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小学1年生が異世界転生してから

作者: ぽい

小学1年生が異世界転生したらどうなるか


考察

 小学1年生は他者とのコミュニケーションを絶つか、別の人格をつくり受け入れると考えられる。なにせ小学1年生は肉体的にも精神的にもまだ未熟である。家族という一番身近なグループ、幼稚園や保育園などの同年代でかつ関係を強要されないグループ、そして、小学校という同年代だが関係を強要されるグループ。時が経つにつれて自分の周りのグループは大きくなっていくが、基本的に、一番身近なグループを一切頼らずに生活するのは自己が律されてからである。よって、環境も人間関係も何もかも異なる世界、つまり異世界に小学1年生を転生させた場合、他者とかかわることを拒絶するか、幼児退行し他者の言いなりになると考えられる。


愛野ひとしについて

 今回の対象者である愛野ひとしについて考える。彼は学校のクラスリーダーである。小学1年生など、まだ自分のしたいことだけが一番だと考えている子供だ。愛野ひとしはそんな彼ら彼女らをまとめ上げ、1つのグループを作り上げた。はっきり言って異常だ。だが今回ばかりは彼も想定外だったのだろう。まるで普通の子供のような反応をしているではないか。まあ、周りの人間が自分より異常だったからだろう。おそらく、愛野ひとしの次の行動は他者への拒絶だ。なるべく我々の干渉なしに成長してほしいが、もし1年経っても進展がなければ、何かしらの希望をちらつかせることを許可する。それまでは、ただの使用人として活動するように。


ーーーー


時は、愛野ひとしがフィリップの身体に入ってから1ヶ月後である。


「入りますよ。」

愛野ひとしが眠る部屋、もとはフィリップの部屋に大人の女性が入る。彼女はフィリップの母親、フェリアである。この1ヶ月の間、愛野ひとしはフェリアに自分のことを一生懸命伝えていた。家族のこと、勝気なお母さんと博識なお父さん、生まれたばかりのかわいい妹、頭の中にある家族のことを事細かに伝えていた。そして、

「俺は、愛野ひとしですっ!フィリップじゃない!」

「家族に会わせて!」

しかし、フェリアにとってはフィリップの身体でフィリップの声で、でも口調が違う人間が言っていることである。

「ごめんなさい愛野ひとし君、あなたはもうあなたの家族には会えません。」

「だからって、ずっとこのままではいけないでしょ?」

「今までのことは忘れましょう、それが一番幸せよ。」

2人はこんな言葉をずっと繰り返してきた。一日も欠かさずに。


「おはようございますフィリップ、いえ愛野ひとし君?」

「ぅん…お母さん。…じゃないフェリアさん、おはようございます。」

「ふふっ、お食事にしましょう、今日は柔らかいパンですよ。」

愛野ひとしの部屋に使用人が入る。顔を洗うための水と2食分の朝ごはんをカートに乗せている。愛野ひとしは顔を赤らめながら使用人に体を任せている。日本にいた時は、母親に、自分でできるようになりなさいとしつこく言われていた。ここに来てからは今までの当たり前と少しずれていて違和感ばかりだった。身支度を整えると、ベッドから離れたところにあるテーブルでフェリアと食事をする。柔らかいパン、野菜のスープ、ふかしたイモ、朝食はいつも同じだ。

「愛野ひとし君、今日は何がしたいですか?」

「帰りたい」

「では、お勉強をした後に教会へ行きましょうか。今日も神様にお願いしましょう。」

「…。」

食事を終える。愛野ひとしは、この世界の文字を学び、貴族のマナーを身に付けさせられ、教会で神様に祈る。小学1年生が異世界転生したら、日本知識で英雄にならず、特殊能力で英雄にならず、ただ、この世界の型にはめられ順応していくのだろう。


ーーーー


転生神様


 あなたに賛同する天使ミルです


 愛野ひとしの状況報告書を送ります。

 使用人として潜入させていただきありがとうございます。大人の人間として潜入するのは初めてなので心が落ち着きません。愛野ひとし様の世話係として食事の用意もしなければならないのですが、簡単な料理すぎて奥様から変な目で見られている気がします。なので料理の能力をください。

 

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