13 恐るべし!チョン君の正体
部室が騒然となった。
想定内の未来人を…
遥かに超える応えが返ってきたのだ。
七草は、椅子から転げ落ちていた。
あるはずがない二つのワードが
いきなり耳に飛び込んできたのだ。
それも続け様に!
北斗そして宗像。
七草達には、深く心に刻まれた言葉…
名前だった。
「む、なか、た……あの、宗像大社か?」
七草が絞り出す様な声で聞いたが
チョン君はごく普通に答えた。
「そうです。あやかりました。
両親が宗像大社の、ゆかりに深く感銘して
その名をお借りしたと言う事です。
恐れ多いかとも思ったそうですが
その名に、恥ない様に
育てようと誓って、命名したそうです。
僕自身は、名前負けしてるかなとは
思ってるんですけどね。
この名前をつけてくれた両親に
恥をかかせる様な真似だけは
しないようにと心掛けては、います。」
「繋がったな、全て…」
「ああ。そうらしいな。」
ヨッシーと七海の言葉に七草が答えた。
「コイツが七星の遺伝子提供者だ。
おそらくな…」
「しかし、また何故この高校にきたんだ。
偶然にしちゃあ、なぁ…」
ヨッシーの問いに七草が熱く答えた。
「偶然なんかじゃないよ!必然だよ。
私達と同じさ。意味が合ってここにいるんだよ。
チョン君も...」
「ハハハッ!全く話について行けてないですけど!」
チョン君の言葉に七草が答えた。
「いいんだよ!
今は、まだそうやって
無邪気にしていてくれてた方がいい。
まだ、本筋に入って来なくていい。
いずれアンタが動かすんだ。
この大きな流れをね!
アンタが変えてしまうんだから
今は、いいんだよ。それで...」
「ますます、わかりませんよ。」
「だから、それでいいんだよ。
まっ、困った事とか悩み事があったら…
聞いてやるよ。
解決出来るか、どうかは話の内容次第だがな!」
「あっ、それなら一つだけあります!」
「いっ、いきなりかーい!
まぁいいや、何だ?
言ってみなさーい!」
「それが…ドッペルゲンガーに会ったんですよ!」
「何一一っ⁉︎ 」
「だから….ドッペルゲンガーですよ。
自分に非常に似た。
まるで分身の様な人物と会うと
寿命が、縮まると言うあの都市伝説的な…
会ったんですよ!
まだ中3の頃でしたけど…
この短い人生から、どれほどの寿命が縮まるのか?
考えただけでも恐ろしいですよ。」
「そのソックリさんとは接触したのか?」
「何だ!その言い方?」
「ドッペルゲンガーとは、言いたくないよ。
ああ、言ってるはしから、さぶさぶが...
何だか、外国の幽霊みたいで、嫌なんだよ。」
「ハハハツ、七草さんって、怖がりなんですね。
接触は、してないです。
眼が合った瞬間に向こうも慌てたみたいで
ハッとした表情をして
直ぐに立ち去ってしまいました。
僕もビックリして追いかける事は
しなかったんですけど…
それから、何だか、段々、怖くなってきて
そんな事のたぐいは、余り信じない方ですけど…
あまりにも自分に似ていたので
気になっているんです。」
「七星のヤツ!やらかしてくれとるなぁ!
見られとるじゃないか!
ダーリンは、詰めが甘いと言うか
たまに、そう言う抜けとたところがあるんだよ!
まあ、それが、かわいいっちゃぁ
可愛いところでもあるんだけどな。」
「ナクサ!そのニヤケ顔、今いらんから!」
「おっと、失礼!心配するな。
それは、ただの都市伝説だ!
世の中には、三人ソックリさんがいると
言う事だから、その内の一人に会ったって事だ。
向こうも突然の事でビックリして
逃げ出したんじゃないのか!それだけだろ。
しかし、後一人いるからな
その覚悟は、しておいた方がいいぞ!」
「そっ、そうですよね。
そんな早死に、なんかしないですよね。
あー、良かった。相談して良かったです。」
チョン君の安心顔に七海も微笑んだ。
「大丈夫だって…
誰かに断言してもらいたかったんだな。
掴みどころの無いものに
いきなり首元を掴まれて息苦しかったんだな。
誰かに振り解いて欲しかったんだな。」
「私も、気になってる事が、あるんだけどな…」
「何だ、ヨッシー!
今の内に、みんなも吐き出しとけよ!
疑問とか不満とか…」
「何で、チョン君なんだ?
名前のどこにも
チョンに関わるものなんて無さそうだが...」
それには短亀ちゃんが答えた。
「あっ!それは、私が、勝手につけたんです。
チョン君が漫画の登場人物に似てたから
そう呼ぶようになったんです!」
「鐘宮那月の躁鬱か!」
「そうです!ご存じですか?」
「アニメか、漫画好きなら
知らんヤツは、おらんだろう!
私等のやった舞台も、それだったからな!」
「そうですよね!」
「それを承知なら質問するけど
短亀ちゃんの名前。
…まんまだよね。
あの漫画の登場人物「短亀摩姫」と…
一語一句変わらない。
自分で凄いと思わないかい?
私は、たまげたけどね。
口には、出さなかったけど…
ウチに帰ってから
また、コミックス読み直したよ。
それくらい、衝撃だったよ。
それにしては、短亀ちゃんが
それに触れないからウズウズしてたんだよ。
やっと言えたよ。
あー…スッキリした!」
「そうだったんですね。
申し訳ありませんでした。
私の方は、驚いたりする要素が
なかったものですから…
それに私の方は…
チョン君に余り公にしない様にと
口止めされてたものですから..」
「えっ?どう言う事?
話が、まだ、見えて無いけど?」
「はい!私がチョン君にお願いしたんです。」
「短亀!待てっ、その話は!」
「いえ!チョン君。ここに入部したからには
先輩達には、話しておきましょう。
初密は、守ってもらう事にして…
そうで無いと、失礼ですよ。
今は、それを話す絶好の機会ですよ。
これを逃す手は、ありません!」
「そうか...そうだな。
ただ秘密数守でお願いします。」
「ああ。わかったよ。
何かデカい話みたいだな。」
七海の言葉を受けチョン君が話し始めた。
「実は、[鐘宮那月の躁鬱]は
僕が描いた漫画なんです。」
"バタッ!"
七草に続き
今度はヨッシーが椅子ごと床に倒れた。
余程ショックだったのだろう。
白眼を剥いて口はポカーンと開いたままだ。
それを見た七草が慌ててヨッシーを抱き抱えた。
「ヨッシー!大丈夫か?しっかりしろっ!
みんな衝撃を受けたが、ヨッシーは、特別だな。
思い入れが、違うからな。
コミックス全巻、アニメのDVDも
全部持ってるからな。今日は、もうダメだな。
原作者と、こんな形で会うなんて
誰も予想出来なかった事だ。
無理もないよ。
これは、喜ぶべきか?悲しむべきか?
難問だな!」
「そうだな」
「…だな!」
続く




