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From: ゴミから始まる異世界生活 〜拾い集めて世界最強〜  作者: 水無月いい人
第一章 出会いと別れ『少年編』 
7/24

第6話:小さな体と大きな決意

お読みいただきありがとうございます!


本編の前に少しだけ。

更新の励みになりますので、ブクマや★★★★★をいただけると嬉しいです。


それでは、本編をお楽しみください。

 俺は、来た道を必死に駆け戻っていた。


 脳裏に焼き付いているのは、あの“異形”の姿。


 三つの目。裂けた顎。皮膚の下で蠢く筋肉。


 くそっ……あの野郎……!


 なぜ俺じゃなく、無関係なアレシアを──

 狙いがずれてんだろって? 違う。あいつはわかってやってる。

 目だけじゃない、頭も回る野郎だ……!


(待ってろ、アレシア……今すぐ行く)


 心の中で叫ぶ。

 足がもつれても、息が切れても、止まる理由なんてどこにもない。


 だからお願いだ。どうか──


 せめて、それまで生きていてくれ。


 ……必ず、俺が。


 そう言いかけたところで、俺の足は、不意に止まった。


(…………俺が行って、何ができるってんだ?)


 その問いが、背骨に突き刺さる。


 あの時の“奇跡”は、まぐれだ。

 俺が意図して出したわけでもなければ、狙って撃ち抜いたわけでもない。


 じゃあ今度も?

 またスキルの……こいつの奇跡を期待するのか?

 自分の無力を棚に上げて、都合よく世界が動いてくれるとでも?


「……次死んだら、今度こそ終わりなんだよな」


 口の中に、血の味がした気がした。

 あれは記憶か、現実か。


 前の人生は、ろくでもなかった。

 誰にも必要とされず、誰からも期待されず。

 ただ“呼吸”を繰り返して、死ぬのを待つだけの、ゴミみたいな日々。


 それでも今、ここにあるこの命は──


 どうしようもなかった俺に、与えられた“もう一度”の人生だ。


 誰がくれたかなんて知らない。

 でも、生きているのは事実だった。


(……なら、無駄にしちゃいけないはずだろ)


 そう、思った。はずだった。


 でも。


「……いいじゃねぇか。二度目の人生くらい、自分のために生きたって」


 アレシアは俺の母親じゃない。

 ただの“異世界の母役”。

 そもそも俺はまだ五歳のガキだ。

 子が親を守るなんて、本来はおかしい。

 だったら、アレシアが俺を守って死ぬのが筋……そうじゃないのか?


 ──そう思った時。


 また、あの記憶が。


『いいか、聡。親は子を守るもんだ』


 父の酒臭い声が、頭の奥から這い上がってくる。


『お前が閉じこもっても、俺が生きてる限り、死ぬまでお前を助ける』


 ──なんで、こんな時に。


『親孝行なんて考えるな。ただ、お前は自分の事だけを考えておけ。お前の人生はお前のものだ。でもな……一つだけ覚えとけ』


『親が死んだ時、子は必ず後悔する』


『俺がそうだった』


 もう、やめてくれ。

 聞きたくない。

 今さらそんな言葉、今の俺に突き刺してくるなよ、親父。


『いつかお前も親になったとき、分かる日が来る。だから……後悔だけはするな。俺の、息子』


 今思えばあの夜、酔っ払っていたはずの親父の手には、酒瓶がなかった。


 気づくには、あまりにも遅すぎた……。


「……アレシアは、母さんじゃない。ただの他人だって、そう言い訳してきたけどよ」


 俺は、誰かに聞かせるでもなく、ぽつりと呟いた。


「五年も、ずっと一人で俺を育ててくれてた」


 家事が完璧なわけでもない。

 料理だって、よく焦がす。

 でも、それでも。


 たった五年。

 だけど、その五年は……俺の前世の二十七年より、ずっと温かかった。


 彼女は……アレシアは正真正銘、俺の母親だ。


 理由は至ってシンプル。なぜこんな簡単なことに気付かなかったのか。

 自分が嫌になる。


 童貞だった俺が、若い女の乳見ても何も感じなかった理由?

 ……答えは、最初から決まってた。


「……俺は、アレシアを“母”として見てた。この世界に生まれてから、ずっと」


 それだけのことだった。


 でも、それがすべてだった。


 止まっていた足が、静かに、前へ進み始める。


 俺は──帰る。


 あの人のもと。母さんの元へ──。


 ---


「……ダストちゃん? どこに行ったの……?」


 夜の帳が村を包む中、アレシアは、不安そうに息子の名を呼び続けていた。


(夜は危ないって、何度も言ったのに……あの子ったら)


「ダストちゃーん! 返事してー!」


 声がかれるまで叫び続ける。


 その声に応える者は、いない。


(まさか、あの子……!)


