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初デートのお話

さあ今週もやってきたぜ、華金!

てことは今日もあいつから惚気話が聞けるぜぇ。


「おっす」

「おっすぅ」

「今日も話してくれやせんか?」

「ああ、もちろん」

いつもの居酒屋に行き、席について、生を二つと枝豆と砂肝を頼み、自分の左手にメモ帳、自分の右手にえんぴつをセットした。

「おいまて、なんのためのメモ帳だ?」

「メモ帳っていうくらいだ。もちろんメモだぜ?」

「そんなガチなのか?」

「ああ、このために仕事頑張ってんだ」

「なるほど」


「おまたせしやした。生二つと枝豆と砂肝でございやす」

「元気な店員だ。ああ言う元気な子が僕にとって世界を少し幸せにするものだ」

「響の感性はすごいな」

「早速話してもらおうか」

「お、おう。じゃあ今日は付き合いたての頃のデートの話をしよう。俺らの初デートは水族館だ」

「魚はおいしかったか?」

「響よ。水族館だ。最後まで話を聞け。そのデートの前日。俺らはビデオ通話で計画を立てていた」

「え!?ビデオ通話すんの!?」

「普通毎日するだろ」

「僕一度もしたことない。僕も普通じゃないが毎日するお前も大概だと思うが」

「まあそれはどうだっていい。ビデオ通話でいろいろ話し合ったもんだから随分と時間が経ってたんだ。夜遅いから寝るかって話をした時に、蕨が携帯を自分の中に入れて

『こうやってしてると一緒に寝てるみたいでしょ?もうちょっとだけ通話しよ?』

って言ってきたんだ」

「蕨さんってそんなことすんの!?さすが僕の師匠だ」

「ん?師匠って?」

「僕の目指すべき姿、憧れの存在なんだ。蕨さんが放送委員やってた時、綺麗な声と話の内容に憧れて放送委員になったし、蕨さんがネット活動してたのに憧れて、僕もネット活動始めた。とにかく僕の憧れの存在なんだ。それで師匠って読んでた。本人にも許可を得て」

「響って蕨とそんな関係性だったんだな」

「すまない話を遮ってしまった。僕が今まで聞いたビデオ通話の話の中で1番羨ましいと思った。」

「俺もそん時びっくりしたよ。まさかそんなふうに言ってくるとは思わなかった。その日は興奮のあまり寝れなかったな。で、デート当日。俺は楽しみすぎて、だいぶ早くきてしまった。しかしいつまで経っても蕨が現れない。結局きたんだけど、予定より1時間遅れてきた。しかし僕は不思議と腹が立たなかった。これが恋人を待つ力か、と思った。遅れてきて申し訳なさそうな蕨さんは

『ちょっと、こっち向いて目を瞑ってしゃがんで』

と言ってきた。俺は蕨が何をしようとしているのかさっぱりわからなかったが、指示通りしゃがんだら、口に柔らかいものが当たったんだ」

「お◯ぱいか?」

「バカじゃねぇの?酔っ払いが。唇だよ。接吻してきたんだ。その後僕が驚きのあまり蕨さんの顔を見ると

『許されるとは思ってないけど、遅刻したお詫び』

と行ってはにかんだんだ」

「それ本当に蕨師匠か?俺の知ってる蕨師匠とは違うぞ」

「そりゃそうだろ。恋人に見せる顔と友達に見せる顔は違うだろ」

「確かに」

「俺らはその後、普通に水族館を楽しみ、帰った」

「そこでハプニングは起こらなかったのか?」

「ああ、超純粋に水族館を回ってきたよ。その日の夜のビデオ通話で、接吻の話題が出たんだ。そこで蕨さんは

『次は深いのにしようかな。でも私止まらなくなりそ(笑)』

って平気で笑いながら行ったんだ」

「それほんとに蕨師匠か?」

「だからそうだって言ってんだろうが」

「僕の知ってる蕨師匠とは違う」

「おんなじこと言うな。ちなみにこの話全部、中学の時の話な」

「...へ?でもお前、前会った時は付き合ったの一週間前って言ってなかったか?」

「俺前言ってなかったっけ?中学の時付き合ってたけど、高校違って別れることになったんだよ」

「でも前俺元々蕨のこと好きだったんだけど、勇気なくて告れなかった、みたいなこと言ってなかったか?

「それは今の話ね」

「仲良くなれなかったってのは?」

「大人になると久しぶりに会った元恋人に、どう接していいか、わからないだろ?そのせいで少し距離があったから、その差をなくすことができたという意味を込めて、仲良くなったって言ったんだ。俺酔うと言葉足らずになるらしい」

「言葉足らずすぎるだろ。言葉足らずとかの次元超えてるだろ。ていうか、中学の頃にもうキスしてんのか。俺キスするのにもっとかかったぞ。しかも最初が口だなんて」

「まあ中学の頃の蕨さん結構グイグイきてたからな。まあ今日はこれくらいかな」

「おけ。栄養補給させてくれてありがとう」


俺はまた来週ここにくるために、1日を頑張るのであった。

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