表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
From: ゴミから始まる異世界生活 〜拾い集めて世界最強〜  作者: 水無月いい人
第一章 出会いと別れ『少年編』 
6/24

第5話:一度目の記憶

引き続き読みに来ていただきありがとうございます!

まだ物語は序盤ですが、毎日22時に投稿していますのでよろしくお願いします!

──アレシアのもとへと走る、その一瞬。


俺の中に、あの記憶が──

もう一つの“人生”が、滲んできた。


それは、俺が──“ゴミだった頃”の話だ。


◆◆◆


前世の俺は、終わっていた。


無職。借金まみれ。

親の金で課金ゲーに耽り、アニメに溺れ、漫画に逃げ……現実から全力で逃げていた。


母は難病で寝たきり。

父は退職金を切り崩して、家庭を何とか支えていた。


……そんな中、俺は家でただ腐っていた。


「……この世界はクソだ」


吐き捨てたその言葉は、本当は“俺自身”に向けるべきだった。


何も変えられないまま、無為な時間だけが流れた。

社会の底で、息だけをしていた俺のスマホに──ある通知が届いた。


『生きてるかお前。久しぶりに集まろうって話なんだが、お前も来ないか?』


差出人は、高校のクラスメイトだった。


“生きてるか”──その言葉に引っかかりはあった。

まるで俺の死を、前提にしたみたいな言い草だ。


……それでも俺は、浮かれていた。


「ああ、行く」


その一言を、即座に打ち返していた。


◆◆◆


同窓会、当日。


居酒屋に集まったのは、十人ほど。


「かんぱーい!」と、俺には縁遠かった掛け声で乾杯が始まった。


俺はジャージ姿で、場違いなまま端に座っていた。


「よく来てくれたな」


最初に声をかけてきたのは、かつての優等生。

成績も運動も完璧で、女子人気も高かった“勝ち組”だ。


だが今、金髪に黒スーツ──

彼は、ホストになっていた。


「ちょうど暇だったから」


そう笑ったが……俺の人生は、ずっと暇だった。

数年単位で“空白”だ。誤魔化すにも限界がある。


「今、何してんだ?」


「親の家業、継いでる」


……まあ、“自宅警備員”も家業と呼べなくもない。


虚勢を張る俺の中に、染みついた“ゴミの匂い”は隠せなかった。


彼は聞いてもいないのに、ホストとしての苦労話を語り始めた。


女にモテて、子どもができて、

今は養育費のために必死で働いているらしい。


「金を稼ぐって、ほんと大変だよ」


そう笑った彼に、俺は「すごいな」としか返せなかった。


──本当は、“大変”の意味すら分からなかったくせに。


「なぁ、少しでいい。子どものために金がいるんだ。金を貸して──」


言葉の途中で、空気が変わった。


「──やっと見つけたよ、風馬くん」


現れたのは、ドレスに身を包んだ女。

その手には、刃物。


彼の“元恋人”──いや、今もそうだったのかもしれない。


「風馬くんは私のもの。誰にも渡さない。だから──一緒に死んで?」


壊れた瞳。

その言葉に、店内が凍りついた。


悲鳴が上がり、誰かが逃げ、誰かが固まる。


……そんな中で、俺は──


動いていた。


理由なんて、なかった。


庇う義理なんてない。

名前すら知らない男のために──


けれど、俺は身体を投げ出していた。


「がはっ……」


ナイフが、腹に刺さった。

熱い。熱すぎる。


床が、赤く染まっていく。


女はその場に崩れ落ち、ナイフを手放し、

「違う、違うの……」と泣きじゃくっていた。


「……なんで……お前、俺を庇ったんだよ……!」


風馬の叫びが、遠く聞こえる。


……俺は、笑った。


「そんなの……俺が、聞きてぇよ……痛ぇな、これ」


腹の奥から、命が溢れていくのが分かる。


指先が冷たい。

視界が霞む。


「だ、大丈夫だ!救急車、呼んだから!すぐ来る、すぐ来るから!」


……見れば分かるだろ、この血の量。

俺が死ぬことくらい、俺自身が一番よく分かってる。


「おい、おい!死ぬな!お前……名前、なんだっけ……」


ふざけんなよ。


死にかけてる相手に、「お前」呼びかよ。


──でも、俺も名乗らなかった。

誰の記憶にも残らず、死ぬのか、俺は。


「なぁ、風馬……なんで俺が庇ったかって、聞いたよな……」


「しゃべんな!今はしゃべんな!!」


「……もう喋れなくなるから、言ってんだよ……」


自嘲の笑みとともに、喉が震えた。


「……多分な。俺、お前に“同情”したんだよ」


──そう。

それが、俺がこの人生の最後に感じた、最初で最後の“感情”。


「お前さ、久しぶりに集まった奴らから金を借りようとしたろ」


「……」


「教室の隅にいた奴ばかり……呼んでたよな」


──通知が来たときは、嬉しかった。


誰かが、俺をまだ覚えてくれていた。


……馬鹿だな、俺は。


「お前は──何かを守ろうとして“ゴミ”になった。でも、俺は……何も守らず、ただ“ゴミであり続けた”」


その差は、たったそれだけ。

けれど、決定的だった。


「……最後くらい……謝りたかったな」


両親に。兄弟に。

そして、俺自身に。


でももう、そのチャンスは──


失われた。


意識が、沈んでいく。

まるで、黒い水の底に堕ちていくように。


(……俺って、本当に最後まで──)


……ゴミだったな。


「…………なんで……名前も知らねぇ奴が、俺なんかのために命張ったんだよ……。俺の名前は……吉川(よしかわ)秀樹(ひでき)だよ……風馬は、源氏名だよ……馬鹿野郎……」


──こうして、俺の人生は終わった。


◆◆◆


【ユニークスキル:廃棄収納(トラッシュボックス)を獲得しました】


“価値なきものを拾い、己の力とする”


この世の理から溢れた、“ゴミ”に愛されたスキル。


それは、世界で一番──


ゴミを理解した男にだけ、許された力だった。

本日もお読みいただきありがとうございました!


応援いただけると、本当に励みになります。

ブクマや★★★★★、感想などお待ちしています!


それでは、また次回もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

★ 廃棄の力、侮るなかれ! ★

『From: ゴミから始まる異世界生活 〜拾い集めて世界最強〜 』

★★★★★評価
ブックマークで応援してもらえると励みになります!


感想・レビューも大歓迎!
次の廃棄伝説を共に作ろう!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