぱり!
いや!当たり前だ。
食の好みなんて千差万別だ!」
その言葉に短亀ちゃんが答えた。
「いえ!嫌いじゃないんです。
むしろ大好きです。
…と言うか、大好きでした。」
「あら、過去形になっちゃったね!」
「はい。以前は、普通に皆さんと同じで
幼い頃から母の作ってくれるカレーが大好きで
外食でもよくカレーを食べてました。
うどん屋の経営が、始まって
お手伝いを始めてからも
賄いはカレーうどんばかり食べていました。
その内、辛さが物足りなくなり
自分専用のスパイスを持ち歩く様になり
家でも、外食でも、うどん屋でも
そのスパイスをかける様になったんです。
それがドンドンエスカレートして
激辛に行き着いて
最後は、胃を壊してしまったんです。
その当時は、辛かったです。
一日中お腹が、痛くて
病院でお薬を頂いたんですけど。
完治するまでに、かなり長い時間が掛かりました。
それからは、トラウマの様になって
カレーの香りがするだけでお腹が痛くなるんです。」
「それでさっきから
そこの角の椅子に座っていたのか?
ナクサのカレーパンの香りがしたんだな!」
「えっ!これか⁉︎ 」
「短亀ちゃん!
そこは、落ち込んだり
燃え尽きた者が座る場所だぞ!
大丈夫か?」
ヨッシーの言葉に短亀ちゃんが力無く答えた。
「そっ、そうなんですか?
まあ、似たようななものですね。
カレーを食べ尽くして燃え尽きた者としては...」
「こりゃ、重症だ!」
「そだなぁ…」
「しかし、好きな物を食べれないのは可哀想だな!」
七海が同情した。
「でも、ヒトの一生分は
食べてるかもなので…大丈夫ですよ。
未練は、無いです。」
「いよいよ恋愛話みたいになってきたな!」
七草の言葉に短亀ちゃんが反応した。
「あっ!すいません。
おかしな言い方して...」
「いやいや。それ程大好きだったって事だな。
これは、どうにかして
もう一度食べれるようにならんもんかね?
なぁ、七海くん!」
七草に突然振られて七海はビックリした。
「えっ!俺っ⁉︎ そんなのわかる訳ないだろ。
しかもカレーは、食べられなくても
胃の調子は、いいんだろ!
素人療法でまた胃痛が再発したら
それこそ元も子もないぞ!」
「ウーン…面白くねぇヤツだな。
そんな事は、みんなわかってんだよ。
それを乗り越えて克服できる方法はないかって
聞いてんだろ!
まぁ、しょうがねーか!
やっぱり、ここは天才にすがるしかないな!
チョン君行ってみよう!」
「あの、すいません。
料理の事は、全然わからないし
自分で天才とは、思ってないですから....」
「さすが脳ある亀は手足を隠すだな!」
「だから、それ違うって、この間言ったぞ!」
「じゃあ、ヨッシーか…部長!
何かないか?」
「これは、難問だよ!」
「そうですね!
一筋縄では、行きそうにないですね。
ただ、トラウマですよね。
それを取り除いてやって
その後は、普通の辛さのカレーを
食べれば胃痛になる事もないんですよね。
ただ、そのトラウマの解消法が問題ですよね!」
「トラとウマか...」
「ナクサ!そこで、分けんでいいから!」
「タイガー&ホースか!」
「もう、イイって、言ってんだろ!」
「そだな!ホースと共にあらん!」
「フォース、だぁ、ろぉ、がぁ!」
「ヨッ…ヨッシー…怖っ…」
続く




