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From: ゴミから始まる異世界生活 〜拾い集めて世界最強〜  作者: 水無月いい人
第一章 出会いと別れ『少年編』 
2/24

第1話:二度目の人生はゴミだらけの世界

お読みいただきありがとうございます!


本編の前に少しだけ。

更新の励みになりますので、ブクマや★★★★★をいただけると嬉しいです。


それでは、本編をお楽しみください。


 ……暗い。


 これが、死ぬってことなのか。


 もっとこう、一瞬で終わるか、何も考える間もない空白だと思っていた。

 あるいは、よくあるアレ。

 人魂が列をなし、閻魔様の前で裁きを受ける──なんてシーン。


 ……いや、それは流石に妄想が過ぎるか。


 でも、妄想ができるってことは、まだ“考える時間”が残されているってことだよな?

 じゃあ……この時間は何だ?


 死んだのは、間違いない。

 体は動かず、感覚もない。けれど、意識だけはこの暗闇に取り残されている。


 ……これ、地獄に堕ちるより、ある意味キツくないか?


 まぁ、ゴミみたいな人生だったし。

 こんな末路でも、文句なんて言えないか。


 


「……ぃ……ね」


 ……ん? なんだ、今の声。


「はーい……いいこでちゅね~」


 ……いい子? 俺が?


 俺はクソみたいな人生を歩いてきたんだぞ。

 誰かに“いい子”なんて言われる資格があるとは、とても思えない。


 てか、誰の声だこれ。

 若い女の声……に、聞こえるな。


 ん……?


 な、なにか口に入ってきた……?

 ぬるくて、ほんのり甘くて、どこか薄い味。……飲んだことはない。でも、知ってる。


 いや、まさかこれ……()()? え、飲んでるの、俺?


 俺、もう二十七なんだけど!?



 まぶたが重い……けど、ほんの少しだけ開いた。


 ぼやけた視界の中で、俺が見たのは──

 茶髪の若い女の顔。

 そして俺の口の中には……彼女の大きな乳房が。


 …………ああ。あぁ、そういうことか。


 そういうこと、なのね。


 つまり、俺は──転生したってわけか。



 漫画やアニメに親しんでいた俺なら、ここまで来れば理解できる。

 これは、“異世界転生”ってやつだ。


 地獄じゃなかったのは、まぁ……よかったのかもしれない。

 けど、“赤ん坊”からやり直しって、それはそれで()()なんじゃないか……?


 前世の俺は、童貞だった。

 だからこの状況──若い女に乳を飲まされるというシチュエーションに、

 前世の俺だったらきっと飛び跳ねて喜んでいたはずだ。


 でも、今の俺は違う。


 まったく、そんな気になれない。

 むしろ、なんか……()だ。


 これが“息子”か。

 本当に、俺の息子は反応していない。



「ほら飲んでくだちゃいね~」


 やめろ……その赤ちゃん言葉……。


 二十七歳の俺には、メンタル的にキツすぎるっ……!


 やめてくれえええええええええええええっ!!


---


 ──目を開けた先に広がっていたのは、前世とはまるで違う世界だった。


 よく言えば自然豊か。


 異世界モノでよく見る、絵本のような風景がそこにある。


 でも、悪く言えば“貧しい”。


 漫画も、ゲームも、アニメもない。

 スマホなんて当然存在しないし、電子機器全般がこの世界からは()()していた。


 ……さて。じゃあ、今の俺に何ができる?


 前世でやっていたことは、何一つここでは活かせない。

 それどころか、“赤ん坊”からやり直しだ。


 しかも、この家庭には父親がいない。



 前世で、ゴミみたいな俺をずっと支えてくれた父さん。


 定年まで働き続けて、情けない俺に文句も言わず、ただ黙って金を出してくれた、あの優しい父親は……ここにはいない。


 ……さて。どうしたもんか。


 とりあえず、腹が減った。


 恥ずかしいけど……泣いて飯をねだるしかない。

 生きるためだ。プライドなんかより、生きることの方が大事だ。


「んぎゃーおぎゃー」


「はいはい、おっぱいでちゅね~」


(くっ……なんてプレイだ……でも、まぁ……悪くはないかも)


 この女の名は──アレシア・ヴァレンシア。


 茶色の髪をひとつにまとめた、若い母親。

 どうやらこれが、俺の“母親”らしい。


 そして、この世界での俺の名前は──ダスト・ヴァレンシア。


 この女の、血を引いて、俺も茶髪だった。


 アレシアは、赤ん坊の俺に言葉が分からないと思っているのか、

 この世界のことをいろいろと話してくれる。


「最近、また北の森で魔獣が出たんだって」

「村の男たち、何人か狩りに出たらしいけど……もう、心配で心配で」

「まったく、子育てだけでも大変なのに……あのバカ村長は何もしてくれないし……」


 愚痴も多いけど、それ以上に、日常のことをたくさん語ってくれる。

 言葉の端々から、慎ましくも逞しい暮らしぶりが伝わってくる。


 ──そして、俺は気づいた。


 この世界で一番つらいのは、“赤ん坊の時期”そのものだってことに。


 好きなときに動けない、話せない、伝えられない。

 頭の中は大人でも、体がまるでついてこない。


 赤ん坊に転生する物語は、俺もよく読んできた。

 異世界モノが好きだったからな。


 でも──実際にやってみると、こうもストレスフルだとは……!


 自分の意志で何もできないというのは、想像以上にキツい。

 いや、これもう、拷問レベルだろ……!


 そんな中でも、アレシアは俺をよく世話してくれた。


 たまに寝不足でフラフラになりながらも、笑って俺を抱き上げ、

「いい子いい子」と言ってくれる。


 ──前世で言われたことなんてなかった言葉だ。


 それが、なんだか胸にくる。


 心地よさとか、安心とか、そういうものとはちょっと違う。

 前の世界で、俺がずっと手に入れられなかったもの。


 それは──


()()()()()()()()()()()、という感覚。


 気づけば、泣きたくなっていた。

 いや、もう泣いていたのかもしれない。


 ──それが赤ん坊だから、というだけではないはずだ。


 アレシアが、そっと微笑んで言った。


「いっぱい泣いていいんだよ、ダストちゃん」


 


 ……。


 その一言で、何かがふっと軽くなった気がした。


 たとえ前世が“ゴミみたいな人生”だったとしても。

 また生まれ変わったこの命で、何かができるのなら──


()()()()()()()()()()()()


本日もお読みいただきありがとうございました!


応援いただけると、本当に励みになります。

ブクマや★★★★★、感想などお待ちしています!


それでは、また次回もお楽しみに。

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『From: ゴミから始まる異世界生活 〜拾い集めて世界最強〜 』

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