 胸に染みついた嫌な予感を振り払うように、彼女は首を振る。


「違う……あの子は賢い子。そんな危ないことを──」


 その言葉が、途切れた。


 目の前に“それ”が現れたからだ。


 黒い影。

 重たく湿った足音。

 近づくたびに、巨体が闇の中からその姿を晒していく。


 そして──その特徴的なのは“目”。


 赤黒い血を流しながら、何かに貫かれていた。


 彼女は察した。その目を潰したのが誰かを。


「……ダストちゃん……どこにやったの……! 私のダストちゃんをどこに──」


 その声に、獣は答えない。

 ただ、喉を震わせ、不気味に笑う。


「グルルルル……ギャガガガ……ララァアアアアッ!」


「──おい化け物」


 声が重なった。


「何がそんなにおかしいんだよ」


 震える足を押さえ込みながら、俺は戻ってきた。


 息は荒く、体は重い。

 それでも──間に合った。


「くっそ……遅かったか」


 アレシアは、血を流し倒れていた。


「ダスト……ちゃん……逃げて……!」


 俺は、こいつを許さねぇ。


「逃げないよ。逃げられないんだ、()()()


 俺は、彼女を見て。


 そして、そいつを睨み据えた。


「……母さん。ここで終わらせるから、少し休んでて」


【ユニークスキル:廃棄収納(トラッシュボックス)が発動可能です】


 ……ああ、やっとその気になったか。

 スキルってのは気まぐれなのかね。……いいや、こいつはずっと俺を待っていた気がする。


 それに応えなかったのは、俺の方かもしれない。


 だったら──今応えてやる。


「おい、化け物。片付けてやるよ」


 今ここで終わらせる。


「スキル、廃棄収納(トラッシュボックス)発動」


 その瞬間、頭の奥に膨大な情報が流れ込んでくる。

 構造。応用。出力限界。変形。投擲。複合。


 ──まるで、生まれたときから知っていたかのような自然さ。


 歩くように。

 呼吸するように。

 俺は、それを“使えた”。


 拾い集めたガラクタを、手元に出現させる。


「逃げて! ダストちゃん、逃げてぇ!」


「逃げないよ。……ああ、逃げねぇとも」


 息を吐き、俺は叫んだ。


「はああああああああっ!!」


 俺はそのまま化け物へと突っ込む。

 このちっぽけな体で、全てが俺を上回る圧倒的な化け物へ。


「食らいやがれええええええっ!!」


 俺は化け物の股下を潜り抜け、錆びた刃で化け物の足元を斬る。


──が。


「……流石にダメか」


 異常なほどに硬い。それもあるが、何より錆びた刃なんて切れる訳がない。しかも俺が持っているのは折れたものだ。

 まさにゴミ。


 目の前の化け物は笑っていた。

 赤い液を垂らしながら、化け物は──嗤っていた。


(……マジかよ)


 火力が足りねぇ。

 小手先じゃ、どうにもならねぇってことかよ。


「だったら!」


 錆びた釘を取り出し、目を狙う。


「これならどうだッ!」


──弾かれた。


 固い。鉄の鎧みたいに。目以外、弱点なしってか。


「……そりゃ、二回目はねぇよな」


 咆哮。


「グアアアアアアアアアッ!!」


 俺は、化け物に背を向け走る。

 だが、今度は逃げの為じゃない。


 誘導だ。

 策は、すでにここに来る前から撒いてある。


 奴の足元に絡みついた“縄”。

 それは、かつて俺が拾った『折れた剣』だ。その柄に結わえつけた油を吸った布で繋ぎ合わせた縄。


 そして、その刃にも──たっぷりと油が付着した布を塗っておいた。


(……最後のピースも、もう拾ってある)


 それは、空き瓶だ。


 アレシアの失敗作。カビだらけのジャム瓶。

 火種は、アレシアが野菜を直火で焦がした“燃え残り”。

 それらを、俺はひっそりとスキルで保存していた。


 ──普通なら、保存すらされない“ゴミ”を。


「まさかあのときの失敗が、こんな形で役に立つとはな……。母さん、あんたやっぱり只者じゃねぇよ」


 空き瓶の中身には、油を染み込ませた布を詰め込む。

 蓋なんていらない。中身が飛び散れば、それでいい。


 これが、俺の“火炎瓶”。

 世界で一番、ゴミくさい即席の爆弾。


「……お前は、もう逃げられねぇ」


 奴の足元は、俺の火の回路の中だ。


「喰らえッ!!」


 俺は、即席“火炎瓶”を縄に向かって叩きつけた。


 空き瓶が砕け、炎が火花のように撒き散る。


 火は、油を吸った縄を伝い──

 そして、かろうじてつけた傷にも、染み込んでいく。


 ──さぁ。終わりだ化獣(バケモノ)


「ギャアアアアアアアアッ!!…………テ………ラ………ルイ」


 耳を裂くような悲鳴が、暗闇に響き渡る。


 燃える。肉が焼ける臭いが、鼻を刺す。

 のたうち、吠え、喚きながら、ついに巨体が倒れ込んだ。


──そして。


「……終わった、か」


 異世界での、初めての戦い。

 命を賭けて挑んだ、最初の一歩。


 それは、俺の“仕掛け”が、火を灯した勝利だった。


 だが、この業火の夜が、

 俺とアレシアの心に、確かに小さな“影”を落とした。


──そのことを、この時の俺はまだ知らない。

本日もお読みいただきありがとうございました!


引き続き、続きが気になる展開をお届けできるよう頑張ります。


応援いただけると、本当に励みになります。

ブクマや★★★★★、感想などお待ちしています!


それでは、また次回もお楽しみに。

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