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第1話 プロローグ

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ルーラス帝国,宮廷の離れ,ほとんど人が寄り付かないその建物があった.

第7皇女の居住スペースであるそこにいるのは,第7皇女ルーラス=エレナを含めても二人だけ.


少し散らかった部屋の中で,金髪の長い髪,真っ赤な目をした,150㎝の低身長の小柄な美しい女性が上品なドレスに身を包んで

「さあ,今日から女帝になる為に頑張るわよ,アレフ」

そう言って右手を上げた.周囲の静けさに対して,騒がしい彼女こそが,第7皇女ルーラス=エレナであり,この屋敷の主であった.


それに対して屋敷にいるもう一人の黒髪で魔術師のローブを身にまとっている平凡な容姿の青年は少し散らかった部屋を見てため息をついた.

「あの,今の気持ちを言っても良いですか?」


「何でも言いなさい.アレフ.」


「休みたい,帰りたい,めんどくさい.」


「何よ,私の騎士なんだから,もっと,シャンとしててよ.」

エレナは,少し口を膨らませて,アレフを指さした.彼女は,アレフを騎士と呼んだが,その見た目は,どこからどう見ても騎士のそれではなかった.あろうことか,アレフは,剣すら持っていなかった.


「……そもそも,僕はしがない魔法使いですよ.それを騎士って.剣を使わない騎士って何ですか?」

アレフは,そう言って散らかっている荷物を片付けながら,小さく笑った.


「ああ,ごめん,本を整理してくれてありがとう.ゴホン,とりあえず君は私の騎士なの,分かる?」


「……100万歩譲って,騎士は受け入れるとして,部下は僕一人ですよ.貴方は,皇族なのに.」


「しょうがないじゃない.第7皇女で,血筋が悪い,特質すべき才能がない,そして忌み子だから,私が16になった瞬間に,皆逃げていったわ.新しい人を募集しても基本,来ないの.」


第7皇女ルーラス=エレナの状況は良くなかった.皇族であったが,彼女の母親は不明であり,おそらくは,平民,下手したらそれ以下の身分であった.それだけでも,状況が悪いが,さらに彼女にはこれといった才能が無かった.だから,皇族から他の職業に就くことも出来なかった.そもそも,彼女は,多くの皇族が16歳から入学するはずの学院に入ることが許されなく17歳になってしまった.更に,赤い目である彼女は,この国では忌み子であった.

これらの要因が重なり,彼女は,政略結婚の道具にすらならない人間として,冷遇されていた


「ですよね.……悪いことは言いません.平穏に暮らしましょう.普通にしてたら,死ぬことはないです.ああ,いえ,何かあれば,守りますよ.それは,まあ約束なんで.」

アレフは,そう言って頭を下げた.

エレナは,冷遇されていたが,最低限度は保証されていた.住む場所も隔離されていて古いがあり,最低限度皇族としての扱いは受けていた.彼女が何もしなければ,天寿を全うできるだろう.しかし,彼女が行動すれば話は別だ.彼女が皇帝位を狙う為に行動すれば,これを好機に,周囲の皇族などが消しに来るだろう.


「ありがとう.その調子で,私をいろんな人から守ってね.アレフ.」


(やっぱり,この程度で,止まる人じゃないですよね.僕の姫様は,本当に,なんであの時,僕はついて行くと言ってしまったのだろうか.)

アレフは,小さく笑った.

「はぁあ,それで,具体的にどうするとかあるんですか?」


「あると思う?」


「まあ,無いですよね.多分,情熱しか取り柄がないですから,姫は.」


「良く分かってるじゃない.どうにかして偉くなって平等な国を作るのよ.」


(後は,寛容さと謙虚さか.)

「頑張ってくださいね.姫.」


「君も一緒に頑張るのよ.君は私の騎士兼,参謀兼,執事兼,指導係兼えっと」


「……はぁ,(仕事が多いな,働きたくないな)」


「何か?文句.」

エレナは,口を膨らませて地団駄を踏んだ.


「とりあえず,今日も頑張って働こうって」


「ふふ,それは良い心がけね.とりあえず,まずは,どうすれば良いと思う.」


エレナは,ざっくりとした疑問を投げかけた.今,彼女が女帝になれる可能性は0であり,そもそも戦いの土俵にすら立てていなかった.実際,彼女が帝位を奪い合う相手は,彼女より待遇が良い兄弟姉妹であり,その点でまず出遅れていた.更に部下もアレフ一人であり,アレフの魔法使いとしての実力は,誇張抜きにこの国ではトップクラスだったが,一人でどうにか出来るほどの武力は保持していなかった.


「……はぁ,僕も策謀を巡らしたりしたことはないので期待しないでくださいよ.それと,守ってくださいね,約束.」


「もちろんよ.」

エレナは,そう言って,ピースをした.


「そうですか.では,するべきことは,3つあると思います.姫」


「1つ目は?何かな?」


「人を集めることです.二人では何も出来ません.」


「確かに,じゃあ,2つ目は?」


「お金です.資金がありません.どうにかしてお金を作らないと,財力は重要です.」


「なるほど,じゃあ3つ目は?」


「土地,領地が欲しいですかね,流石にこの屋敷一つしか土地がないのは,問題です.」


「じゃあ,とりあえず,領地とお金をどうにかする方法を知っている人を部下にしようか,アレフ」


「どうやってですか?」

アレフは,無表情で尋ね返した.今の第7皇女に使えたいとやって来る人がいないのだ.更に必要な人材に求めている能力はかなり高いこともあり,無理な課題であった,


「……とりあえず,頑張ろう.少なくともアレフを見つけた実績が私にはあるわ.」

エレナは,そう言って少し遠くを見て笑った.


前途多難な幕開けだった.

この二人が出会いを説明するには,時を2週間戻す必要がある.






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