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第6話 姫は人を雇いたい2

エレナはご機嫌にスキップをしながら,自分の屋敷に戻っていた.

「魔法,魔法.私も派手にズバッと魔法が使えるようになるかな?」

そう,アレフに話しかけたが返答は別の人物から返ってきた.


エレナの屋敷の前には,第8皇女ルーラス=スイフトが多くの部下である騎士を引き連れて立っていた.見た目は,エレナと似ているが,目の色がエレナと異なり黒色で,少しキツメの目つきをしていた.


「……はははは,エレナ姉さまが魔法?学院に行けない,姉さまが」

スイフトは,そう言って笑うと,周りの部下もその笑いに同調して笑っていた.


エレナは,いつもの光景なのか,特に表情を変えずにいつも通りの表情であった.


(何だこの明らかに……めんどくさそうな皇族は)

アレフは,そう思いながら,後ろの部下の様子を確認していた.

スイフト部下は文字通りの騎士ばかりであり,騎士と名乗っているが魔法使いのアレフとは違い,真っ当な騎士ばかりであった.


「……こんな所で会うとは奇遇ですね.スイフト.」

エレナは,静かに一礼した.


「待ってたのよ.」


「何か用事ですか?」


「エレナ姉さんが騎士を捕まえたって聞いて.その騎士の実力を見に来たのよ.まあ,どうせ大した事ないのでしょうね」


「……アレフは,凄いから.」

エレナは,少し語気を強めながらそう言って反論した.


「本当かしら,所詮は,呪われ皇女の騎士でしょ」


「……喧嘩を売りに来たのね.」

エレナは,皇族であったが,同時に17歳の少女であり,環境の影響で大人な部分と子供の部分が不安定に同居していた.だから,自身の命の恩人であり,騎士であるアレフに対する無礼な発言を受け流すことが出来なかった.


「違いますよ,心配してるんです.嫌われ者のエレナ姉さんは,たくさんの人から狙われるから,弱い騎士で大丈夫かなって?」


「私の心配ですか?面白い冗談ね.」


「心配してますよ,なんなら私の騎士を一人お貸ししましょうか?エレナ姉さんも皇族の仕事で何かの式典に……ああ,嫌われ者あなたには,ありませんでしたね.だから弱い騎士で十分なんですね.」

スイフトは,そう言うと大笑いをしていた.周りもそれに合わせて笑っていった.


(姫とそこの皇族の見た目の大きな違いは目の色だけだ.目の色が違うだけで,なぜあれより,姫が冷遇されているのだろうか.不思議でならない)

アレフは,その光景や周りの様子を観察しつつ,この世界の現実に小さくため息をついた.


「……」

エレナは,拳を強く握りしめていた.エレナは我慢する努力をしていた.


「まあ,私の騎士と模擬戦でもしたら,ボコボコにされちゃいますもんね,エレナ姉さんの騎士は,弱いから.」


(安い煽りと挑発か.なるほど,めんどくさいが,仕方ない.働きなくないが,仕方ない……はぁ)


「分かったわ,アレフが強いって証明してあげるわ.あなたの騎士とアレフで模擬戦をしましょう.勝ったらアレフに謝りなさい.」


(まあ,挑発に乗るのは分かっていた.知っていた.でも,しかし,姫に喧嘩を売るあの皇族は,何を根拠に弱いと言っているのだろうか.)


「良いですよ.じゃあ,私が勝ったら,エレナ姉さんは,私に土下座をして服従を誓ってくださいよ.呪われた皇女が王宮を歩いてすいませんってね.はは」

スイフトは,そう言って大笑いしていた.


「良いわよ,アレフは負けないもの」


「……決まりね,じゃあ明日の昼からで良いわね.」


「良いわよ.ルールは,何かしら.」


「三本勝負の二本先取.武器は木刀.細かいルールは1回戦は,私サイドが.2回戦は,エレナ姉さんサイドが.3回戦は,まあ,無いと思うけど.1回戦負けたサイドが決めるって事で」


(意外と公正なルールか.まあ,じゃない強さも弱さも示せないか.)


「分かったは.」


「じゃあ,失礼しました,お姉さま」

スイフトはわざとらしく丁寧に頭を下げてその場を立ち去って行った.




その集団が全て見えなくなってからエレナは口を開いた.

「あの子は,ずっと,あんな感じなのよ.ずっと小さな嫌がらせをしてくるのよ.とりあえず,任せたわよ,アレフ.」


「……姫もまだ子供ですね.一応確認ですけど.この手の模擬戦での魔法使いと騎士の相性の悪さとか考えてますか?」


「……任せたはアレフ」

エレナは,ゆっくり笑いながら遠くを見た.


「……はぁ,(働きたくない)」


「何か言った?私の尊厳がかかってるのよ.」


「勝手に尊厳かけましたよね,姫.それと,謝罪よりも,皇族の仕事を貰うとか,王宮からの外出許可を貰うとかそっちにしてくださいよ.」


「……天才,何で言ってくれなかったの?アレフ」

エレナは,目を見開き,アレフをポカポカ殴った.先ほどの反動か,エレナは死ぬほど気が緩んでいた.


「皇族どうしの会話に割り込めませんよ.」


「確かに……とりあえず,勝つ方法をあるの?アレフ.」


「まあ,そうですね.姫の世話とか,雇う人を探すとか,そういう事より,戦闘の方が自身があるので.」

アレフは,そう言って笑った.


「言うわね,それでこそ私の騎士よ.」

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