第13話:私の罪
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私は──ある時を境に、自らの出自を知った。
それは冒険者として、ある程度の地位を得た頃だった。
だが、それを語るにはまだ早い。
まずはこの国と、私。そして“彼女”について話そう。
* * *
私はこの『ヴァレシア王国』で生まれ育った。
だが、それを知ったのは大人になってからだった。
──魔族。遥か昔より語られる、“人類に仇なす者たち”。
伝説の怪物。滅びたはずの存在。
人々はそう思っていた。私もまた、そうだった。
──あの日までは。
* * *
「イデア!俺様に、いい考えがある!」
少女ソフィアが叫ぶ。
燃えるような赤髪を振り乱しながら、まっすぐな目を向けてきた。
「魔族を探して、ぶっ殺す!そしたら魔獣の奴らもいなくなるかもだぜ!?おもしれぇだろ!」
少女は無邪気なようで、どこか……狂気に近い“何か”を宿していた。
魔獣──それはこの世界に古くから存在している獣。
知性を持たぬ化け物。狩るべき対象。だが、魔族は違う。
「そんなの、いるわけないだろ。あれは昔話だよ」
「……いる。魔族は、生きてる」
彼女のその言葉に、私は思わず眉をひそめた。
“魔族は滅びた”。それが、この国での“常識”だったから。
「だって学校で習っただろ?魔族は人類の手で滅ぼされたって……。
もしかして、また授業中に寝ていたのか?」
「俺様の……弟が」
その瞬間。
ソフィアの目の奥が、凍りついたように冷たくなった。
「俺様の弟が──魔族に、殺された」
その言葉には、魂がこもっていた。
悲しみと、怒り。言葉では表せないほどの“確信”。
「……魔獣の間違いじゃ?」
「違う。アレは人間じゃなかった。けど、獣でもない。
人の形をしていた。喋った。……間違いなく、アレは“魔族”だ」
「そ、それって……」
「イデア。あれは書物の中だけの存在じゃねぇ。俺様達が、殺さなきゃならねぇんだ!でないと──人類は、また滅ぼされる」
彼女は震えていた。恐怖か、怒りか、それとも。
私はその言葉を……否定した。
そして、逃げた。
* * *
──二十年の歳月が過ぎた。
私は冒険者になっていた。
理由はただ一つ。ある魔獣が『ヴァレシア王国』まで侵入したからだ。
当時の私はまだ、何も知らない未熟な青年だった。それまで、魔獣がこの国の中心にまで現れることはなかったから。
だがその日、現れたのは──知性を持った魔獣だった。
私は、嫌な予感がした。
そして思い出した。かつての、ソフィアの言葉を。
……彼女は、正しかったのかもしれない。
その魔獣は、多くの冒険者を殺した。
たった一体にして、このヴァレシア王国は壊滅寸前だった。
その怪物に、人々はこう名付けた──
『三つ眼の怪物』
『グラズ=モール』
かろうじて討伐には成功したが、犠牲は大きすぎた。
人々の中には、今も“あの日”を忘れられぬ者が多くいる。
* * *
私はその日を境に、魔獣討伐の最前線へ立ち続けた。
この国を、守るために。
一方で──ソフィアは違った。
かつて「殺す」とまで言っていた彼女は──冒険者には、ならなかった。
彼女は、研究者の道を選んだ。
魔族の研究に人生を捧げ、武器の開発に没頭した。
今、冒険者たちが持つ“対魔獣特化武器”は、すべて彼女の手によるものだ。
あの災厄の日以来──
彼女は、完全に変わってしまった。
──いや。
変わったのは、彼女だけじゃない。
私も。
この国も。
世界の在り方さえも。
あの一体の怪物によって、すべてが“変わってしまった”。
そして、私があの日。
彼女の言葉を、聞かなかった。
それが──
私の“罪”だ。
本日もお読みいただきありがとうございました!
物語も徐々に深まり、登場人物たちの思惑も動き出しています。
引き続き、続きが気になる展開をお届けできるよう頑張ります。
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